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最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る。  作者: どまどま@チートコード操作 書籍化&コミカライズ
【三章】 魔物界編 ~最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る~
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魔獣たちの思い

「あー、ったく! 納得いかねえよ!」


 トカゲ型の魔獣――バースは苛立ったように地団駄を踏む。

 それだけで地面が抉れ、土埃が周囲に舞った。


「悪ィのはあの人間どもだろ! なんで俺たちがその尻拭いしなきゃなんねえんだよ!」


 そうしながら、いまだギャーギャー喚くバース。


 ルイスたちが異次元へと去った後、フレド村では微妙な空気が流れていた。バースは若いが、ステータスだけなら村一番の強さを誇る。そのため、他の村民もあまり強くは言うことができない。


「まあまあ、落ち着きなさい」

 そう宥めるのは、村長のロータスだ。

「さっきも前代魔王様が仰っていただろう。ずっと種族間でいがみあっていては、今後、平和な世界が訪れることはない。だから我々は――」


「うっせーんだよ! んなこたァどうでもいい!」

 大声とともに、近くの民家をドコォン! と殴る。

「あんただって知ってんだろ! 俺の親父は、人間どものせいで……!」


「わかってるさ。だからこそ、我々はいまこそ互いに歩み寄る必要が――うおっ!」


 ロータスの言葉は最後まで続かなかった。バースが勢いよく殴りかかってきたからだ。


 とはいえ、ロータスも村では経験・実力ともにトップクラス。

 いくらバースの攻撃が速くとも、避けることは難しくなかった。


「ちっ……」

 攻撃が空振りしたバースはつまらなそうに唾を吐き捨てると、くるりとロータスに背を向けた。

「どうせあんたにゃなに話してもわかんねえよ。俺は、俺のやり方を貫くまでさ」


「……あの人間たちになにかをするつもりか。無駄だ。やめておきなさい」


「知らねェって言ってんだろうがよ」


 ふん、と最後に言い捨てると、バースはいずこへと立ち去っていった。


「…………」


「……あの、大丈夫です?」


 ひとり立ち尽くすロータスに、一体の魔獣が話しかけてきた。小さなゴブリンだ。


「ああ」

 ロータスは自身の膝をパンパンはたきながら苦笑する。

「見苦しいところを見せたね。仕方ないさ。私とて、彼の気持ちがわからないでもない」


「はい……。人間、それも帝国人と協力するのは、僕でもちょっと抵抗ありますもん」


「はは。無理もない」


 二千年前の戦争をきっかけに、帝国と共和国はずっと微妙な関係を引きずってきた。

 それは魔物界とて同じだ。

 もともと人間と魔獣は友好的な関係ではなかったし、それに加え、二千年前には多くの魔獣が帝国に殺された。


 向こうで勇者と称えられているエルガー・クロノイスなど、こちらにとってはただの大量殺人犯でしかない。


 理屈ではわかっているのだ。

 現在の魔物界は、ルイス・アルゼイドに協力すべきであると。


 しかしながら、過去のしがらみから、そう素直に人間に協力できない……そんな複雑な思いを、バースを含め多くの魔獣が抱いているに違いないのだ。


 だからロータスには、バースの心情も痛いほどにわかってしまうのである。


「平和、か。そのような時代が来ればいいのだが」


 ひとり呟くロータスだった。


  ★


「お、おい、本当にやるのかよ!?」


「当たり前だろが。これしか方法はねえよ」


 ――フレド村のはずれ。

 人目につきづらい建物の裏で、数十人の魔獣がコソコソと話し合っていた。


 その中心人物となっているのが、トカゲ型の魔獣――バースである。


「人間どもが《修行》から戻ったタイミングで、もろとも殺してやるんだ。絶対疲れてるだろうから、一番いいタイミングだろ」


「……だ、だが、近くにはロアヌ・ヴァニタス様もいらっしゃるんだろ? おっかねえよ……」


「ロアヌ・ヴァニタス様だってきっと修行後は疲れてるだろ。いけるさ」


「…………」


 人間に強い不満を持った魔獣たち。それでいて、バースに匹敵するほどの実力を持った村民。


 そんな連中を集めるのは存外簡単なことだった。特に二千年前の戦争を知らない魔獣――そこにバースも含まれるのだが――は、人間にとりとめもなく憎悪を抱いている。


 バースは周囲をきょろきょろ見渡してから、声をひそめて言った。


「もし魔王様になにか言われても気にするな。俺が責任を持つからよ」


「バ、バース……。おまえ……なぜそこまでして……」


「ふん。まあ、俺にも色々あるってことよ」



 

「――お取り込み中、申し訳ない。フレド村というのはここかな?」




「……あ?」


 急に聞き覚えのない声に呼ばれ、バースは振り返る。


 おかしい。

 さっきは周囲に誰もいなかったはずだが……


 そしてバースが声の主の正体を悟ったとき、心臓がくり貫けるほどの衝撃を覚えた。


「なっ……! お、おまえ……!」


 人間だ。

 赤いローブを身にまとっているため、その風貌はよく見えないが、どう考えても魔獣ではない生き物がそこにいた。


「話は聞かせてもらったよ。この村に人間たちが来たようだね」


「あ……あ……」


「ついでに、君たちも殺してあげよう。大人しく散るがいい。スキル解放――《無条件勝利》」

 


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