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おっさん、アリシア家の扉を心配する

「ここです」


 アリシアの一言で、ルイスはぴたと立ち止まった。


 どこにでもある普通の家屋だ。強いて特徴をあげるとすれば、中から多くの人の声が聞こえることくらいか。なにか行事でも開催しているのか、もしくは大家族なのかもしれない。


 そういえば、とルイスは思った。


 アリシアとはそれなりに長い付き合いだが、両親のことはなにも聞いていない。おそらくルイスの過去をおもんばかって意図的に話してこなかったのだろうが、改めてそれを考えると年甲斐にもなく緊張する。


 ――アリシアの両親。いったいどんな人なのか……


 わずかに高鳴る鼓動を意識しながら、ルイスは扉に手をかけよた。不思議なことに、とてつもなくボロい扉だった。


 そのとき。

 突如、扉の奥から女の声が聞こえた。


「――太古より出づる神の雷よ。いまその憤怒をもって、己の力を示したまえ!」


 ん?

 なんだこのくっさい詠唱は。なんかデジャブ……


 すると、隣のアリシアが急に渋い顔になる。


「まさか。母め、私の来襲に気づいたとでもいうの!?」


「……いやいや、事前に報告してたんじゃないのかよ」


 しかし、当のアリシアは大まじめな顔だ。


「くる! ルイスさん、避けて!」


「え、は!?」


 ――ドゴォン!

 巨大なる破壊音とともに、一筋の雷鳴がルイスとアリシアの間を横切った。その衝撃で扉が呆気なく吹き飛ばされ、ひょーいと彼方へと消えていく。


「おいアリシア、おまえんちの扉、なくなっちまったぞ」


 しかしアリシアはまだ大まじめな顔だ。すっと腰から杖を取り出し、いつもの意味不明な呪文を唱えだす。


「世界にうごめく邪悪なる意思よ。我が悪魔にたまわらば、その力の奔流を顕現せよ!」


 ――シュパッ。

 対するアリシアはいつものごとく、数センチだけ火炎球を出して満足げである。


「おいおいアリシア、おまえんちの扉が……」


 そんなルイスの言葉は、

「――きええええっ! 来襲者め、まだ生きているか!」

 という奇声にかき消された。


 突如。

 なくなった扉の先から、金髪の女が走り出てきた。やや丸っこい顔に、透き通るような白妙しろたえの肌は、まさにアリシアそっくりだ。彼女より年上に見えるが、おっぱ――胸はアリシアのそれよりさらにでかい。


 ――ん? アリシアにそっくりってことは、まさか。


「母め! 私の来襲に気づくとはやはり侮れない!」


「…………」


 やはり。

 アリシアがどうしてこんな性格に育ったのか、なんとなくわかった気がした。


「ええい我が娘よ! 久々に会えて嬉しいぞ! 殺してやる!」


「の、望むところだっ!」


 そのまま二人でわけわからんことを叫びながら、どこかへと消えていった。


「…………」 

 あとにはルイスだけが残された。

「いや、案内してくれるんじゃなかったのか……?」


 思わずそうひとりごちてしまう。

 俺はこれからどうすればいい。この村のこと、ほとんどなにも知らないのに。


 いや。 

 家にはまだ父親がいるはずだ。うまいこと事情を話せば、なんとか家には上がらせてくれるはずだ。アリシアが戻ってくるまで待とう。


 そう思って、なくなった入り口へ向けて一歩を踏み出したとき。


「ワシがあああああああああああああああああああああああ!」


 ふいに、家のなかから馬鹿でかい男の声が聞こえた。


「アリシアのおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 父親じゃあああああああああああああああ!」


 ――なにこの家族。



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