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最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る。  作者: どまどま@チートコード操作 書籍化&コミカライズ
【三章】 魔物界編 ~最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る~
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おっさん、頭が痛くなる

 次にまばたきをしたとき、ルイスたちはまったく見知らぬ場所にいた。


 なにもない世界、と言うべきか。

 四方八方、ひたすらに白いもやがかかっており、全景が見渡せない。どれほどの面積があるのか、上空はどこまで続いているのか……なにも見て取れることができない。


「こ、これは……」


 フラムがあんぐりと空を見上げながら言う。


 アリシアも同様、目を白黒させて辺りを見回していた。


「ふ。さすがに驚いたかな」


 落ち着き払った声でそう言ったのは、前代魔王――ロアヌ・ヴァニタスだ。重量感のある剣を片手に携え、コリコリと肩を鳴らす。


「一言で言うなら……まあ、次元の狭間というやつか。ここなら、どれだけ派手に戦っても敵に見つかることはない。思い切りやり合える」


「そ、そうか……。助かるよ」


 ぺこりと頭を下げるルイス。

 なにからなにまで至れり尽くせりで、申し訳なくなってくる。


「ふむ、気にすることはない。それだけ期待しているということだ。貴様らの可能性にな」


「か、可能性……」

 アリシアが目をキラキラさせながらオウム返しする。

「私たち、もっともっと強くなれるんですよね……?」


「それはもうな。楽しみにしておくがよい」


「ふふふ……私たち、もっと強く……」


 ひとり呟きながら自分の世界にこもるアリシア。ニヤニヤ笑っている。


「おーい、戻ってこーい」


 フラムがそんな彼女の眼前で手を振るが、いまだブツブツ言っている始末である。


「ほっとけ、こいつは前からそんなんだ」


 ひょいと肩を竦めるルイス。


「わ、私がもっと強くなれる……(ブツブツ)」


「んで、魔王よ。これからどうすればいい。またおまえさんと戦えばいいのか」


「いや、それは効率が悪いな。というより、いまの貴様らでは我に勝てんぞ」


「んぐ。言ってくれるじゃねえかよ……」


 まあ、召還された当時のロアヌ・ヴァニタスにさえ、奇跡的に勝てたようなものだ。

 そんな魔王が本気を出したら――たしかに勝てる気がしない。


「経験値は戦闘に勝利せねば増えない。……そういうわけで、まずはこいつらを全滅させてもらおう」


 そうロアヌ・ヴァニタスが告げた瞬間。

 魔王の背後から、見るもおびただしい影が出現した。


 しかも相当に巨大だ。もしかすれば、帝都サクセンドリアの王城よりも大きい……


 ――いや。

 無数の影が近づいてくるにつれ、ルイスはそいつらの正体を改めて認識した。


 ゾンネーガ・アッフ。

 過去に戦った強敵が、再びルイスの前に立ちふさがっていた。その数だけがどうしようもなく以前と異なっているが。


「おい……何体いるんだ、こいつら」


 半笑いを浮かべるルイスに、前代魔王はこともなげに答える。


「さあな。千体はいるんじゃないか。たぶん」


「せ、千……!!」


 さすがに甲高いを声を発してしまう。

 いくらなんでも限度ってもんがあるだろう。


 さっきまで昇天していたアリシアも、ゾンネーガ・アッフの軍団に気づいた途端、「ひょえ!?」とすっとぼけた声をあげた。


「ルイスさん、あれはなんですか?」


「修行相手だってよ。あいつらを全員ぶっ飛ばせなきゃならんそうだ」


「は、はあ……。すごいですねー……」


「…………」


 なんつーとぼけた反応だ。なんだか頭が痛くなってくる。


「……ルイス。私が先陣を切る。攻撃は頼むぞ」


「お、おう……」


 真面目な顔で一歩前に出るフラムだけが唯一救いに見えた。


「おっと、忘れるところであった」


 ふいに前代魔王がそう呟くと、片手を空に掲げ、なにかしらの魔法を発動した。


 優しげな緑色の光がルイスたちをすっぽり包み込み、そして消えていく。


「古代に伝わる補助魔法でな。一定期間、獲得の経験値が二倍になる」


「ほう……」


 なんとも便利な魔法だ。

 たしかに奴の言うとおり格段に強くなれそうだ。うまく成功すれば――だが。


「……よし」

 ルイスは気持ちを切り替え、気合いを入れると、太刀の柄に手を伸ばした。

「アリシア、フラム。これも帝国と共和国のためだ。真剣にやり抜くぞ」


「はい……!」

「了解!」


 そうしてルイスたちがそれぞれの武器を構えた――その瞬間。


 一番先頭にいたゾンネーガ・アッフがぴたりと立ち止まり、なんとお辞儀してくるではないか。


「コチラこそ、おテヤワラカらかにお願いしますぅー」


「…………」

 さすがにぴたりと硬直するルイスたち。

「……は? ……な、なんて?」


「デスカラ、コチラこそお願いしますぅ。オイラたちも魔王サマに無理矢理連れて来られたんですよぉ」


「…………」


 ルイスはぎろりと前代魔王を睨みつけると、前代魔王はなんでもないかのように肩を竦めた。


「言ったろうに。我々には知性がある。特にこいつらは強いうえに頭もいいぞ?」


「…………」


「心配するな。回復手段はいくらでも用意してある。思う存分に戦うがいい」


「はぃい。ルイスサン、アリシアサン、フラムサン、ぜひお願いしますぅー」


「…………」


 なんとも緊張感のない修行の、これが始まりだった。




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