おっさん、頼られる
「冒険者たちが、来ない――?」
翌日。
ギルドに出向したルイスたちは、いきなり衝撃の事実を告げられた。
「ええ……」
困り顔で頷くのは、例の新人受付嬢だ。
「反対に、依頼だけはいつもよりどんどん増えてきて……ほとほと困ってるんです……。ルイスさんたちが来てくれて、正直助かりました……」
「おいおい、誰も来ねェってどういう……」
心底から呆れかえるルイス。
時刻は朝の十時。
それほど早い時間帯でもないのに、誰も出勤していないとはどういうことか。
共和国より規模の低い帝国のギルドでさえ、十時にもなれば冒険者らで賑わっていたはずだ。それが、この時間で誰もいないとは……
「なあフラム。共和国のギルドじゃよくあることなのか?」
会話を振られたSランク冒険者も渋い顔だ。
「……んな訳ないじゃんか。こんなこと初めてだよ」
「そうだよなぁ……」
後頭部をぼりぼりと掻くルイス。
フラムの家に泊めてもらい、リフレッシュした気持ちでギルドに来たというのに――その結果がこれだ。
いったいなにが起きているのか。
「そういえば……ルイスさん」
アリシアが自信なさそうな声で言う。
「ちょっと不思議だったんですけど……街の人通り、昨日より少なくなかったですか?」
「ん? ああ……どうだったかな」
「いや、アリシアの言う通りだ。今日はいつもより人通りが少なかった。しかもかなり、な」
「やっぱりそうですよね……」
ギルドに続いて、町中でも多くの人が姿を消している。これはいったいどういうことだ……?
――計画に支障がない限り、君たちに直接手を下すつもりはない。せいぜい、私の手の平で踊り続けることだ――
ヴァイゼ大統領からの伝言が、ルイスの脳裏によぎった。
昨日の今日でこれだ。どうしても嫌な予感がするのは気のせいだろうか。
アリシアとフラムも同様のことを考えているのだろう。揃いも揃って複雑な顔をしている。
そういえば、あのAランクの冒険者――オルスも見かけない。そしてまた、ギルドマスターも例のごとく姿が見えない。
いったいどうなってんだ……? みんなしてサボっているわけでもあるまいに……
だが、これについては考え込んでも仕方ないだろう。現時点では情報量があまりに少ないので、まともに推理することもできない。
こういうときは、慌てず騒がず、いまできることを進めていくのが一番である。
そう思ったルイスは、掲示板に視線を戻そうとしたのだが。
「あ。ちょ、ちょっと待ってください」
そんな彼を、新人の受付嬢が呼び止めた。
「すみませんが……今日はこちらの依頼をお願いしてもよろしいでしょうか? 緊急案件ですので……」
言いながら、一枚の紙を差し出してくる。客からの依頼書だ。
「どれどれ……」
そうして依頼に目を通したとき、ルイスはまたしてもぎょっとした。
《 緊急。
モンネ街にて、錯乱した冒険者が、人質を取ったうえで立てこもりを行っている。
犯行人数は五~七人。
若い女性に暴行を加えるのが目的らしく、残りの冒険者が見張る形で立てこもっている。
犯人らは逃走ルートの確保を要求しているが、こんなものは断じて容認できない。直ちに冒険者の派遣を要請する》
「な、なんだよこれ……!」
もう言葉も出なかった。
色々と突っ込み所がありすぎて、乾いた笑みさえ浮かんでくる。
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