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おっさん、意外と大きな存在だった

 ――翌朝。


「うーむ、妙だのう……」


 アルトリア・カーフェイは居間で胡座あぐらをかきながら、深刻な顔つきで腕を組んでいた。


「どうしたよ?」


 朝風呂を済ませたルイスが、居間に入り、アルトリアに声をかける。ちなみに朝食もすでに終了している。


 今日は初仕事だ。いきなりトラブルでもあったのだろうか。


「ルイスか。これを見なさい」


 アルトリアは、テーブルに並べられた五通の手紙を指さした。


「どれどれ……」


 よっこらしょ、と言いながら腰を下ろし、一通の手紙を開ける。


【 アルトリア・カーフェイ殿


 薬草を切らしてしまった。

 つい最近まで帝都のギルドに薬草採取の依頼を送ってたんだが、来るのが遅すぎて話にならない。やっと来てくれた冒険者も新人らしくて、変なもん届けて帰りやがった。

 このままじゃ店が運営できねえ。

 あんたに頼むのは心苦しいが、取ってきてくれねえか。


    ヒュース・ブラクネス 】



「こ、これは……」

 ルイスは目を見開き、アルトリアを見やった。

「どういうことだ……? ギルドはいまなにしてるんだ……?」


「さあの。他の四通も同じような内容だった」


 アルトリアも、わけがわからないと言ったふうに肩を竦めるばかりだった。


 ――周辺地域で苦しんでいる人々を助ける仕事――

 それがアルトリア・カーフェイの現在の職業だ。自営業といってもいいかもしれない。


 もちろん、冒険者ギルドほどの規模はないし、この仕事そのものを知っている者も少ない。またアルトリアが老体ということも相俟あいまって、一日の依頼は一通、多くても二通だったらしいのだが。


「それが今日、五通も来てるわけか……」


「そうじゃ。しかもほとんどの依頼がギルドの尻拭いというな」


「…………」


 おかしい、とルイスは思った。


 新人冒険者には、本来、在籍期間の長い冒険者が付き添うはずだ。


 だが、この手紙を読む限り、新人冒険者はたったひとりで依頼を達成して――正確にいえば達成できていないものの――そのまま帰ったわけだ。しかも駆けつけるのが遅かったというし、もはや違和感しかない。


「おはよーございます……」


 ふいに、アリシア・カーフェイが寝ぼけ眼をこすりながら居間に入ってきた。昨夜のパジャマ姿のままだ。


「……あれ、もしかしなくても私、遅刻しました?」


「いや、ワシらが予定より早起きしてるだけじゃ。――それよりほれ、これ見てみい」


「へ……?」

 アルトリアに差し出された手紙を、アリシアは黙々と読み始め、

「え……なにこれ……?」

 と不審そうな声を発した。


「やはり、おぬしもおかしいと思うか」


「うん。こんなの、私が知ってるギルドじゃないよ……」


 そう言ってから、アリシアははたとルイスを見やる。


「もしかしたら、ルイスさんがいなくなったせいでゴタゴタしてるのかもしれませんよ?」


「馬鹿言うなよ。なんで俺ひとり抜けただけで……」


 ルイスは苦笑を浮かべるも、アルトリアは至って真剣な顔つきのまま言った。


「いや……一理あるぞ。最近、急に魔獣がうろつくようになったからな。そこで、縁の下の力持ちだったおまえさんがいなくなったら……」


「……なるほど。この手の仕事ができる奴がいなくなるな」


「そういうことじゃ。おぬしがいなくなっただけで、帝国中が大騒ぎになっとるようじゃな」


 アルトリアはそこでにやっと笑うと、一同を見渡して大声を発した。


「では、準備を整え次第、出発する! 今日は二人とも初仕事じゃ。気合い入れていくぞ!」


「はい!」


 ルイスとアリシアの返事が重なった。


 

 

 


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