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束の間の平和、そして……

 静寂が訪れた。


 さっきまで狂乱に陥っていた男たちは、一瞬にして意識を失った。ルイスの《心眼一刀流》によって、なすすべもなく崩れ落ちていったのである。


 仮に目が覚めたとしても、フラムに足を傷つけられているため、動き出すことは困難だろう。


 とりあえずは、一件落着ってとこか……


 他の地域でも同じような事件が多発しているようだし、安心できるとは言い難いが、この街は救うことができたと言っていいだろう。


 そう思いながら、ルイスは太刀を収納する。もう不穏な気配もないので、《無条件勝利》も解除した。


「その……お二人とも……えっと、ありがとうございます……」


 言われて振り返る。

 男たちに乱暴を振るわれていた娘が、ぺこりと頭を下げているところだった。


「おう。そりゃいいんだが……そのぉ……」


 ルイスは顔に手をあてがい、極力、彼女を見ないようにする。


 この娘が悪いわけではないが、ずいぶんと扇情的な格好をしているのだ。大事な部分は手で隠してくれているものの、どこに視線を置いたらいいのか、迷ってしまう。


「なあ、ルイス」

 フラムが彼の隣に並んで言う。

「あんたも……この子のようにボインのほうがいいのか?」


「は?」


「それとも私のような体型でも大丈夫なのか?」


「なにを言ってる……。頼むから辞めてくれ……」


 事態に収集がつかなくなる。


「と、とりあえず、ここは旅館だし、替えの服くらいどっかにあるだろ。探してくるから、おまえたちはここで待っててくれ」


「あ、逃げるな」


 そそくさと退室するルイスだった。


 ★


 モンネ街に束の間の平和が訪れた。

 狼藉を働いた冒険者たちは、街の牢屋に収容された。

 この街にも一応は用心棒がいたようだが、オルスに呆気なく斬り伏せられてしまったようだ。現在はアリシアに回復され、奴らの警備に当たっている。


「いや。すまねえ! 助かったよ!」


 さきほどの大男――ギロンが大袈裟に頭を下げてきた。


 彼は以外にもレストランを経営しているようで、現在、ルイスたちはそちらにお邪魔している。いまはお客がいないが、普段は賑わっているのだろう、かなり広いレストランだ。


「いま、とびきりの料理をつくってるところでな。せめてもの礼だ。待っててくれよ!」


 白いコックコートを着たギロンはにっかりと歯を覗かせると、そのまま厨房へと消えていった。なんともバイタリティ旺盛なおっさんだ。


 とはいえ、こちらも助かるといえば助かる。ルイスは《無条件勝利》を長期間使用したし、アリシアもかなりMPを消費しただろう。ここはすこしでも英気を養っておきたいところだ。


「なあ、ルイス」

 そんな思索に耽っていると、ふいにフラムは話を切り出した。

「やっぱり、アリシアのも大きいじゃないか」


「へ!? な、なんの話ですか?」


 アリシアも突然のことでびっくりしたようだ。


「おまえはもう辞めろ……」


 おっさんを休ませてくれ。


「大事な話だぞ。ルイスがボイン好きかどうか。それによって今後の身の振り方が変わってくる」


「あっ」

 なんの話題か察したらしいアリシアは、一瞬だけ目をぱちくりさせると、フフフと不敵に笑った。

「それについては立証済みですよ。ルイスさんは大きいほうが好きです」


「な、なんだと!?」


「ふふ。残念でしたね」


 なぜだか不敵な笑みを浮かべるアリシア。


「こらアリシア! ふざけるな! 決闘だ!」


「無理ですよぉ。だってMPないですもん」


「じゃあ私の不戦勝だ! 私の勝ち!」


「おまえらうるせえよ!」


 おっさんを少しは休ませてくれ。





 それからルイスたちは大変に美味な料理をご馳走になった。


 さすがは港町で、メインは魚料理だった。

 ふんわりと揚げられた白身魚に、濃厚なソースが添えられている。さっぱりした魚と相俟って、このソースが素晴らしい存在感を醸し出していた。料理を取る手が止まらない。


 あれだけやかましかったフラムも、食事中はなにも喋らなかった。口調こそ強めだが、こういうところはやっぱり子どもじみている。それを言ったら怒られるが。


「ふう。ご馳走様でした!」


 アリシアが両手の前で手を合わせる。ルイスとフラムも完食し、同じように手を合わせた。


 しばらく食後の余韻に浸っていると、フライパンを持ったギロンが話しかけてきた。


「どうよ。堪能してくれたか?」


「ああ。美味かったぜ、おっさん」


 と同じく笑ってみせるルイス。


「はっ。そりゃどうも。帝国人の口に合うかどうか心配しててな」


 そういえば、ギロンはルイスたちが帝国出身だとわかってて料理を振る舞ってくれたわけか。非常にありがたいことだ。


 改めて感謝の意を述べると、ギロンは「よ、よせやい」と言った。


「あんたらは家族の恩人だからな。これくらいは当然さ」

 照れくさそうに後頭部を掻くギロンだったが、しばらくして、ふいに表情を引き締める。

「帝国っていやなぁ……。ヴァイゼ大統領が妙な吹聴してるみてぇだぜ」


「え?」


「《この一連の事件はテイコーの仕業》だとかなんとか……帝国に責任を押しつけるつもりのようだな」


「な、なんだと……?」


「でも、違うんだろ? もし本当にそうだったら、あんたらが助けてくれるわけないよな?」


「ああ。違う。そりゃ大統領のホラだ」


「だよなぁ……」


 そう。

 モンネ街は救うことができたが、この事件の抜本的な解決には至っていない。


 すなわち――局所的な人々の錯乱。

 あの新人受付嬢によれば、共和国のあちこちで同様の事件が起きているという。これもまた、ヴァイゼ大統領の目論見なのだろうか。


 自国をここまで傷つけて、いったいなんになる……? 帝国への反感感情を高めるのが目的か……?


 そのとき、頬杖をついたフラムが、ぽつりと呟いた。


「うーん。こういうとき、ギルドマスターがいれば頼りになるんだけどなぁ……」


「ギ、ギルドマスター?」


「ああ。ギルドマスターのネスレイアさん・・・・・・・は、人の意識を操る術が得意でな。国の大臣もやってるし、この一件についても、なにかわかるかもしれないんだが……」


「そうなのか……ギルドマスターが……」


 ん?

 ちょっと待て。

 フラムはいまなんと言った。

 ネスレイアって、どこかで……


 その瞬間、ルイスはある予感に打たれた。


「フラム。そのギルドマスターの名を……もう一度、教えてくれないか」


「ん? さっきも言ったろ。ネスレイア……レスト・ネスレイアさんだよ。それがどうした?」

 

 

 

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