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全面衝突へ

 さすがに驚いた。


 ヴァイゼが近隣諸国に協力を求めているのは無論知っていたが、まさか国王直々にここを訪れるとは。しかもルイスに会いにきたというから驚きである。


 見れば、アルガンド国王の背後に控えている人物たちも大物のようだった。アルガンドには及ばないまでも、いままで自分の国を率いてきたリーダーばかり。みな、ヴァイゼの熱に押されてやってきたという。


「ふむ。なるほどな。たしかにルイス殿は良い目をしておられる」


 握手を終えたアルガンド国王は、改めてルイスを賞賛する。


 その推されっぷりに、ルイスは両手をぶんぶん振った。


「そんなそんな。さすがに恐れ多いですよ。他の皆様方も」


「いやいや。目を見ればわかるよ。これまで様々な困難に直面してきたのだろう。そのなかで悩み、もがき続けてきたのではあるまいか?」


「ま、まあ……それは否定できませんが……」


「私は思うよ。壁に直面し、たとえどん底に陥ったとしても……泥臭い努力を続けている者こそが世界で最も輝いているとね」


「あ……」


 アリシアのかすれ声が後ろから聞こえた。


「よし、決めたましたぞ。ヴァイゼ大統領」

 アルガンド国王が振り向いて言った。

「彼を見て決心がつきました。我が国もそちら側につくとしましょう」


「ふふ。ありがたい。感謝致しますよ」


 にっこりと笑うヴァイゼ。


 ――なんだか、さらっととんでもない展開になったような。

 アルガンド王国までもが協力してくれるのであれば、戦況はかなり有利になるだろう。帝国一強の状況がひっくり返ることも充分にありうる。


 ん? ちょっと待てよ。

 このタイミングでヴァイゼが他国の首脳を呼び寄せてきたということは……


「フフ、さすがに気づいたか」

 ルイスの思考を感じ取ったか、ヴァイゼは含み笑いを浮かべた。

「絶宝球の力は強大だ。早急に手を打たねば、いつどこの国が滅ぼされるかもわからん。我々に時間はないのだ」


「……といって、馬鹿のひとつ覚えで兵力を帝国に投入するわけにもいかんのだよ。返り討ちに遭うのは目に見えている」

 とアルガンド国王が話を引き継いだ。

「――だから、ルイス殿。あなたたちの力を借りたい。あなたたちにしかできぬことだ」


 なるほど。

 ここまでの展開で、ルイスはなんとなく直感した。


「ユーラス共和国ら《連合軍》が戦っている間に、俺たちが王城に潜入して……絶宝球を足止めしてほしいってことか」


「フフ。ご名答。さすがはルイス殿」

 答えたのはヴァイゼだった。

「帝国と近隣諸国との全面戦争……。間違いなく二千年前のそれより大規模なものになるだろう。被害も相当大きくなるはず。だが……」


「わかってる。それしかないんだよな?」


左様さよう。無念なことだがな」


 そう言って若干眉を垂らすヴァイゼ・クローディア。

 全面戦争によって多少なりとも犠牲者が出るのを、本気で悔しがっているようだ。


「……なるほどな」


 ヴァイゼ・クローディア大統領。

 ルイスはようやく、彼の人間性が掴めた気がした。


 昔はそれこそ残虐非道な大統領だと思っていた。神聖共和国党しんせいきょうわこくとうという傀儡を作り出したこと、ユーラス共和国の民を洗脳し、帝国を滅ぼそうとしたこと。そんなこと、人の心を忘れた者にしか行えまい。


 その一方で、妙に人間らしい一面もあった。


 先日リーナ王国が絶宝球によって滅ぼされたときも、こちらが驚くくらいに狼狽ろうばいしていたのを覚えている。それこそ《残虐非道な大統領》には似つかわしくない姿だった。


 ――いまならわかる気がする。


 彼はあえて修羅の道を選んだのだ。

 体勢たいせいから嫌われることを覚悟のうえで、帝国という絶対悪から世界を守るために。


 言い換えれば、毒を以て猛毒を制す――といったところだろうか。


 だから常に苦悩してきたんだろう。自身が生み出すをできるだけ広げないように。そして、できるだけ最小限の毒で猛毒を制するように。


 そういう意味では、ヴァイゼとてたいしたおっさんである。


 共和国が帝国に呑み込まれ、レストでさえ諦めかけていた段階で、ヴァイゼだけは希望を捨てていなかった。そしてここぞとばかりにルイスに結託を申し込んできたのである。


 だからといって、彼の犯した罪は到底償いきれるものではない。

 けれど、その罪を丸ごと背負ってまでも、ヴァイゼは世界を救おうと決めたんだろう。


 そんなおっさんが覚悟して決めたことだ。無碍むげにすることはできまい。


 ルイスはヴァイゼの瞳をまっすぐ見据えて言った。


「……わかった。その作戦に乗るよ。おまえの毒をこれ以上広げないためにもな」


「ほう……?」


 ヴァイゼが一瞬だけ目をぱちくりさせた。

 そしてルイスの顔つきから何事かを感じ取ったのか、「ふふ」と笑ってみせた。


「なるほどな。さすがは同年代というだけあって、通ずるものがあるようだ」


「そうだな。いつか世界が平和になったら、二人でうまい酒でも飲もうや」


「よかろう。楽しみにしているぞ、ルイス・・・


「…………?」

「わけがわからないんだが……」


 二人して小首を傾げるアリシアとフラム。


「クク、しみったれたおっさんの呟きだとでも思ってくれたまえ」

 ヴァイゼはそう言って含み笑いを浮かべると、一同を見渡して言った。

「むろん、ソロモアは馬鹿ではない。こちらの動きをとうに掴んでいるだろう。開戦は明日午前の11ヒトヒト00マルマル。この時間をもって帝国との全面戦争を開始する。各自、それまでに準備を整えてくれたまえ!」


最終章っぽくなってきました(ノシ 'ω')ノシ バンバン

ぜひ最後までお付き合いくださいませ。

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