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最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る。  作者: どまどま@チートコード操作 書籍化&コミカライズ
【三章】 魔物界編 ~最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る~
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二千年の決着へ

 フラムの宣言通り、この先はかなり危険な道のりだった。


 どういう仕組みなのかわかりかねるが、一定の間隔で魔獣が出没するのだ。


 他にも、どこからともなく炎の矢が飛んできたり、地雷が仕掛けてあったり……フラムがいなければ相当に苦労したことは疑いようもなかった。


 ――いや。

 もうひとり、いた。


 現れる魔獣を問答無用で追い返す、前代未聞の化け物が。


「貴様。魔王たる我に襲いかかろうとは……いい度胸をしておるではないか」


「ギャ……」


 そんな呻き声とともに後ずさるのは、ミノタウルス――馬のような顔を持つ、半人半獣の怪物だ。盛り上がった肉体からわかるように、筋力値のステータスが異様に高く、Aランク冒険者でさえ苦戦するような強敵なのだが――


「わかっておろうな? 貴様が我に刃向かった瞬間、末代まで呪われる運命となる」


「グググ……」


 後退するミノタウルスに対し、ロアヌ・ヴァニタスは問答無用で距離を詰めていく。


 相も変わらずニタニタ笑っているところがまた不気味である。


「どうした? 話が聞こえなかったのか? そこをどけ。さもなくば……」


「ウゥ……」


 ――なんと。

 ミノタウルスは相当の図太さで知られているはずだが、魔王の威圧感にはまったく適わないらしい。巨体をそのままひるがえすや、


「ギャーーーー」


 悲鳴にも似た叫びとともに、いずこへと去ってしまう。


 ――戦わずして勝利。

 最強スキル《絶対勝利》持ちのルイスもびっくりである。


「……なんつーか、反則だよな、おまえ」


 呆れ混じりに言うルイスに、前代魔王はクククっと悪い笑みを浮かべた。どこからどう見ても悪人顔だ。


「そのおかげで貴様らは助かっているだろう。感謝してくれてもいいのだぞ」


「はいはい……」


 ――もはやなにも言うまい。


 ユーラス共和国が苦心惨憺くしんさんたんして作り上げたこの隠し部屋も、ルイスら四人組にとってはなんの脅威でもない。フラムの無駄のない案内もあって、実に順調に経路を進んでいた。


 距離的にはもう、だいぶ歩いたはずである。


「…………」


 ルイスはすっと表情を引き締め、ミノタウルスの走り去った方向を見やった。


「……フラム。そろそろかよ」


「ほう。よくわかったな」

 フラムはすこしだけ目を見開くと、ルイスと同じ方向に視線を向ける。

「もうそろそろ終点だ。ヴァイゼ大統領やレスト大臣も……たぶん、そこにいると思う」


「そうか……」


 魔導具により気配は消されているはずだが、ルイスはなんとなく感じ取っていた。


 勇者エルガーと同じ流儀の使い手……レスト・ネスレイアの空気を。

《無条件勝利》の継ぎ手に対抗するため、二千年前から鍛錬を積んできた男の力を。


 それを思うと、知らず知らずのうちに身体が震える。


 これは武者震いというやつか、それとも――


「ルイスさん……」

 そんなルイスの心境を察したか、アリシアがそっと手を握ってくる。

「大丈夫です。いまは私も、フラムさんも、魔王さんもいますから」


「…………」


 サクセンドリア帝国におけるSランク冒険者にして、その実、ユーラス共和国の大臣と工作員を兼ねていた男。


 剣と魔法の腕も去ることながら、相当の実力者であることは言うまでもあるまい。


 現にルイスも、彼が無邪気なあまり、その正体に気づけなかった。


 だが――皇帝ソロモアだけは彼の正体を察していたわけだ。その上で彼の裏を掻き、ユーラス共和国を事実上乗っ取ってしまった。


 一般人の知らないところで、高度な知略が繰り広げられていたわけである。


「レスト・ネスレイアか。フム、たしかにかなりの強敵であろうな」

 さきほどとは打って変わり、前代魔王も表情を引き締める。

「……だが、いまの貴様らならば、決して適わない相手ではあるまい。心配は不要だ」


「……はっ。まさか魔王なんぞに慰められるたぁな」


「誰が魔王なんぞだ」


「さあ、行くぞみんな。本番は……これからだ」





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