おっさんたち、古代魔獣を相手に楽勝である
「すげえ……」
「あの化けモンを、たった数分で……」
ルイスたちの戦いっぷりを、数人の冒険者たちが呆気に取られたように眺めている。
彼らも彼らで仕事をきちんとこなしてくれているようだ。さきほどまで村を蹂躙していた神聖共和国党の党員が、見る影もなく減ってきている。制圧は時間の問題だろう。
「よ。お疲れさん」
「お疲れ様でした」
アリシアとフラムが口々に労いの言葉をかけてくる。まだ事件そのものが収束したわけではないが、あとは他の冒険者に任せておけば大丈夫だろう。それくらいに圧倒的な戦況だった。
村民の避難誘導も済んでいるようだ。
警戒だけは怠らず、ルイスも二人に労いの言葉をかける。
「二人ともいい戦いぶりだったぞ。あの古代魔獣をものの数分で倒せるとはな」
「あはは。たしかに、いままでの戦いとは段違いでしたね」
嬉しそうに後頭部をさするアリシア。
ブラッドネス・ドラゴンを始めとする古代魔獣とは、それぞれ状況は違えどかなり苦戦を強いられてきた。
それがなんの問題もなく討伐できたのだから驚きだ。これもフラム・アルベーヌ――Sランク冒険者が協力してくれたおかげだろう。
「あんたら、いままでこんな化け物と戦ってきたのかよ? いったいどんなヤベェ奴を敵にまわしてんだ」
「……さあな。そりゃ俺が知りたいくらいだよ」
「ふん。こりゃあ、改めて後で話し合いを――」
「や、やめろォォォォォオ!!」
ふいに叫び声が響きわたり、ルイスたちの会話は中断された。
視線をそちらに向けると、どうやら最後の神聖共和国党の絶叫だったようだ。何人もの冒険者に囲まれ、真っ青な表情で尻餅を着いている。
「お、おまえらには共和国人としての誇りはないのか! い、生きていて恥ずかしくないのかよ!」
「ふん……おまえたちこそ、完全に頭がいかれてしまったようだな。まさか自国で暴れ出すとは」
「お、おまえたちは騙されている! あのユーラスの大統領にッ!」
「はぁ? 大統領?」
「そうだ! だって、俺たちは――カハッ!!」
突然――それはあまりに突然だった。
どこからともなく可視放射が放たれ。
それは的確に党員の胸部を貫き。
神聖共和国党の党員は、呆気なく地面にひれ伏せた。白目を剥いたまま、動き出す気配もない。死に際に吐いた血液だけが、空しく地面を赤く染めている。
「…………!?」
「な、なんだ……!?」
周囲を囲っていた冒険者たちが、口々に喚き声を発する。いまの攻撃は彼らが行ったわけではないようだ。
では、いったい誰が……?
そこまで考えて、ルイスがぼんやりと可視放射の発生地点を見やったとき、思わず目を見開いた。
――まさか、あいつは……!
「ふう。やれやれ。困ったものだな。簡単に口を割るとは」
そいつ――黒装束をまとった謎の男がそこにいた。顔面を覆っている暗色の兜といい、さきほど襲ってきた集団と同じ身なりをしている。
「嘘……なんで、あいつがここに……!?」
フラムもさすがに動揺してしまっっているようだ。
無理もない。
連日襲ってきた謎の集団が、まさか神聖共和国党を始末しにくるとは。いったい何者だというのか……
「さて。そろそろ終いにしようか。このようなことに時間を割きたくはない」
黒装束はそう呟くなり、パチンと指を鳴らした。
瞬間――どこからともなく、同じような格好をした黒装束の連中が現れ、あちこちに転がる神聖共和国党のメンバーらを抱えていく。なかには死亡した党員もいるだろうが、まとめて持っていく算段のようだ。
「冒険者諸君。後始末は我らが受け持とう。もう帰るがよい」
新作を公開しております。
ぜひお越しくださいませ!
リンクは下部にございます。




