表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/194

それぞれの想いを胸に

 強い……

 知らず知らずのうちに、ルイスはごくりと唾を飲んでいた。


 レスト・ネスレイア。


 たしかに奴は《Sランク冒険者》という器に収まるような人物ではない。


 強すぎるのだ。

 いままで出会ってきた、どんな敵よりも。


 もしかすれば、前代魔王ロアヌ・ヴァニタスすらをも凌駕するかもしれない。


 すくなくとも、ルイスがイメージするSランク冒険者よりは格段に強い。黒装束のなかにはたぶんSランク冒険者も数人交じっているだろうが、彼らがまったく適わなかった古代魔獣を、レストはたった一撃で打ち倒したのだ。その実力は尋常ではない。


 そして――彼をサポートする、Sランク冒険者のミューミ・セイラーンも侮れない。彼女は古代魔法こそ扱えないものの、魔導具をうまく使いこなしている。その影響か、彼女の魔法はアリシアにも匹敵するほど強力だ。


 この二人、思ったより厄介だ……


「信じられん……あのブラッドネス・ドラゴンを、たった一撃で……」


 ヒュース・ブラクネスがくぐもった声で言った。警戒心もあらわにレストを見やっている。


 他の神聖共和国党しんせいきょうわこくとうの面々も、さすがに怖じ気づいてしまったようだ。そりゃあそうだ。自分たちの切り札が呆気なく倒されたのだから。


「ヒュース。また、あいつを……ロアヌ・ヴァニタスを召喚することはできねえのか」


 ルイスの問いかけに、ヒュースはかぶりを振る。


「さすがに無理だな……。魔王クラスは格が違う。準備するのにかなり時間がかかる」


「そうか……」


「関係ありませんよ。私たちが……戦えばいいんです」


 そう言ったのは、相棒のアリシア・カーフェイだった。


 どれだけの難敵が現れたとしても、彼女の態度は変わらない。かつてロアヌ・ヴァニタスと対峙したときと同じように、凛乎りんこたる瞳を燃やし、ルイスの隣に並ぶ。


「私たちならいけるはずです……だって、あの前代魔王だって倒せたじゃないですか」


「ああ……そうだな……」


 ルイスもまったく同様の考えを抱いていた。

 いかにレストが強くとも、ここで怖じ気づくわけにはいかない。大事な人々を守れずして、なんのための力か。なんとための《無条件勝利》か。


「あ、そうだよ……!」


 神聖共和国党しんせいきょうわこくとうの党員が、ふいに呟きを発した。


「あの二人は、かつて前代魔王を倒したんだ……! 俺、見てたぞ……!」


「そうだ、ルイスたちがいるぞ!」

「まだ戦いは終わってない!」


 味方の軍勢にも士気が戻ってきたようだ。帝国の冒険者、および神聖共和国党しんせいきょうわこくとうの党員に、再び明るさがみなぎっていく。


「はは……人生、なにがあるかわかったもんじゃないなぁ」

 言いながら、ヒュースが控えめに笑った。

「あのときは恐ろしく見えたおまえたちの背中が……いまは頼もしく見えるよ。そうだな……おまえたちは、あの前代魔王をも倒したんだ。俺たちが長い年月をかけて召喚させた、あの化け物を……」


「おいおい、私は蚊帳かやの外かよ」


 不満げに唇を尖らせ、共和国のSランク冒険者――フラム・アルベーヌがルイスの隣に並んだ。


「レストたちには及ばないかもしれないが、私だってSランク冒険者だ。意地を見せてやるよ」


「はっ……助かるよ」


 ロアヌ・ヴァニタスとの戦いでは、MPの枯渇がすなわち勝敗を決していた。あっという間に体力を失うルイスを、アリシアが回復させる――そんな戦法でしか、前代魔王には通用しなかった。


 けれど、いまは違う。

 フラムを始めとする、大勢の仲間がいる。


 絶対に、負けられない――


「はは、盛り上がってきたねぇ。いよいよ正念場ってやつかよ」


 レスト・ネスレイアは瞳をキラキラさせ、太刀を構えた。その視線はまっすぐルイスに据えられている。相変わらず、《バトル》とやらにワクワクしているようだ。


「ちょっとレスト、無茶しないでよ? 楽しくなると後先考えなくなるクセ、直ってないんだから」


 ミューミ・セイラーンが心配そうにレストを覗き込む。


「わかってるってさ。細けぇことはいいんだよ。俺は《バトル》が楽しめりゃそれでいい」


「レスト……」

 そこで一瞬だけミューミは切なそうに顔を伏せたが、数秒後には毅然とした表情をルイスたちに向けた。

「絶対に勝って帰るよ。絶対だからね!!」



お読みくださいましてありがとうございました……!!


ブックマーク、評価、レビューや感想などいただけると、とっても励みになります……(ノシ 'ω')ノシ バンバン


ぜひすこしでも心が動いたらお願い致します。


評価、レビューのページは、このページの下部を探していただければ見つかります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
画像のクリックで作品紹介ページへ飛べます。 さらに熱く、感動できるような作品にブラッシュアップしておりますので、ぜひお求めくださいませ! 必ず損はさせません! i000000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ