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最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る。  作者: どまどま@チートコード操作 書籍化&コミカライズ
【三章】 魔物界編 ~最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る~
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決戦へ向けて

 そういえば、とルイスは思う。


 初めて絶宝球ぜつほうきゅうが現れたとき、ルイスたちは魔物界に転送されてしまった。


 その後、あの場所でなにが起こったのか――結局わからずじまいである。


 そんなルイスの思考を読みとったのか、ヴァイゼ大統領はフフと笑って言った。


「あの後はかなり混乱してな。誰が味方で誰が敵なのか……まったくわからぬ状況だった。それをひっくり返したのは、帝国方面から現れた連中だ」


「帝国からの……」

 そこまでを聞いて、ルイスははっとする。

「もしかして、《無条件勝利》使いどもかよ?」


「おう。よくわかったな」

 そう返事をしたのは、Bランクの冒険者――バハートだった。ずいぶん懐かしい面子である。

「あいつら、俺たちも問答無用で襲ってきたからよ! マジで意味わかんなかったぜ」


「そうなのか……」


 皇帝ソロモアにとって、冒険者ギルド程度の戦力はいらないということか。《無条件勝利》に《絶宝球》まであるのだから。


「それだけじゃねえ。俺はたしかに見たぜ。帝国を包む、気味の悪ぃ壁をな」


 言いながら、バハートは後方に控える冒険者たちを振り返る。


 だいたい百人程度か。

 何人かはルイスの見知った顔もいる。かつては散々こちらを馬鹿にしてきた面々だが、さすがにもうそのような態度は取られない。


 黙りこくるルイスに向けて、今度はヒュースが言葉を継いだ。


「そういうこともあってな。そこのミューミに、全員、この場所に転送してもらったのさ」


 なるほど。

 ミューミであれば、魔導具さえ用いれば複数人の転移も可能だろう。


「で、だ……。そこにいるのは、やっぱり……」

 ヒュースがおそるおそると言った様子で前代魔王を見やる。

「ぜ、前代魔王だよな? 俺が前に召喚した……」


「クク。久しぶりだな。かつてはよく我をこき使ってくれたものだ」


 にやりと悪い笑顔を浮かべる魔王。

 いつも通り、不気味である。


 ヒイッ、と変な声をあげるヒュースに、魔王はおかしそうに肩を竦めた。


「気にするでない。とうの昔に、我の呪いは消えておろうが」


「……ああ、うん」

 ヒュースはこほんと咳払いをして落ち着きを取り戻すと、小声で話を続けた。

「それが謎だった……。プリミラ皇女に一時解放されるときには、すでに悪夢も見なくなってたしな……」


「その通り。当時の我は、貴様の稚拙な召喚術のせいで知能を失っていたからな。貴様がテロ行為に及んだ事情を知って、呪いを消してやったのだよ」


「そ、そうだったのか……。それはまあ、すまないことをした……」


 後頭部に手を当て、ぺこりと頭を下げるヒュース。

 前代魔王はそれに対し、ふふふと変わらず不気味な笑い声を発している。


 まあ、これで仲直りといったところだろうか。よくわからないが。


 ルイスはこほんと咳払いすると、バハートに視線を戻した。


「……それで、事情を知って、レストたちに協力してるってわけか」


「ああ。俺ゃあびっくりしたぜ。まさか皇帝陛下があんな野望抱えてるたぁな」


「…………」


 その気持ちはルイスもわからないではないでもなかった。


 神聖共和国党しんせいきょうわこくとうやヴァイゼ大統領がしでかした罪を思えば、彼らを決して全面的に肯定することはできない。


 けれども、それらの悪事の根本にはソロモア皇帝がいたのだ。

 見逃すわけにはいかない。絶対に。


 冒険者ギルド、そして神聖共和国党。


 かつて敵対してきた連中だが、彼らが仲間になればかなり心強いだろう。いまはすこしでも戦力が欲しいところだ。


「で、だ」

 ルイスはヴァイゼに視線を戻す。

「なんか勝算でもあんのかよ? こうして立てこもったからにゃ、なんかあるんだろ?」


「ふふ。私を誰だと思っている」

 ヴァイゼは自信たっぷりに頷くと、ルイスとアリシアを交互に見やった。

「あなたがた二人が来れば、勝率は格段に上がる。特にルイス。言うまでもなく、その《絶対勝利》の力が鍵となる」


「…………具体的に、どんな策なんだよ」


「ふむ。よかろう。説明しよう」


 大統領いわく。

 絶宝球ぜつほうきゅうの力は強大だが、発動するほんのわずかの間だけ、ちょっとした隙ができるのだという。


 帝国全土を取り巻く闇色の壁。

 普段は強固にそびえるそれが、発動の瞬間だけ、すこしもろくなるらしい。


 なんでも、共和国に古くから伝わる文献に書いてあるとのこと。二千年前の大統領が後世のために記したのだという。


「……それがわかっていてもなお、我々は帝国に攻めることができなかった。見ただろう? 絶宝球から放たれた、おぞましき可視放射の威力を」


「ああ……」


 応じながら、ルイスは隣で倒れ込むレストを見やる。

 彼ほどの猛者でもたった一撃で沈んでしまうほどの攻撃力。闇色の壁を突破する間に、多くのおとりが必要となってしまうわけだ。ただでさえ戦力が足りない現状では、それが死活問題となってしまう。


 こちらの視線に気づいたレストが、ミューミの膝の上で苦い笑みを浮かべる。


「ルイスのおっちゃん。絶宝球の力はあんなもんじゃねえさ。その気になりゃ、国のひとつくらい一瞬で吹き飛ばせる」


「な……なんだと?」


 では、当時の可視放射はかなり弱い威力だったということか。


 まあ、ソロモアは共和国をも支配したがっているようだから、それも当然か。


「フム。なるほどな」

 前代魔王が腕を組みながら声を発する。

「あの障壁しょうへきを突破しようにも、その前に甚大な被害が発生してしまう。だから手をこまねいていたわけか」


 ――そういうことか。

 ここまでの流れで、ルイスにはだいたい察しがついた。


「俺に――絶宝球からの攻撃を受けてほしいってわけだな? これが確実だろうよ」


「フフ。ご名答」


 しっかりと頷くヴァイゼに、ルイスはふうとため息をつく。

 仕方ないことではあるが、一番危険な役目だ。絶宝球そのものと正面対決するのだから。


 だが――現状ではたしかに、これができるのはルイスしかいない。


「あ、あの……思ったんですけど……。帝国の向こう側に転移することはできないんですか? 私やミューミさんの魔法で……」


 アリシアの問いかけに、ヒュースが答える。


「残念ながら無理そうだ。帝国の魔術師が妨害魔法をかけているようでな」


「うう。そう簡単にはいかないですか……」


 となれば、やはりルイスが先陣を切るしかないだろう。他の誰かを犠牲にするわけにはいかない。


 しん、と。

 沈黙が降りるなか、ミューミがルイスを見上げた。


「でも……いいんですか? ルイスさん」


「ん? なにがだよ」


「だって……わかるでしょう? もしこれでルイスさんが相打ちになったら……」


 そこまでを言いかけて、辛そうにどもるミューミ。


「……はん。なるほどな」


 彼女の言いたいことを、ルイスはなんとなく察していた。


 もしルイスが相打ちとなり、そしてまた、この戦いに共和国が勝利すれば――

 一番得するのは共和国側であると、彼女はそう言いたいんだろう。


「はっ。なに言ってんだ」

 ルイスはふっと笑う。

「おまえたち、そんな悪ィ人間なのかよ。俺にはそうは見えねえけどな」


「え……」


「気にするな。俺は死なねえし、おまえたちもある程度は信用してる。すくなくともこの戦いが終わるまでは仲間だろ」



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