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最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る。  作者: どまどま@チートコード操作 書籍化&コミカライズ
【三章】 魔物界編 ~最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る~
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三人の仲間とともに

 魔王城へは、さほど苦労することなく到着した。


 なにしろロアヌ・ヴァニタスの転移術があるのだ。時間があればのんびり魔物界を散策してもいいが、いまはそんな猶予はない。短縮できるところは短縮して、ルイスたちはユーラス共和国へと急いだ。


 途中、還らぬ者となった現代魔王が仰向けになっているのが見えた。目を大きく見開き、最期までなにが起きているのかわからなかったように思える。さぞ……無念であったろう。


「ガーラス……」

 思うところがあるのか、ロアヌ・ヴァニタスが遺体の前で立ち尽くす。

「我が不在の間……よくぞ世界を守ってくれた」


 そう呟くロアヌ・ヴァニタスの姿は、帝国であれほど恐れられていた魔王のイメージとはほど遠い。


 自身の藍色マントをほどくと、亡骸なきがらにゆっくりと被せた。


 そんなロアヌ・ヴァニタスの隣へ、ルイスはゆっくりと並ぶ。


「そうか……おまえさんがいない間は、この……ガーラス? に魔王をやってもらってたんだっけか」


「ああ。実力的にはやや不安だったが、こうするしかなかった……」


 たしかに、とルイスは思う。

 ロアが姿をくらますことでしか、帝国の侵攻を止めることはできなかったのだろう。話を聞く限りだと、二千年前の皇帝もかなりの野心家だ。


 すべては、二千年後のいま――皇帝ソロモア・エル・アウセレーゼの野望を阻止するために。


「ガーラスはよくやってくれたさ。あとは……我らがケリをつける番だな」


「大丈夫ですよ、ロアちゃん」

 暗い声で呟くロアヌ・ヴァニタスに、アリシアがいつもの朗らかな笑みを浮かべる。

「世界を救うなんて、正直私にはおこがましいですけど……それでも、ここまでやってこられたんです。元々、《圏外》ランクの私がですよ?」


「…………」


「ですから大丈夫です。どんなに大変なことでも、みんないれば乗り越えられます。私はそれをルイスさんから教わりました」


「フフ……まさか。これは思いも寄らぬ事態だな」

 アリシアの臭い励ましに、ロアヌ・ヴァニタスが苦い笑みを発した。

「魔王が人間に慰められる日が来ようとは。歴史上、初めてのことだ」


「う……こ、これは誰かさんの影響かと」


「だなぁ。私も誰かさんのせいだと思うぞ」


 フラムとアリシアが、チラチラとルイスを見ては変な笑い声をあげている。


 本当に緊張感のない奴らだ。


「んー、こほん」

 ルイスは無理やり咳払いをかますと、前代魔王に向き直る。

「ロア。改めて聞こう。俺たちとともに……戦ってくれるんだな?」


「ふむ。当然だ。二千年前の借りを返さんとな」


 魔王と共闘する。

 まさに思いもよらない展開だ。

 だがきっと、ロアヌ・ヴァニタスなら信用してもいいだろう。これまでのやり取りで、魔王の性格はなんとなく伝わってきた。


「フラム。ユーラス共和国の地理はおまえが一番詳しい。案内を……頼めるな?」


「おう。任せておけ」


 パンパンと自身の二の腕を叩くフラム。敏捷度においては彼女が一番高いので、今後も切り込みは任せることになるだろう。


 最後にルイスは、長年付き添ってきた相棒に目を向けた。


「アリシア……。特におまえに言うことはない。いままで通り、全身全霊、すべての力でもって戦いに臨むぞ」


「はい! 背中はお任せください!」


 最初は頼りなく聞こえたその台詞せりふも、いまなら不思議な重みが感じられた。これまでの旅で、彼女も間違いなく成長してきたと思う。


 ――さて。

 ルイスはくるりと振り向くと、一際大きい二本の柱を見やった。


 漆黒に塗れるその柱の間には、うっすらとしたもやが漂っている。前代魔王によれば、あれをくぐることで共和国に転移できるらしい。


 帝国に制圧されたユーラス共和国。

 間違いなく連戦となるだろう。


 ルイスはぐっと気を引き締め、その靄に歩を進めていくのだった。





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