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最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る。  作者: どまどま@チートコード操作 書籍化&コミカライズ
【三章】 魔物界編 ~最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る~
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無事再会できたことに祝福を

 霧の大森林。

 かつてギュスペンス・ドンナと激戦を繰り広げ、そして辛くも勝利した場所。

 あのときと同じように、再び森林には濃密な霧が漂っていた。見上げんばかりに高い木々、遠くを見通せない濃霧は、まさしく昔のままだ。


 ――懐かしい。

 不釣り合いながらもそう感じてしまう。


「うおっ!?」

「なんだ……ここは……?」


 そしてこの場所に、神聖共和国党やギルドメンバー、レストなど、大勢の連合軍が一斉に転移してきた。すべての者が油断ならない目で周囲を見渡している。


 ここに登場する魔獣はたしかに強いが、冒険者ランク換算でDかC程度だ。彼らなら苦戦することもあるまい。


 また帝国軍の存在も気がかりではあったが、すくなくとも近辺には誰も潜んでいないようだ。まあ、こんな辺境の森を監視する意味なんてないだろう。


 そして――


「ふう……」

 この場所に案内した老年の剣士は、ほっとしたように額の汗を拭っていた。

「無事に転移できたみたいだの。これで一安心ひとあんしんじゃ」

 そしてくるりと振り向き、娘に向けてにかっと笑った。

「強くなったな、アリシア……。こんな大人数を一気に転移させるなぞ……凄腕の魔術師でもそうそうできまい。ランク《圏外》だった頃が嘘だったみたいじゃの」


「お、お父さん……」

 娘はゆっくりと父に歩み寄る。瞳には心なしか滴が浮かんでいた。

「無事……だったんだ……。私、ずっと、心配で……」

「ほっほ。ワシがそう簡単にくたばるわけなかろうて。あの《闇の壁》が出現したときはさすがに肝を抜かれたがの」

「よかった……本当に……!!」


 泣きこくる娘の頭を、アルトリアはそっと撫でた。

 彼女が涙を流すのも無理はない。

 魔物界に強制転移されてから、アリシアはずっと言いしれぬ不安を抱えていた。帝国が絶宝球に呑み込まれたことで、家族や故郷がひどい目に遭っていないか――さぞ心配だったろう。


 その心痛は察するにあまりある。


「アルトリアさん……お久しぶりです……」


 そう話しかけたのは、Sランク冒険者――ミューミ・セイラーンだ。

 いまでこそ辺境の村で暮らしているアルトリアだが、元はAランクの冒険者。両者が見知った顔なのは至極当然である。


「アリシアさんは本当にすごい魔術師ですよ……私じゃ、もう歯が立たないかと……」

「はっは。Sランク殿にそこまで言わしめるとは娘も成長したもんじゃ。どれ、胸は――」

「お、お父さん!!」

「ぎゃふ!」


 アリシアの鉄拳を喰らい、アルトリアは宙高く飛んでいった。

 戻ってきた頃には、彼は頭から地面に突っ込み、下半身だけをピクピクさせていた。


「はは……あんたら親子も変わんねえなぁ……」

 ミューミの隣で、レストが苦笑を浮かべる。


「い、いつつ……」

 アルトリアは涙目で全身を叩くと、ジト目でアリシアを見やった。

「ツッコミもレベルアップしているとは……さすがに予想外じゃった……」

「こんなときに変なことをするお父さんが悪いんです!!」

「むぅ……。これが親離れというやつかのう……」


 アルトリアは悲しそうにシクシク泣くと、今度はレストを見下ろした。

 見下ろした――という表現になるのは、レストが右胸をおさえ、片膝をついている姿勢になっているからだ。


「これまた懐かしい顔じゃの。いや……前より随分と瞳が澄んでおるな。レスト、なにか良いことでもあったかの?」

「へへ……どうだかな。大方、そこにいるおっさんの影響だぜ」


 そう言ってルイスを手差ししてくるので、ルイスは思わず「え? 俺?」と呟いた。


 構わずレストが話を続ける。


「ここにいる奴らは最初、みんな敵同士だったよ……。互いが互いを憎み合っていた。けど……ルイスのおっちゃんに引っ張られて、ここまで来られたんだ……」


 レストの言葉に、ヒュースやバハートがうんうんと頷いていた。

 前代魔王もわざとらしく首を縦に振っている。


「う、うーむ。まさかとは思ったが、そこにいるのはやっぱり神聖共和国党じゃったか……。しかも魔王まで……」

 呆れ顔でため息をつくアルトリア。

「まあ、それは追々聞くとして――。ルイスよ」


 そしてルイスに目を向けると、ゆっくりと片手を差し出してきた。


「まずは、こうして無事会えたことに感謝する。心配しておったぞ……我が家族よ」

「じいさん……」

 そうして、男二人、久々に握手を交わすのであった。





 


私が言うのもなんですが、主人公最強で、ただ平坦な物語、ただ俺TUEEEするだけの物語はちょっと苦手です。

ですから、読んで驚き、熱くなれるような、感動できるような物語を心がけました。書籍版はさらにブラッシュアップして発売しておりますので、ぜひお求めください!

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いまはアマゾンのほうが手に入りやすいかもしれません。


挿絵(By みてみん)

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