表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/194

おっさん、ピクニックへ行く2

「け、剣の稽古だって……?」


 ルイスはオウム返しに呟いた。

 なんか面倒なことになってしまったようだ。

 ルイスも剣士の端くれだし、稽古に付きやってやりたい気持ちはある。


 けれど――彼は素のステータスでは弱い。

 レベルも3しかない。

 帝国でも最弱なのではなかろうか。


 もちろん《無条件勝利》を使えばその限りではないが、正直言って心配なのである。古代魔獣すら一撃で殺してしまうようなスキルだ。それを一般人に向けてしまえば――最悪、殺人事件に発展する。


 これもまた、《無条件勝利》の不便な点といえるだろう。強力すぎるがゆえに、使用する際には相手を選ばねばならない。


 アルトリアとの試合時には一瞬で決着をつけたが、それでは稽古といえないだろう。


 以上、これらの思索を踏まえて、ルイスはお断りの文言を口にする。


「申し訳ないが、今日は気分が乗らなくてな。悪いが他を当たってほしい」


「そ、そうですか……なら仕方ないですね……」


 残念そうに肩を落とす青年。

 なんだか思った以上に落胆してしまったようだ。表情がかなりしょぼくれている。


「…………?」

 アリシアが一瞬だけこちらを見やると、青年に目線を戻した。

「なにか事情がおありなんですか?」


「いえ……そういうわけでは……」


「いいんですよ。遠慮しないでください」


 アリシアの笑顔に、青年ははっと目を見開くと。

 視線を地面に固定したまま、暗い声で話し始めた。


「実は……。僕、見習いの冒険者なんですが、Eランクから全然上がれないんです。同期はどんどん出世していってるのに……」


「あ……」


 アリシアが口をつぐむ。


「それで薬草採取の依頼とか、簡単な仕事だけでもやろうとしたんですけど……それもダメダメで……。前なんか、ギルドに直接クレーマーが来てしまったみたいなんです……」


「…………なるほどな」


 ということは、彼こそが薬草採取と見せかけて《雑草》を持ってきた張本人か。


 いや。

 本来、新人冒険者にはベテランが付き添うのが習わしだ。


 だから彼が仕事ができないのも無理はない。非はギルドマスターのライアンにある。


「……もしかして、ギルドで嫌な目に遭ってるのか?」


「いえ。帝都に魔王が現れてから、みなさん、僕みたいな人にも優しくしてくれます。昔と違って仕事も教えてくれるようになってますし……」


「ほう……あいつらがねえ……」


 その意味ではギルドも成長したということか。

 魔獣退治の依頼も減っただろうし、そろそろ本腰を入れて人材育成に力を注いでいるんだろう。


「だからこそ、僕、情けないんです。みなさん僕に優しくしてくれてるのに……僕は、僕だけが全然成長できない……!」


「…………」


「ですから、休日を返上してでも修行したくて……そしたらルイスさんがいて……思わず話しかけてしまったんです。でも気分が乗らないんじゃ仕方ないですよね……。くつろいでたところ、申し訳ございませんでした……」


 そうしてトボトボと歩きだそうとする青年に、ルイスは声を投げかけた。


「――名はなんというんだ?」


「へ?」

 ゆっくりと振り向く青年。

「ロン。ロン・フォートといいますが……」


「よし。ロンだな」


 ルイスはゆっくりと立ち上がると、鞘に手を添えながら、ロンの隣に並んでみせた。


「訳あって、直接の稽古はできねえんだ。だが、魔獣との共闘なら問題ない。俺が前に出るから、動きを見て盗め。いいな」


「え。い、いいんですか……!?」


「ああ。強くなりたいんだろが。……諦めなんなよ。どんなに辛くても」


「はい! ありがとうございます!」


 弾けたような笑顔でついてくるロン。


 そんなやり取りを見て、アリシアも微笑みを浮かべているのだった。



 

 

 


 



新しくアンケートを設置しました……!

よろしければご回答をお願いします(切実)

リンクは下部にございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
画像のクリックで作品紹介ページへ飛べます。 さらに熱く、感動できるような作品にブラッシュアップしておりますので、ぜひお求めくださいませ! 必ず損はさせません! i000000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ