身勝手な副会長から天才へ
生徒会室に入って最初の印象は、なにこの人達?白板に落書きしてる女子にパソコンの前で涎垂らしてる先輩。いや、なにこれ。普通にお邪魔したんですけど。混乱している中、生徒会長さんが彼女達と話を進めていた。いやいや、なんで呼ばれた?俺だって暇じゃないんですの叫びは心に秘めておく。汗をダラダラ流していたら生徒会長さんが自分の方をじっと見ていたのに気づいて少し後ろに下がる。
「ねぇ君、名前何て言うの?」
「へ?は、雨宮椿で、です。その、俺何かしましたっけ?」
「んー?いや、君って編入生だよね?去年君のこと一回も見たことないからそう思って。後、生徒手帳見せてくれないかい?」
「お、俺どう見ても学生ですけど…」
と言いながらも生徒手帳を手渡す。生徒会長さんがそれを見ると驚いた顔をして、他の役員の全員に見せて俺の方に視線が行く。なに、俺モテ期なの何なの?覚悟を決めたのか今朝の元気男子が自分を真剣な目で質問してきた。
「二年前にアメリカで行われたスマートティネージャーズ大会優勝者、椿・雨宮くんだよね?」
「あれ知ってるんですか?」
「やっぱりこの子イケメンの上に超頭いい!!!何この子完璧じゃん!!」
二年前にアメリカへ旅行しに行ったら学力を競い合う大会があって面白そうだったから出場してみて優勝してヨーロッパに帰った覚えがある。別に大切な大会じゃなかったからメディアではあまり取材されていないはずなのになんでこの人達知ってるの。え、そういうの興味あったのか?それにあの大会で出ていた問題自体は別に難しくなかったし、普通じゃないのか?
ていうか、なんで口あんぐり開けているのだろうか…とにかく彼らをこのままにしちゃちょっと複雑だ。彼等に注意したらすぐに元の顔に戻って今回は真剣な表情を浮かべた。本当に忙しい人達と呆れた。俺は鞄を片手に用がないのなら出ようとするが、さっき白板に落書きをしていた女子が服の裾を軽く引っ張っていた。その子は俺より身長は低く、赤いタレ目のボブヘアが可愛い。顔はかなり整っていてこんな状況じゃなかったら惚れていたかもしれない。簡潔に説明すれば赤色が似合うタイプドストライクの女子。どしたんだと聞くとここに残ってほしいとのこと。数十秒見つめた後自分は折れてそこに残ることにした。
再度机の方へと行くといつの間にか座らされ、お茶を出された。生徒会長さんが俺の前で渋い顔をし腕を組んでいた。面接のような雰囲気だった、受けたことはないが。
「早速で本当にごめんね。でも今この生徒会は最大の危機に迫っているんだ。」
「最大の、危機とは?」
彼はそれから語りだした。去年まで彼はただの会計だったらしい。当時生徒会長をしていた男子生徒は卒業したから辞めることになったのだ。そして次期会長を務めるはずの副会長がクラス内で起きた虐めに耐えきれず自殺。そして遺書には次期会長に大野先輩を指名し、副会長は二年に編入してくる天才男子、つまり自分だと。いや、ツッコミどころ多すぎでしょと白目剥いた。そもそもその副会長さん勝手すぎでしょなんで俺が来ること知ってんの、そして副会長したかった奴もいるだろ。
「生徒会長さん、事情は分かりましたけど、俺嫌なんですけど、関係ないですし。それにその副会長さんのこと知らないですし、人違いでしょう?」
そう言うと困ったような表情を見せてきた。少しでも罪悪感を与えようとしているにしか見えない自分は相当ひねくれている。だって怖いじゃないですか、副会長さんエスパー的な能力でもあんの?この学校に来るなんて誰にも言ってないはずだし、心当たりがないことはないけど。一応聞いてみるか。
「生徒会長さん、確認なんですけど、その副会長さんの名前って何ですか?」
そう聞くとさっきの沈黙に言いずらさが加わった空気になった。思い出したくないことを思い出させるのは確かにあっちもこっちも気分がいいわけではないが、流石にそれを知る権利はあると思う。生徒会長さんの方を見ても俯いたまま、元気だったはずの男子は目に光を宿してない、パソコン女子は若干震えている。タイプ女子の方に目をやると目に涙を貯めていた。
「副会長の名前は、綿貫美恵」
「綿貫、美恵…………誰?」
綿貫美恵だなんて聞いたことがないのだが。やっぱり違うかと思いながら頭を掻いた。
「し、知らないって、本当に!?じゃあなんで椿くんのこと知ってるの!!」
「こっちだって知りたいですよ…………んうー、とにかく俺に副会長になれっていうことですよね。自分、生徒会に入ったら利益でもあるんですか?」
「……利益?」
「だって利益ないのに入るのはちょっと、ていうか普通に嫌と言いますかー。」
そしたら皆焦りだしどうしようや入っても特あるっけとヒソヒソしだした。意外と人をからかうってのは面白いみたい、俺のサド心を擽られる。なんかあわあわしているタレ目女子可愛いんだけど、ドストライクなだけ行動一つ一つ可愛く見える。慌てている生徒会を見て自分はフフと笑った。勿論わからないのでポカンとしている彼等を見るともっと笑いが込みあがる。
「やっぱり利益とかいいや、副会長面白そうだし、ここつまらなさそうですし、入ります。」
と今回は真面目に言った。そして彼等は笑いながら俺の手を取り、
「ようこそ、カオス生徒会へ!!」
カオス生徒会?