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最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る。  作者: どまどま@チートコード操作 書籍化&コミカライズ
【三章】 魔物界編 ~最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る~
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万年Eランクのおっさん冒険者と、天才Sランク冒険者

  ★ 


 ――その一方で。


「フム。まずいな……」


 脇で戦闘を見守っていたロアヌ・ヴァニタスが、ぼそっと声を発した。腕を組み、険しい表情でルイスらの戦いを観察している。


「まずいって……どうしたの、ロアちゃん」


 問いかけるアリシアに、ロアヌ・ヴァニタスは首を横に振った。


「想定以上に激しい戦いになりそうだ。ここにいたら我らも危ないぞ」


「え……」


「アリシア。古代魔法を使ってくれ。うんと強い結界を張って――」


 ロアヌ・ヴァニタスが言い掛けた、その瞬間。


「ああっ!」


 アリシアは顔面を片腕で覆った。

 鼓膜を突き抜くような轟音とともに、鋭い衝撃波が襲ってきたからだ。


 見れば、銀の煌めきをまとったルイス・アルゼイドと、漆黒の霊気をまとったレスト・ネスレイアが再び激突したところだった。両者が動くたびに銀と黒の奇跡が宙を走り、まさに次元を超越した光景だった。と同時に、太刀のぶつかり合う冷たい音も聞こえてくる。


「…………」


 アリシアは思わず息を呑んだ。

 地中にいるはずなのに、暴風雨のど真ん中に突っ立っているような気分だ。さきほどの一般女性――アルカナがこの場にいたら、きっと大変なことになっていただろう。


 このままでは……

 アリシアは無言で杖を取り出すと、古代魔法を発動する。無色の輝きが杖の先端から発せられ、徐々に膨らんでいく。大きくなっていく。


 数秒後。


「こ、これは……」


 暴風に足を踏ん張っていたフラムが、大きく目を見開いた。

 アリシアの周囲数メートルを、透明な膜が覆い尽くしたからだ。あれほど激しかった暴風の気配が嘘のように消えてなくなる。


 ――いや。


 実際に暴風が消えたわけではない。

 アリシアの周囲にのみ、万象一切の攻撃が届かなくなったのだ。


 膜の向こう側では、相も変わらずあちこちで衝撃波が発生している。だが膜に触れた瞬間、まるで溶かされたかのように消失するのである。


「はは。すげぇな、こりゃ」


 さしものフラムも苦笑を浮かべる。


 ――これが、古代魔法のひとつ、《異次元結界》。

 使用中は自身も攻撃できないが、あらゆる攻撃から身を守る、無条件勝利にも匹敵するチート技だ。


「アリシア。MPは平気か」


「うん。それは心配しないで」


 ロアヌ・ヴァニタスの問いかけに、アリシアは薄く微笑みかけた。


 この《異次元結界》は強力な魔法であるため、その代償も馬鹿にできない。使用している間はずっと、術者のMPが削られていくのである。


 以前のアリシアならば逆立ちしても使えなかった大技だ。素のステータスがめちゃくちゃ弱かったのだから。


 魔物界でロアヌ・ヴァニタスに修行をつけてもらったおかげで、アリシアも前とは比較にならないほどステータスが高まったわけだ。古代魔法のおかげで成長補正がかかっているらしく、MPだけならば、帝都に在住する凄腕の魔術師にも引けを取らない。


 前代魔王の修行で強くなったのは、ルイスやフラムだけではない、ということだ。


 ガキン! ガキン!


 結界の向こう側で、激しい剣戟の音が聞こえる。その度に巨大な衝撃波が襲ってくるから、《異次元結界》があるとわかっていても正直ヒヤヒヤする。


 ――戦っているだけでこれほどの災害を引き起こすなんて。


 ルイスの《絶対勝利》は言わずもがな、レストの《ステータス・オールマックス》もかなり強力である。あの青年が、こんな大技を隠し持っていたとは……


「心配か。あいつが」

 物思いに耽るアリシアに、フラムが声をかけてきた。

「心配するな。あいつならきっと、うまくやってくれる。それはあんたが一番わかってんだろ?」


「はい……」


 ルイスさん。

 どうか、どうかご無事でいてください……


 結界の内側で、そう強く祈るアリシアだった。


 ★


 速い。

 速すぎる。


 ルイス・アルゼイドは、かつてない衝撃に見舞われていた。


 すべてのステータスを極限に高めたレストの動きは、いままで相対したどんな敵よりも速く、そして重い。


 古代魔獣や前代魔王、そして数々の凄腕戦士たち。


 これまで多くの敵と戦ってきたルイスだが、この青年ほどの恐怖は覚えなかった。


 たしか、ステータスの限界値は「99999」だったはず。レベル1時点のルイスが二桁程度のステータスしか持ち合わせていなかったことから、すさまじいまでのチートっぷりが窺える。


 さすが、《無条件勝利》にあらがうためだけに鍛えてきただけはある……!


「おおおおおおっ!」


 ――心眼一刀流、一の型、極・疾風。


 ここまで来たら、もう猪口才な心理戦は通用しまい。いままでの冒険で培ったすべてを、ルイスは青年にぶつけていった。


「せいやぁぁぁぁああ!」


 そしてそれはレストも同様のようだった。まったく同じ剣技を、絶叫とともに放ってくる。敏捷度99999の速さは尋常ではないが、こちらとて《絶対勝利》の所有者。負けるつもりはない。


 ゴォン! ズドォン!


 人智を超えた戦いのせいだろう。

 周辺の壁面が無惨に抉れたり、大地震が発生したり、周囲への被害も無視できなくなっている。


 気になって仲間たちを一瞥いちべつしたが、アリシアの古代魔法でうまく難から逃れているようだ。あれなら大丈夫だろう。


 ――どれほど太刀を打ち込んだだろうか。


 ふいに、レストの動きが鈍くなっているように感じた。それでも速いことに変わりはないのだが、さっきよりもスピードが落ちているような……。心なしか、表情も辛そうに歪み始めている。


「ぐうっ……」


 そしてレストが苦しそうに片膝をついたとき、ルイスのなかである予感が芽生えた。


「おまえ、まさか……」


「……はは。時間切れ、みてえだな……」

 苦笑とともに、レストはこちらを見上げる。

「チートスキル《ステータス・オールマックス》……強力ではあるが、体力の消耗が激しいのが欠点でな。あんたの《無条件勝利》と一緒だよ」



新作を公開しております。


「元奴隷だった転生賢者。前世から引き継がれた力で異世界を無双する ~こっちの世界でも悪徳奴隷商人がいるようです~」


ぜひお越しくださいませ!


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