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最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る。  作者: どまどま@チートコード操作 書籍化&コミカライズ
【三章】 魔物界編 ~最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る~
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おっさん、こんなのには慣れています。

この後のカタルシスは保証しますので、

ぜひともお付きあいお願いします……!

「ふ……ふざけるな!」 

 ふいに、どこからか喚き声が聞こえた。

「さっきから聞いてりゃ……どう考えてもおかしいだろ! 魔王様が殺されたのは人間のせいだ!」


 声の主は、リザードバースという種族の魔獣である。

 黄色がかった鱗が特徴的な、トカゲ型の魔獣だ。線は細いが身長は高く、顎から飛び出る牙がなんとも禍々しい。


 魔獣の年齢はルイスたちには判別しかねるものの、かなり若いんだろうな――とルイスは直感した。声のトーンが他の魔獣より数段高いのである。


「バース……。やめんか、みっともない」


 ロータスが眉間をおさえながら注意する。なんだか面倒くさそうな表情だ。


 反面、他の魔獣たちはバースと同様、ルイスにやや懐疑的な視線を向けてくる。


 まあ、人間がいきなり乗り込んできたうえに、そのタイミングで魔王が殺されたのだ。疑われても仕方ない。


 バースはそんな空気に勢いづいたのか、ルイスをぎろりと睨みつける。


「その人間どもが現れてから魔王様が殺された! おかしいだろうが! そいつは疫病神だ!」


「…………」


 まあ、この指摘そのものはあながち的外れではないと思う。


 もしくだんの刺客が帝国からの差し金であったなら、ルイスを始末しにきた可能性も充分に考えられる。つまり、ルイスたちのせいだ。


 ――とはいえ、こっちとしても、好き好んで魔物界に来たわけでもないのだが。


「しかしな、バースよ。この人間たちに世界の命運がかかっているのだ。ここはいったん我慢を――」


「うるせぇ! 人間なんかに助けてもらう義理はねぇよ! 早く魔物界から出て行け! 殺されねえうちにな!」


 ――あぁ。

 ルイスは思わず大きな息をつく。


 サクセンドリア帝国やユーラス共和国に続いて、ここ魔物界でも。


 俺たちは結局、こうやって迫害される運命なのか。

 たまには暖かく歓迎されてみたいものだ。


「なにしてる! 出て行け! そして二度とその面を俺に――」


 いきりたったバースの前に、ロアヌ・ヴァニタスが立ちふさがる。


「そのへんにしておけ。若者」


「うっ……!」


 さすがの彼も前代魔王の威圧には適わないようで、数歩後ずさるや、一瞬にして押し黙った。


「さっきもロータスが言っていただろう。色々思うところはあろうが、この人間たちは最後の希望だ。冷静になれ」


「で……でも、俺は納得できないっすよ!」

 両手を大きく広げ、あくまでも反論するバース。

「人間はいつもこうだ! 問答無用で俺たちを殺して……! 人間なんてクソくらえですよ!!」


「そうだな。我も二千年前は同じように考えておった」


「え……」


「聞け若者よ。互いに憎み合っていては、たとえ帝国を滅ぼしても同じことが起きる。互いの可能性を信じろ」


 前代魔王のその言葉で。

 ルイスは、いままでの旅路たびじを思い出した。


 アルトリア・カーフェイは、余所者よそもののルイスを暖かく受け入れてくれた。おかげで、ルイスはさらなる力と自信を手に入れた。


 帝都サクセンンドリア。ルイスと冒険者ギルドは、かつての仲はさておいて、ともに神聖共和国党しんせいきょうわこくとうの陰謀を阻止した。おかげで帝国は救われた。


 ユーラス共和国。フラム・アルベーヌは、ルイスの出自を気にすることなく、ここまでついてきてくれている……


 互いを憎み合うことなく、信じあったからこそ、みんなが救われた。


 ひょっとしたら。

 傀儡くぐつとして散ってしまった勇者エルガーも、本当はそんな世界に導きたかったんじゃないか……?


「どうした。我の言うことが聞けぬか」


「ぐ……」


 結局、前代魔王に根負けした形でバースは引き下がった。悔しそうにルイスたちを睨んでいる。


「みなさま、えっと、申し訳ございませんでした」

 ロータスが深く頭を下げてくる。

「ご存知のように、我々のなかには人間をよく思わない者が多く存在します。どうかお許しを……」


「はは。いいですよ。慣れっこですから……」


 後頭部をさすりながら笑うルイス。こんなことでいまさら動じることはない。


 おそらく、前代魔王がいなければ、ルイスたちはこの魔物界で生きていることすら困難だろう。バースだけでなく、他の魔獣たちもこちらに白い目を向けている。前代魔王の存在があるからこそ、ルイスたちはなんとか命を繋いでいられるのだ。


 そういう意味では不幸中の幸いといえた。


「しかし……ふむ。妙だな」


 急に考え込むロアヌ・ヴァニタス。


「ん? どうしたよ」


「いや……なんでもない。そんなことより修行だな。時間もないから厳しくいくぞ」


「修行って……ここでやるんですか?」


 問いかけるアリシアに、前代魔王はニヤリと笑った。


「それでは刺客どもに気づかれてしまう可能性があるからな。――こうするのさ」


 ぱちん、と。

 前代魔王が指を鳴らした瞬間、ルイスたちの視界が急転した。




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