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最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る。  作者: どまどま@チートコード操作 書籍化&コミカライズ
【三章】 魔物界編 ~最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る~
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おっさんの修行の成果 1

  ★


 ――次元の狭間にて。

 ルイス一行は、ゾンネーガ・アッフの軍団を見事撃破し、今度はロアヌ・ヴァニタス本人と戦っていた。


 さきほどの修行の効果も相俟あいまって、かなり良い勝負を繰り広げていたのだが。


「……む」


 ロアヌ・ヴァニタスがふいに唸り声を発し、動きを止めた。上空をじっと見つめている。


「おい。どうした」


 眉をひそめながら問いかけるルイスに、ロアヌ・ヴァニタスはどこか覚束ない様子で答える。


「……いや。フレド村で妙な気配を感じるのだ」


「なに……」


 まさか皇帝の刺客か……?


 一瞬だけそう思ったが、すぐにありえないと考え直す。


 魔物界は広い。

 刺客どもは魔王城へ転送してきたばかりなのに、ピタリとフレド村の位置を探り当てることなど……


「ルイスよ。ひとつだけ聞かせてほしいのだが」

 ロアヌ・ヴァニタスがこちらを見据えて言う。

「なぜ貴様らは帝国に狙われるのだ。フラムはともかく、ルイスとアリシアは帝国の出自だろう? 狙われる理由がわからないのだが」


「……あ」


 言われてはっとする。


 たしかにそうだ。

 すっかり抜けていたが、なぜ皇帝は俺たちを敵視しているのだろう。


 俺たちが皇帝を打倒しにいくことを見抜かれている……? だから先手を打ってきた……?


 いや、だとしても自分たちが魔物界へ来たのは昨日の今日。どう考えても早すぎる。


 そう。

 この一連の流れが、まるで仕組まれていた・・・・・・・かのように早すぎるのだ。


「……ちょっと待てよ」

 ふいに、フラムが険しい表情を浮かべる。

「ロア。私たちが皇帝を倒しにいくことを知っている者は――他に誰がいる」


「ふむ? それは言うまでもなかろう。ここにいる四人と、あとはロータスくらい……」


 そこまで言いかけたところで、ロアヌ・ヴァニタスもひらめくものがあったのだろう。

 しばらく黙考したあと、重々しい声で告げる。


「そういえば……昨日、ロータスは食材を持ってくるのがやたら遅かったな……」


「あ! そうですよ!」

 アリシアも目を見開き、大仰な身振り手振りを繰り出した。

「あのとき、私たち三人、お風呂場で《皇帝にギャフンと言わせにいく》とかなんとか話し合ってましたもん! もしかしたら、あのとき聞かれて……!」


 アリシアのその言葉を、最後にルイスが引き継ぐ。


「で……その内容を帝国の誰かに内通したってことかよ……」


 これならたしかに筋は通る。


 そうでなくば、こんなにも早く刺客が来る理由がわからない……


「だ、だとしたらまずいんじゃないのか!?」

 フラムが切羽詰まったようすで魔王に詰め寄る。

「この推測が正しかったら、フレド村は人間たちに襲われているはず……! 早く戻らんと、取り返しのつかないことになるぞ……!」


「そうだな。三人とも……申し訳ないが、協力してくれるか?」


「はっ。誰に言ってる」

 ルイスは決意を瞳に称え、前代魔王の紅い眼窩を見つめた。

「守るものが魔獣だろうと誰だろうと……俺たちがやることは変わらない。修行の成果、見せてやるさ!」


  ★


「ロ、ロータス! てめェ、どういうことだ!!」


 トカゲ型の魔獣――バースは喉が張り裂けんばかりに大きく叫んだ。


 ――フレド村。


 普段は落ち着いているはずのその村は、現在、大混乱に陥っていた。


 赤いローブを身にまとった大勢の人間たちが、奇妙なスキルを用いて、魔獣たちを一刀のもとに殺していく。


 ここの魔獣は弱いわけではない。

 そこらの人間ごとき、簡単に潰せるはずなのに。


 なのに……人間たちのスキルは奇妙に過ぎる。


 バースも危うく殺されかけるところだったところを、友人が身代わりとなったことでなんとか逃げおおせることができた。逃走はバースの主義に反するが、いまは体勢を立て直し、対応策を練ることが最善の策――


 そう考えていたところに、村長――ロータスが立ちふさがった。


 どういうわけだか、奴だけは人間に狙われていない。それどころか、さきほど赤ローブの人間と親しげに話しているところをバースは目撃した。


「ふふ。なにを驚いている」

 ロータスは片頬を吊り上げ、嫌らしい笑みを浮かべた。

「さっきも言ったろう。あの人間をおまえ・・・が殺す必要はない。無駄だとな」


「な、なんだと……。じ、じゃあ、この人間どもはおまえが呼んだのかよ!?」


「しかり。二千年前の戦争で明らかになったろう。絶宝球には適わない。こうして人間と手を組むことが最善の策なのだよ」


「ふ、ふざけんなッ!!」

 バースはありったけの声量で叫ぶ。

「他の魔獣はどうなんだよ! みんな殺されて、こんなもんが平和っていえるかよ!!」


「ふぅ。いちいちうるさいハエだな。いい加減うんざりだよ。――おい」


 ロータスは近くにいた人間の肩をつつくと、もう片方の手でバースを指さした。


「このガキを始末してくれたまえ。もう余興は終わった」


「ふむ。いいのか?」


「構わん。前代魔王も現れ次第に殺せ。目障りだからな」


「……了解」


 人間は無機質な声で返答すると、バースに向き直る。


「くっ……!」


 バースは慌てて戦闘の構えを取った。


 身体が震える。

 緊張のあまり視界が歪む。


 この人間も、他の奴ら同様、妙なオーラを放っていた。湯気というべきか、とてつもなく熱いエネルギーを感じる。


 なんだこの力は。信じられない力が伝わってくる……!


「あんたにゃ恨みはないが、これも上からの命令でね。死んでもらうぞ、トカゲ」


「ふん。やってみろよ!」

 それでもバースは怯まない。

「もう人間に負けるのはうんざりだ! 俺は絶対に死なねえ!」



「――よく言った。見直したぞ、バース」

 


 瞬間。

 聞き覚えのある人間の声が、バースの聴覚を揺らした。




 

 

 

 

 

 


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