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最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る。  作者: どまどま@チートコード操作 書籍化&コミカライズ
【三章】 魔物界編 ~最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る~
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おっさん、刺客に狙われる。

 ★


「ん……」


 ルイスはぼんやりと目を開ける。


 古ぼけた木製の天井。

 吊された黄色いランプ。


 視線をずらせば、すこし離れたベッドでは、アリシアとフラムがそれぞれ寝息を立てている。


 そうか、ここは……

 ルイスはゆっくりと上半身を起こすと、思いっきり両手を伸ばした。凝り固まった筋肉がほぐされ、思わず「あぁー」と息を漏らしてしまう。


 我ながらおっさんだ。


 ロータスはかなり上等なベッドを提供してくれたようだ。ずいぶんと気持ちよく眠ることができた。昨晩は食事も入浴も堪能したし、いい気分である。


 とはいえ、魔物界は陽光がないのが欠点だ。たぶんもう朝のはずだが、窓から見える風景は、相も変わらず血塗られた曇天。すがすがしい光景とはいえない。


「ふぁあ……」

 アリシアが寝ぼけた声とともに身体を起こす。目が半開きになっており、なかなか間抜けな格好だ。

「あれぇ、ルイスさん、もう朝でしゅか……?」


「そうだ。今日はロアが修行をつけてくれるみてえだからな。気合いを入れんと」


 昨晩の話によれば、神聖共和国党しんせいきょうわこくとうの召還術で呼び出された魔獣は、本来の力を出し切れないのだという。召還術は便利な反面、そういったデメリットもあるのだとか。


 であれば、あのデタラメに強かったロアヌ・ヴァニタスもまだ力を隠し持っていることになる。修行の相手としては贅沢すぎるといえよう。


「お……」

 次いでフラムも目を覚ましたようだ。片目をこすりながらルイスたちを見渡す。

「おはよう。そうか、ここは魔物界だったな……」


「ま、信じられんことにな」

 ルイスは肩を竦めてみせると、ひょいと床に足をつけ、立ち上がった。

「とりあえずリビング行こうぜ。こうして寝てる間にも、帝国じゃなに起きてるかわかんねえからな」


「はい……!」

「あいよ……!」


 寝起きながらもしっかりとした返事をする二人だった。



 ところが、リビングには誰もいなかった。ロータスはおろか、ロアヌ・ヴァニタスの姿すら見られないのだ。


 怪訝に思ったルイスたちは、ひとまず外に出てみることにした。


  ★


「な、なんだ……!?」


 ルイスは思わず大きい声を発してしまった。


 フレド村。

 昨日は物静かな村だったのが、ずいぶんとざわついている。ゴブリンや骸骨剣士など、見たことのある魔獣が身を寄せ合ってヒソヒソと話しているのだ。


 井戸端会議のような雰囲気ではない。すべての魔獣が緊張した面持ちを浮かべている。


 この空気……。尋常じゃない。


「おお、起きたか人間たちよ」


 そう言って駆け寄ってきたのは、前代魔王ロアヌ・ヴァニタスだ。珍しく声音に焦りが感じ取れる。


「おう。どうしたんだよ。なんか事件か?」


「ああ。……思った以上に大変な状況になってきた」


「え……」


「ガーラス……現代魔王が殺害されたようだ。昨夜のうちにな」


「な、なんだと……!?」

 無意識のうちに変な声を出してしまう。

「どういうことだよ!? いったい誰が……!」


「わからない。だが……我はどうしても嫌な予感がするのだ。魔王城は難攻不落の城塞じょうさい。正面から攻めるのは相当に難しいはずだ」


「……正面から攻めるのは難しい……ってことは裏道かなんか……」


 そこまでルイスが言いかけたところで、アリシアが「あっ」と目を見開いた。


「たしか、魔王城には魔物界とユーラス共和国とを結ぶ門があるって言ってましたよね……? もしかしたら……」


「ちょ、ちょっと待てよ」

 フラムがぎょろりと目を剥く。

「ユーラス共和国の人間が現代魔王を殺したってのか? いくらなんでもそれは……」


「いえ、そうじゃなくて……」


 アリシアが言いづらそうに目を白黒させる。申し訳なさそうにルイスとフラムとを交互に見やり、しゅんと俯いてしまった。


 その様子を見てすべてを察したのだろう、フラムが乾いた笑みを浮かべる。


「う、嘘だろ……。ま、まさか、ユーラス共和国が帝国に乗っ取られたってことか……」


「わ、わかりません。現段階ではなにも……」


 気を使って黙り込むアリシアだったが、ルイスはたぶんその推測通りだろうと察していた。


 現代魔王ガーラス。

 実際の強さはわからないが、魔王と呼ばれるくらいだ、相当な実力を持っていることは想像に難くない。


 そんな魔王が、一夜にして殺された……

 これほどの所行、普通なら無理だ。

 ――ことわりを超えた力でも使用しなければ。


 黙りこくる一同に向け、ロアヌ・ヴァニタスは力強い声で言う。


「とにかく、相手も本気でこちらを潰しにかかっているようだ。あまり悠長に修行している暇はない」



 



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