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不動のE組、それぞれの想いを胸に、帝都へ向かう

「この気配……間違いねェな」


 レストが珍しくも神妙な面持ちで目を細めた。お得意の《第六感》というやつで、帝都の現状を確認しているのだろうと思われた。


「帝都はいまかなりやべェ状況だ。正規軍と冒険者の数を合わせても……敵の数が圧倒的に多い。こりゃあ、ちぃと厳しい戦いだな」 


「そうか……」


 ルイスは呟きながら、片手にビールを持ったままのアルトリアを見上げる。


 老年の剣士は、さっきまでの浮かれた表情はどこへやら、そっとジョッキをテーブルに置いて言った。


「……そうじゃな。ワシも同様の気配を感じる。いや……気配など探らんでも、あれを見れば明らかか……」


 言いつつ、帝都の方角を見やる。


 ルイスもつられて視線をそちらに向けると、さきほどよりも多くの硝煙しょうえんが一カ所から立ち上っているのが見える。


 ここから帝都までは相当の距離があるはずなのに、克明に被害状況が推測できてしまう。


 ――どうやらなにもわかっていないようだな。もうその段階は過ぎたのだよ――


 数日前に自爆した、神聖共和国党しんせいきょうわこくとうのメンバーの言葉が思い出される。


 きっと奴らは、今日まで秘密裏に帝都襲撃を企てていたのだろう。


 各地に魔獣をばらまき、ギルドや正規軍の戦力を確実に削ぎ――そしてギルドが疲弊しきっているところに、いっせいに襲いかかった。


 もし神聖共和国党しんせいきょうわこくとうが、ブラッドネス・ドラゴンを始めとする《太古の魔獣》とともに帝都を襲撃しているとしたら……相当の苦戦を強いられるだろう。レストの言うとおり、かなり厳しい戦いになるはずだ。


「ルイスさん……」


 隣のアリシアが凛乎りんことした視線を向けてくる。


 ルイスは恋人へふっと笑いかけると、一同に向けて決然と言った。


「……で、もちろん行くんだよな? 奴らをぶっ倒しに」


「ほほ。もちろんじゃ。さもなくばアルトリア・カーフェイの名が泣く」


「はっは、俺ゃあバトルができりゃあそれでいいからな」


 レストはにかっと白い歯を見せると、ルイスとアリシアを交互に見渡した。


「でも、あんたらはいいのかよ? ギルドだけじゃねえ。帝都の連中からも、かなり迫害されてきたんじゃねえのか?」


「…………」


 ――たしかに。


 その過去はルイスにとって重い事実だ。


 正直に言って、ギルドの連中を憎んだこともある。こんなにも地道に仕事をこなしているのに、なぜ誰も認めてくれないのか、なぜランクがひとつも上がらないのか……


 なぜ、剣の実力がないというだけで、ここまで馬鹿にされないといけないのか……


 けれど。


「そんなのは関係ねえよ。俺のやりたいことは昔からただひとつ。困っている人々を助ける……ただ、それだけだ」


「私もです」

 アリシアもこくりと頷き、同意を示した。

「ギルドの人たちは怖いですし、《古代魔法》を完璧に使いこなすこともできません。でも、それでもいまできることをやっていきたいんです。それが……フィンへの償いになると信じて」


 レストはしばらく目をぱちくりさせたあと、「ははは」と苦笑いを浮かべた。


「こりゃ、マジでライアンのおっさんの落ち度だな。あんたらみたいな二人を、ギルドから追放しちまうなんてよ。……さ、馬車を手配しようぜ」


「ふふ。レストよ、なにを言うておる。馬車など不要じゃ」


「え? おいおい、まさか歩いていくつもりじゃねえだろな?」


「んなわけなかろうて。この我が娘のな――」

 言いながら、アルトリアはアリシアの頭をぽんと叩く。

「《転移魔法》を使うんじゃよ。これなら帝都であろうとどこだろうと、一瞬でひとっ飛びじゃ」


「は!? 転移だって!?」

 レストがぎょっと変な声を出す。

「嘘だろ!? そんなもん、ギルドでもミューミしか使いこなせねえぞ! しかも自分以外を転移させるなんざ……」


「ははは。さすがのSランク冒険者様もびっくりのようだな」

 ルイスは苦笑いを浮かべると、アリシアの肩を優しく叩いた。

「さ、頼むぜ。俺たち《不動のE》組が……帝都を救いにいくために」


「はい、頑張ります……!」



 

 


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