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おっさん、最強チームを夢想する

 Sランク冒険者、フラム・アルべーヌ。


 その圧倒的なまでのスピードを、ルイスは改めて目の当たりにすることとなった。


「やあああああああっ!」


 裂帛れっぱくの一声とともに地を蹴るフラム。あの黒装束と戦っているときも思ったが、やはり身のこなしが尋常ではない。スピードだけなら、かの前代魔王ロアヌ・ヴァニタスをはるかに凌駕りょうがすると思われる。


 アラーネ・フォーリアとの距離はそこそこあったはずだが、彼女はそれをあっという間に詰めた。


「ギィ……!?」


 アラーネ・フォーリアは驚いたような声を発したが、すぐに立ち直り、攻撃の体勢に入る。この切り替えの早さはさすが古代魔獣といえた。


「ギィエエエエエエイ!!」


 奇妙な鳴き声を響かせながら、一本の足をフラムに向けて薙ぎ払う。足の先端部分はすべて鎌状かまじょうになっているらしく、あれに斬られたら最期、いかにSランク冒険者といえども無事では済むまい。


「よっさ」


 しかしフラムは動じることなく、次の行動に打って出た。まるで攻撃の軌道を読んでましたとばかりに、鎌の上に一瞬だけ着地する。


「これでも喰らいな!」


 再び軽く跳躍し、懐のポーチから何かボールを取り出すと、それをアラーネ・フォーリアに向けて放り投げた。


 瞬間。


 ボフン!!


 軽快な音を立て、弾けたボールから煙がわんさか溢れ出てきた。それほど広範囲には広がらないようで、アラーネ・フォーリアの周囲にだけ色の濃い煙が広がっている。これで奴はまともな視界を確保できなくなったわけだ。


 フラムはぴょこんと地面に着地すると、短剣を順手に持ち替え、再び構えの姿勢を取った。そして小さく深呼吸すると、なんと煙のなかに突っ込んでいく。


「…………」


 ルイスは固唾を呑んでSランク冒険者の戦い方を見守る。


 ――あんな濃度の煙が流れてしまったら、フラムの視界も不安定になるのでは……?


 ルイスのそんな予測は杞憂に終わった。アラーネ・フォーリアの痛々しい悲鳴だけが、妙に大きく届いてくるからだ。フラムに一方的に蹂躙じゅうりんされているだろうことは、遠目でも容易に推察できた。


「たぶん、スキルを使ってますね……」


 背後のアリシアがそう呟く。


「ああ。そうだろうな……」


 ルイスの知る限りだと、たしか《視界遮断耐性》というスキルがあったはずだ。夜間や濃霧のうむなどで、視界が充分に確保できない環境でも、このスキルさえあれば問題なく先を見通すことができる。まさにフラムのような俊敏な戦士には打ってつけのスキルというわけだ。


 あのアルトリアでさえ苦戦していた古代魔獣を、あのように一方的に攻撃する手腕はやはり尋常ではない。本人は自分の実力不足を嘆いていたが、やはりSランクの名は伊達ではないということか。


 やがて時間が経過していくにつれ、もうもうと立ちこめていた煙も薄れていく。完全に煙が晴れたときにはもう、体毛の各所が切り刻まれたアラーネ・フォーリアがいた。一方でフラムは涼しげな表情で地面にすとんと降りる。


 思った通り、フラムは火力にやや劣る面があるようだ。アラーネ・フォーリアはそこそこ傷を負ってはいるが、まだまだ元気そうである。


 ――攻めるなら、いましかない。


 ルイスは《無条件勝利》を発動すると、同じく地を蹴った。アラーネ・フォーリアは怨敵――フラムに完全に意識を取られている。いまが好機だ。


 だが、相手は曲がりなりにも古代魔獣。これまでの強敵と同様、それなりの知性を持ち合わせているようだ。こちらの戦略にいち早く気づいたらしい紅の瞳が、ルイスを確かに捉える。


 ――だが。


 そんな古代魔獣の頭上に、いくつもの巨大な光の剣が浮かび上がった。薄く発光しているそれは、見間違えようもない、アリシアの古代魔法――


「な……あんな魔法、見たことないぞ!?」


 フラムが大声をあげた、そのとき。

 それら光の剣が、容赦なくアラーネ・フォーリアへの突き刺さっていく。ゴオオォン! というすさまじい轟音が響きわたり、戦闘中の他の冒険者らが何事かとこちらを見やっている。


「ギャアアアアア!」


 もうアラーネ・フォーリアは隙だらけもいいところだ。魔法剣の餌食えじきとなり、全身をぴくぴくと震わせている。これでもまだ生きているのだからやはりタフである。


 心眼一刀流しんげんいっとうりゅう、極・疾風。


 ルイスはそんな古代魔獣へと、容赦なくトドメの一撃を浴びせてみせた。



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