おっさん、決意をかます。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
慌てたようすでフラムが近寄ってきた。
「ど……どういうことだ……。神聖共和国党がテロだと……!?」
彼女の表情にはさきほどまでの余裕はない。神聖共和国党……そのワードを聞いただけで、かなり狼狽しているのが伺える。
男はルイスやフラムを見て目を剥いたものの、すぐに気を取り直して言った。
「……俺も直接見たわけじゃないが、現状の大統領に対する不満らしいな。最期にできるだけ大勢を巻き込んで逝こうって魂胆だろう」
「ふ、不満……」
フラムがよろよろとよろめく。そんな彼女の身体を、ルイスはしっかりと受け止めた。
「しっかりしろ。おまえが取り乱してどうする」
「あ、ああ……。すまない……」
力なく呟くフラム。
かなり辛そうだ。
身内がテロを起こしたかもしれない……そう考えると無理もないか。
――しかし、大統領への不満とはな。
愛国心の塊だった連中が、いったいどんな心境の変化があったのだろう。いくら過激な組織とはいえ、この行動にはなにかしらの理由付けがあると思われる。
「よし、緊急召集だ! いまギルドにいるみんなは、俺の話を聞いてくれ!」
オルスが両手を広げ、高らかに声を張る。
さっきまであんなにネチネチ嫌味を言ってきたのに、なんという仮面の使いこなし方だ。
「現在、ファイ村が危機的状況だ! しかも現場には古代魔獣やテロリストの残党までいる! 非常に危険な依頼だ! それでも参加したい奴は名乗り出てほしい! 低ランクの冒険者でも、避難誘導など、大事な任務はいくらでもあるぞ!」
一瞬だけ、場が静まり返り。
やがて、さわさわさわ……とどよめきが発せられると。
「俺が行こう!」
「俺も!」
「僕も援護します!!」
などといった威勢のいい声が瞬く間に湧き始めた。なかには高ランクの冒険者もいるようで、オルスは満足げに頷く。
「ありがとう! Cランク以上の冒険者には馬車を用意する! すまないが、実力者が優先的に現場に向かってほしい! では――幸運を!!」
おお! という掛け声が響きわたり、高ランクと見られる冒険者らが次々に外に出ていく。みな一様に気合いの込められた表情だ。さすがは巨大な冒険者ギルドなだけある。
それだけではない。
この一体感や結束力……はっきり言って、帝国とは比べ物にならない。ギルドマスターのライアンにはあそこまでのカリスマ性はないし、冒険者もあんなに統率された行動は取れない。
「まあ……こっちのギルドは歴史が長いからな。帝国と違うところがあるのは仕方ないさ」
そんなルイスの心境を見透かしたかのように、フラムが言った。
「そんなことより……どうする? 私たちは……」
「はっ。決まってんだろ、そんなモン」
ルイスはごつんと両拳をぶつけた。
「俺たちもいくぞ。奴らとの戦いは俺たちが一番よくわかってるだろうさ」
「はい……私も賛成です!」
アリシアも気合い充分の顔で頷いた、そのとき。
「おいおい、なにを言ってる?」
ふいに、オルスがしかめ面で言った。
「テイコーやテロリストの身内に来られたら戦士たちに混乱を来す。来るのは構わんが、おまえたちは避難誘導でもしてろ」
「…………」
避難誘導も立派な仕事だし、どの道、どんな役割でも多少は混乱を招きそうな気はするが……たぶんなにを言っても聞かないので黙っておく。
「わかった。馬車は……」
「出せるわけねえだろ。Cランク以上の冒険者用で手一杯だ」
「ぐ……」
フラムが悔しそうに歯噛みする。
彼女はSランク扱いしない、ということか。
納得はしかねるが、こんなところで論争している場合ではない。ルイスはフラムの頭にぽんと手を乗せると、慎み深くギルドを後にした。
お読みくださいましてありがとうございました……!!
ブックマーク、評価、レビューや感想などいただけると、とっても励みになります……(ノシ 'ω')ノシ バンバン
ぜひすこしでも心が動いたらお願い致します。
評価、レビューのページは、このページの下部を探していただければ見つかります。