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神聖共和国党よりもさらに危険な連中

 大統領。

 その言葉を、ルイスは頭のなかで何度も反芻はんすうした。


 ユーラス共和国を治める実質的なリーダー、ヴァイゼ・クローディア。


 元々は金も地位も権力もない、どこにでもいる平民の子だったという。

 しかも三十代前半までは引きこもりも同然の生活を送ってきたようだ。家族からはかなり煙たがられてきたらしい。


 それが四十歳を迎えて急に覚醒し……こうして、一国の大統領にまで昇りつめた凄腕の指導者。


 相当に油断ならない人物であることは想像できる。


 かの皇帝ソロモア・エル・アウセレーゼがかなり警戒していたことからも、それは容易に推察できるだろう。


 そんな大統領が――俺に伝言だと?


 訳のわからない状況であったが、ここで取り乱しては相手の思うつぼ。あくまで平静に、ルイスはふんと鼻を鳴らした。


「まさか大統領と関わりを持ってるとはな……それは信用に足る情報なのか」


「信じないならばそれで結構。どう動くかはおまえたちにかかっているのだからな」


「……ふむ」


 ルイスは唸り声を発し、無言でリーダー格と向かい合う。

 さっきから信じられない出来事の連続だ。正直いって理解が追いつかないが、ここで怯んではなるまい。


「では聞かせてもらおうか。その伝言とやらを」


「ふっ。そう来なくてはな」


 リーダー格は気取った仕草で黒マントを振り払うと、よく響く声で言った。


「《君たちがどう動き、なにをしようとしているか――それはこちらも仔細しさいに把握している。計画に支障がない限り、君たちに直接手を下すつもりはない。せいぜい、私の手の平で踊り続けることだ》――以上」


「……ずいぶんと言ってくれますねぇ……」

 アリシアがぴくぴくと青筋を立てている。

「そもそも、あなたたちはなにを企んでいるんです? 計画とはいったいなんですか?」


「ふふ。敵にそんなことを教えるわけがないだろう……と、言いたいところだが」

 リーダー格はそこでおどけたように肩を竦めた。

「正直、大統領のお考えは私にもついていけなくてね。言いたくても言えぬのだよ」


「…………」


 押し黙るアリシアに代わって、今度はルイスが口を開いた。


「こっちの皇帝陛下……ソロモア様も賢明なお方だ。てめぇらの企みを黙って見過ごすと思うなよ?」


「クク、わかっておるよ。ヴァイゼ大統領もソロモア皇帝も、相当に頭の切れる人物。……今後、情勢はどう動くのだろうな」


「…………」


「それとフラム・アルベーヌ。おまえにも私から伝えたいことがある」


 唐突に話題を振られ、フラムは目を瞬かせる。


「は? 私?」


「計画の変更により、おまえを味方に引き込むのは中止。今後、私たちはおまえを訪問しない。安心して過ごすがよい」


「は……? わ、わけわかんないんだけど……!?」


「二度は言わぬ。そこまで深く知る必要はない」


「ずいぶんと一方的じゃないかよ……」


「ちょ、ちょっと待て!!」

 ふとひらめきが脳裏をよぎり、ルイスは目を剥いた。

「おまえは大統領と関与してるんだろ!? さっきの襲撃は大統領の命令だったってのか!?」


「……クク」

 リーダー格は意味深に笑うと、片腕を天へ突き出した。白銀のオーラが奴を囲む。転移術を使うつもりのようだ。

「せいぜい踊りまわるがよい。おまえたちの《活躍》、遠き地から鑑賞しているぞ……!」


 その言葉を最後に、リーダー格はいずこへと姿を消した。



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