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最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る。  作者: どまどま@チートコード操作 書籍化&コミカライズ
【三章】 魔物界編 ~最底辺のおっさん冒険者。ギルドを追放されるところで今までの努力が報われ、急に最強スキル《無条件勝利》を得る~
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おっさん、魔王と再会を果たす

 ★



 ――魔物界。

 ルイス・アルゼイドはごくりと唾を呑み込んだ。

 目の前では、魔王の卵がひとりでに浮揚ふようしている。


「…………!」


 アリシアやフラムも、一様に表情を固くした。

 ――前代魔王ロアヌ・ヴァニタス。

 かつてヒュース・ブラクネスと相対したとき、なんの脈絡もなく預けられた卵。なぜこんなものを託されたのか、前代魔王の意図は果たしてどこにあるのか……なにもわからないまま、今日という日を迎えた。


 そしていま――ルイスたちが魔物界に追いやられ、手詰まりとなった状況で、卵がひとりでに動きだし……


 パキパキパキ。

 軽快な破砕音とともに、卵の内部から闇の光が漏れてきた。


「こ、これは……!?」


 フラムが警戒心もあらわに目を細める。

 それだけに禍々しい雰囲気が伝わってきたのである。


 卵から発せられる邪悪な波動は、以前戦ったロアヌ・ヴァニタスの覇気とまったく同じ。フラムが警戒するのも当然といえた。


 言ってしまえば、これがラストチャンス。

 もし孵化うかした魔王が、理性もへったくれもない奴で、いきなり襲いかかってきたら――いまのルイスたちでは太刀打ちできない。そうなる前に破壊してしまうのが安全ではある。


 だが、ルイスもアリシアもフラムも、もはやそれだけの体力は残っていなかった。レスト・ネスレイアとの激闘により、もうほとんど身体が動かせない。


 パキパキ、と。


 果たして、卵は完全にその殻を破った。


 一際ひときわ強く闇の光が拡散し、そして収まった頃には、そこに見覚えのある姿が誕生していた。


 ――漆黒の影。

 藍色のマントを羽織り、片手には血塗られた剣。

 頭部では紅の王冠が輝いており、嫌でも《王》という立場を感じさせられる。


 てっきり赤ん坊の状態で生まれるものと思っていたが、いまルイスたちの目前に誕生した命は、記憶に新しい魔王の姿だ。背丈も以前と同じくらいある。


 そして、魔王から伝わってくる圧倒的な力も……


「…………」


 前代魔王は数秒だけキョロキョロとまわりを見渡すと、最後にルイスたちに焦点を定めた。


 ルイスは思わず太刀に手を添えた。なにが起こるかわからない以上、ただぼけっとしているのは得策ではない。


「……フ」

 そんなルイスの心境を知ってか知らずか、ロアヌ・ヴァニタスはふいに口元を吊り上げた。

「案ずるな。我は貴様らの味方。構えを解くがいい」


「な、なに……?」


 味方とは。

 やはり、生まれてすぐに見た者を《親》と認識したのだろうか……?


「違う」

 しかしロアヌ・ヴァニタスは、そんなルイスの考えをきっぱりと否定する。

「二千年前の約束を果たすまでだ。我が友――エルガー・クロノイスとのな」


「え……」


 思わず目をぱちぱちするルイス。

 エルガー・クロノイスといえば、あの勇者エルガーだと思われる。

 だが、友とはどういうことだ?  勇者と魔王が友? 


「……詳細は追々話すことになろう。いま、帝国がどのような状況になっているのか……わかっているか?」


「いや……」


 ルイスはとりあえずかぶりを振る。

 なにが起きているのか、誰が黒幕なのか――なにもわからないまま魔物界に転移されてしまったのだ。知りたいのはこちらのほうである。


「ならば見せてやろう。これが現在、《向こう》で起きていることだ」


 言うなり、ロアヌ・ヴァニタスは片手を天へ突き出す。魔王の身体が紅の霊気に包まれ、同時に、白いもやのようなものが現れた。


「す、すごい……」


 アリシアが驚嘆の声をあげる。

 その白い靄に、見覚えのある光景が映っていたからだ。


 そう、あれは首都ユーラス……


 ルイスたちが初めて訪れた、ユーラス共和国の街である。


「ま、まさかロアちゃん、これ、リアルタイムの状況を映してるの?」


「そうだ。アリシアも《古代魔法》を極めれば、これくらいのことはできるようになる」


「わ、私が……」


「しかしロアちゃんか……フフ……」


「え?」


「い、いやなんでもない。ともかく、この映像を見ろ」

 



 首都ユーラスに、かつての活気はなかった。

 いくつかの建造物は破壊され。

 街を歩いている者もほとんどいない。


 あちこちで硝煙しょうえんがあがっており、いまだのっぴきならない状況であることが伺える。


 ――そんななかで、まったく信じられない光景が広がっていた。


「おい、なにしてんだよイチ! 速く飯を持ってこんか!」


「は、はい……」


「あ? 返事が小さいぞ?」


「は、はいっ! 帝国人様!」


 命令された共和国人は、かつて国境門でルイスたちを馬鹿にした兵士たちだ。


 帝国人に命令され、まるで奴隷のように働かされている。その表情はまさに苦渋に満ちていた。


 それだけではない。


「動きがおせぇ! 死にてぇのか!」


「す、すみません! すみません!」


 彼らは理由もなく殴られ、罵倒され、ひどい虐待を受けていた。




 

「こ、これは……いったい……」


 目の前の出来事が信じられず、ルイスはぽかんと立ち尽くすことしかできなかった。





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