表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/194

感情を捨て、プライドを捨て。

 戦場を離れる前に、ルイスは一言だけでも報告することにした。


 いくら最弱たる《不動のE》だからといって、勝手に戦線を動くのはまずい――そう判断したからだ。


 だからルイスは、いったん後方で休息を取っている兵士に話しかけた。さきほどルイスたちを小馬鹿にした兵士と同一人物だ。


「なに? 魔獣が不審な動きを見せているだぁ?」


 壁にもたれかかっていた兵士が、素っ頓狂な声をあげる。


「ああ。弱った奴らはみな井戸に逃げ込んでいる。おまえたちも見てるだろう?」


「だからどうした。井戸のなかはどうせ行き止まりだ。いまは新しい侵入者を止めるのが最善だろうよ」

 兵士は明らかな嘲笑の声をあげた。

「おまえ、それしきもわからないのか。だからいつまで経ってもEのままなんだよ。しかもなんだ、もうすぐ追放されるんだってな。ぷぷっ」


 さすがにイラっとしたが、ぐっと飲み込む。


「……だが、あの井戸には王城への《緊急通路》が隠されている可能性があってだな、それで……」


「あーやかましい。《緊急通路》だぁ? 聞いたことねえよそんな話。妄想言ってんじゃねえ」


「妄想じゃない。念のため、確認しにいったほうが……」


「わかったわかった。ゴブリン一体倒すだけでもう疲れたんだろ? 帰りたいんだろ? だったら素直にそう言えよ」


「…………」


 もうなにを言っても無駄だ、とルイスは思った。


「いいさ。おまえらがいなくなっても何も困らない。離れたきゃそうしろよ」


 ――忘れろ、忘れろ。


 現実を直視しても良いことなんかない。

 感情を捨て、プライドを捨て、平然と振る舞うのだ。いままでそうしてきたように。


 ルイスは懸命にストレスを頭から追い出すと、

「ああ……そうしよう」

 とかすれ声を発し、身を翻した。




「ルイスさん……」


 数歩進んだ先でアリシアが待っていた。八の字型に眉を垂らし、唇を尖らせている。


「はっ。まさか見てたのか?」


「……はい。その、なんというか……」


「気にするな。俺の人生はずっとこうだった。いまさらなんとも思わねえよ。――さ、行くとしようぜ」


「は、はい……」


 そそくさと歩き出すルイスの後を、アリシアは心配そうについていった。

 だが数分後、ルイスは知ることになる。


 ――自身の予想が、綺麗ぴったり的中していたことを。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
画像のクリックで作品紹介ページへ飛べます。 さらに熱く、感動できるような作品にブラッシュアップしておりますので、ぜひお求めくださいませ! 必ず損はさせません! i000000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ