おっさん、ギルドの成長に感動する
――三日後。
帝都サクセンドリアでは、男たちの大声がひっきりなしに響き渡っていた。崩れた建物を懸命に復興させているのだ。
神聖共和国党の残した蹄はかなり根強い。
あれから一週間と少し経った現在でも、復興はほとんど進んでいないようだ。あちこちに存在した遺体はさすがに早急に対応したようだが、それ以外のもの――全壊した建物や、ごみ、瓦礫の数々――はまだまだ残っている。古代魔獣までが暴れ回っていたのだから、被害の甚大さは推して知るべしか。
そんな帝都のなかにおいて、一箇所だけ無事な場所があった。
王城――すなわち、王族の住まう場所だ。
ヒュースを初めとする神聖共和国党員や、前代魔王ロアヌ・ヴァニタスといった脅威はあったものの、王城だけはなんとかルイスが守りきっった。
まさに間一髪、ギルドメンバーと協力したからこそできたことだった。若干の精神的抵抗はあったものの、やはりあのとき共闘したのは正解だったようである。
帝都サクセンドリア。
南通り。
かつて一回目の襲撃があった場所を、ルイスとアリシアは歩いていた。
「わああ……改めて見ると、すごい被害だったようですね……」
隣を歩くアリシアがきょろきょろしながら言う。
「ああ。しかもあれ、見てみろよ」
「え……?」
ルイスの指差した先には、王城へと繋がる井戸がある。
前とは違い、頑丈な蓋で塞がれているようだ。いくつもの釘で固定しているから、これは簡単には開けられない。
そういえば……《王城への呪文》をなぜか魔獣が知っていたことについても、依然、謎のままだ。
これについては、現在、神聖共和国党の生き残りが尋問をかけられているはず。近いうちにタネが明らかになるはずだろう。
ふと。
ルイスは見知った顔に気づいた。
「ん。あんたらは……」
「お、ルイスさんとアリシアじゃないか! 久しぶりだな!」
Bランクの冒険者――バハートは、ルイスたちに気づくや目を輝かせた。でかい瓦礫を抱えているところを見ると、まさか復興を手伝っているのか。
「これは驚いたな。ギルドでも復興を手伝ってるのかよ」
「……まあ、俺たちも本来のギルドの在り方を思い出したのさ。大事なのは自分の地位じゃない。――困っている人を助けるっていう、な」
「ほう……」
またまた驚いた。
――ずいぶんと成長したもんだ。おっさん感動したよ。
「あんたらのおかげで気づけたんだよ。もしあんたたちがいなかったら、遅かれ早かれ、ギルドは破綻してただろうしな」
「そうだな。それに気づいただけでもたいしたもんだよ」
「……改めて、礼を言おう。過去のことはどうあれ、助けてくれたことに」
「あー。それに関してはもういい。あんまりほじくり返さないでくれ」
背中が痒くなるからな。
隣ではアリシアがにやにやと笑っていた。
「ほら、いい加減仕事に戻れよ。俺たちもいまから用事はあるんでな」
「あ、ああ……! とにかく二人とも、ありがとな! なんか困ったことあったら、いつでも呼んでくれよ!」
なおも礼を述べるバハートに手をひらひら振ると、ルイスはその場を後にしたのだった。




