4.風の御子のプライド
水の御子のメールさんの隣に、風の御子のシャールさんが。
その向かいに私が座り、隣にはヴォルカン王子がソファに腰を下ろした。
こうして四人の御子が顔を合わせるのは、この世に御子という存在が誕生した遥か昔以来の出来事だ。その四人の中に私が含まれているなんて、まるで実感が無い。
けれど、私は炎の大精霊フランマに認めてもらえた。
だから私は、類い稀な治癒術師としての才能を発揮する事が出来るのだろう。こんな自分を大事に育ててくれた、生みの親と育ての親の両親達。そして、私の先生と出会えた事。
いくつもの出会いの奇跡があったからこそ、私は今ここに居る。
そんな出会いをくれたこの世界と、ここに住まう人々の未来を守る為──私達は、魔女ジャルジーに立ち向かうのだ。
「バザルト、出て来てくれ」
ヴォルカン王子の呼び掛けに応え、濃密な地の魔力を纏う大柄の男性が姿を現した。
クヴァール殿下の生誕パーティーの日の夜、黒騎士との闘いで手助けをして下さった大地の大精霊、バザルト様。
岩石のような巨体と、その身体に見合った岩の大剣を操るお方だ。
「このオッサンがオレと契約した大精霊、バザルトだ。やれる事っつったら、岩のドームで敵の攻撃や瘴気から身を護る事と……後は普通にパワーでゴリ押す感じだな」
「ほう……全ての御子が揃ったか。此度こそ、あの忌まわしき魔女との闘いに、終止符を打てると良いのだが……」
すると、エルフ騎士団長のシャールさんが口を開いた。
「確かヴォルカン殿下がお得意なのは、太刀と弓の扱いでしたね。中々の腕前と聞き及んでおります」
「まあ、オレにはそれぐらいしか出来ねえからな。魔法の扱いに関しちゃ、多分この中で最低レベルだろう。その分、接近戦にも遠距離戦にも対応出来るようにはしてんだよ」
「本当にワタシ以下なのか? 魔法は相当のド下手クソでもなければ、誰でも使えるものじゃなかったのか……?」
メールさんの口から飛び出した素朴な疑問に、王子の眉間に皺が寄る。
すかさずシャールさんが、
「メール殿、ヴォルカン殿下に対しその発言は見過ごせません。いくら王家の人間といえど、人には向き不向きというものがあるのです。殿下は己の魔法の才の無さを自覚し、それをカバーする為に武術を極めていらっしゃいます。そうした努力を重ねている方に対して、今の貴女の言葉は無遠慮にも程がありますよ」
と、まるでフォローになっていないフォローを入れた。
ああ、私の隣でヴォルカン王子が凄い怒ってる……!
グッと握り締めた彼の拳が、ぷるぷると震えている。きっと、この二人に怒鳴り付けても無駄だと悟っているのだろう。
私の近くに控えているグラースさんも、何とも言えない複雑そうな表情を浮かべていた。
ヴォルカン殿下は、目の前でナチュラルに失言を連発される怒りのやり場が無い。曲がりなりにも、彼らはそれぞれの国を代表してやって来た御子達だ。
時間を無駄に出来ない今、必死に怒りを止めようと頑張っているのだろう。
「そうか……向き不向き、か。言われてみれば、ワタシは運動神経がまるで無いからな。その点に関しては、ワタシもこの中ではビリッケツかもしれない……。すまなかった、王子」
そう言って、メールさんは素直に頭を下げた。
「…………おう」
かなりの間を置いて、王子は彼女の謝罪を受け入れた。
きっと彼は、心の中で物凄い葛藤をしていたのだろう。流石はクヴァール殿下のご友人。心が広い。
少し空気が悪くなってしまったので、気持ちを切り替える為にも、私から新たな話題を提供するのが良いだろう。
そう思い至った私は、首に下げた赤いネックレスを握りながら、フランマに呼び掛けた。
私の横、バザルト様と対を成す位置に姿を現したフランマは、私を見下ろして弾けるような笑顔を見せる。
炎のように揺れる真紅の髪に、彼女の豊満な身体を引き立てる真っ赤なタイトドレス。私に向けられる信頼と友情の視線に、自然と励まされるのだ。
「元気そうだねぇ、フラム! おや、アンタは確かバザルトの……スフィーダの王子じゃないかい?」
「うん。今、私達はスフィーダ王国に来ているの。ここに居るのは全員御子でね、彼らに貴女を紹介したくて呼んだのよ」
フランマはここに居る面々を一通り見回し、興味深そうに頷いた。
「ははぁーん。四属性の御子が勢揃いか。これはいよいよ盛り上がってきたじゃないか!」
「癒し手さんのフラム。キミの大精霊は何が出来るんだ?」
「ええと、フランマは浄化の炎が使えます。後は、姿を鳥に変えたりとか……」
「アタシとフラムは相性が良くてねぇ。互いの魔力が炎によく馴染むのさ。アタシは炎魔法の威力や安定性が増したし、フラムにはまだまだ力が眠っている。この先、もっと強力な治癒魔法が使えるようになるはずさ!」
フランマと相性が良い、というのは身をもって実感している。
私と契約して、彼女がブー・クロコディルの瘴気を浄化したあの時、私を通じてフランマが発動した浄化の炎の強大さ。
それぞれが炎の魔法に適した魔力を持つ者だった事が、互いを刺激しあっているのだろう。
しかし、フランマに鋭い指摘が飛んできた。案の定、その発言をしたのはシャールさんだった。
「その眠っている力とやらは、いつ目覚めるのです? 我々には、あまり多くの時間が残されておりません。スフィーダ火山の古代種しかり、いつ攻撃を仕掛けてくるかも分からぬ魔女も目覚めてしまいました」
彼の言葉は止まらない。
「フラム殿は騎士団の癒し手であるとのことでしたが、他に何か特技はおありですか? 魔法が堪能であるのなら、高度な攻撃魔法の一つや二つ……出来て当然ですよね?」
「そ、それは……」
言葉に詰まる私に、シャールさんは更に畳み掛けて来る。
「まさか、出来ないのですか? 魔女と闘う御子としての資格を持ちながら、魔女に抗う術を持たないのですか? ただ傷を癒すだけならば、そんなものポーションの一つで事足りますよ」
「ちょっとアンタ! あんまりナメた口きいてんじゃないよ!」
私を庇うように前に出たフランマが、右手に小さな炎の球を持ちながら、シャールさんを睨み付けた。
それと同時に、グラースさんも無言で彼に視線を向けている。
二人が私を大切に思ってくれているからこそ、彼の発言が許さなかったのだろう。
しかし、シャールさんが言っている事は間違いではない。私は本当に癒す事しか出来ないし、ヴォルカン王子のように武器を持って闘う力も無いからだ。
私は今にも攻撃をしてしまいそうなフランマを制し、静かに告げる。
「良いの、フランマ。シャールさんが言っている事は、全部本当の事だから」
「だ、だけどねぇ! いくらなんでも、言い方ってモンがあんだろうが‼︎」
「お願い。私達が争ったところで、得をするのは魔女なんだよ? 私が闘えないのは事実だもの。だから、もう……」
「……フラムがそう言うなら、今回は許してやるさ。だけど、次は無いからね」
「ありがとう、フランマ」
どうにか落ち着いてくれた彼女。
振り向くと、グラースさんはまだ納得しきっていないように見えた。
だけど、私がこの中で実力不足だというのは間違い無いもの。私はついこの前まで、町の治療院で働いていた、ごくごく普通の治癒術師でしかなかったんだから。
「それじゃあ、次はワタシが紹介するか。いでよー、ワタシの大精霊」
険悪な空気なんてなんのその。
メールさんが呼び出したのは、麗しい白髪の美女だった。
今にも胸が零れ落ちてしまいそうな危ういドレスは、水の大精霊に相応しい貝殻と珊瑚に彩られた海色に染め上げられている。
美女は爽やかな水飛沫を散らしながら、誰もがうっとりとしてしまいそうな甘い笑みを浮かべている。
「メール、わたくしをお呼びですか?」
「そうだ。ここに居るのは、ワタシ以外の御子達だ」
「あらあら……! そこに居るのは、もしかしてフランマかしら? それに、そちらのダンディーなお方はバザルトさまね! まあまあ、久し振りにお会い出来て嬉しいですわ!」
透き通った水色の目を細め、まるでおとぎ話の人魚姫のような彼女は、喜びを露わにして微笑んだ。
「ああ、久し振りだねぇプリュイ。残念だけど、あんまり再会を喜びあっている時間はないんだよ」
「あら、そうなんですの?」
「古の魔女が、封印から解き放たれたのだ。あの魔女の影響か、スフィーダ火山に古代種が現れ、猛威を奮っておる」
「魔女が……? それは一大事ですわね」
「プリュイ、キミの事をみんなに話してほしい。連携の為の情報共有、というやつだ」
プリュイと呼ばれた美女は、表情を引き締めて頷いた。
「御子のみなさま、わたくしは水の大精霊のプリュイと申します。癒しの水と浄化の雨を操り、みなさまのサポートをさせて頂ければと思います」
「ワタシはある程度の魔法は使えるぞ。さっきも言ったが、接近戦とかはダメダメだ。致命的な運動神経の無さだと、カウザの城では有名だ」
すると、シャールさんが小さく鼻で笑うのが分かった。
プリュイ様が癒しの水を使える、というのが彼が笑った理由だろう。
彼女が回復手段を持っているのなら、ただの人間である私の治癒魔法すら必要無い──そう思われたのかもしれない。
「次は自分ですね。さあ、おいでなさい」
シャールさんが呼び掛けると、心地良い風が室内に吹き渡った。
私達の前に現れたのは、春風を纏ったような可憐な少女──ソルシエール家のお屋敷で、指輪の記憶に残されていた、風の大精霊ウェントゥス様だった。
「わたしを呼んだわね、呼んだのね、シャール! 今日は一体どんなご用があるのかしら?」
「この顔触れに覚えはあるかい、ウェントゥス?」
シャールさんにそう問われ、風の少女は部屋に佇む人々に目を向ける。
次の瞬間、彼女は雲間から覗く太陽のように、明るい笑顔を浮かべた。
「あー! 大精霊のみんなだわ! プリュイにフランマ、それにバザルトおじさまだわ!」
少女の姿は、指輪で見た当時と何も変わらなかった。
魔女が封印されたあの時代から、大精霊達は同じ外見のまま生き続けているのだろう。
「お久し振りね、ウェントゥスちゃん。こうして顔を合わせるのは、もう何百年振りになるかしら?」
「うーん……思い出せないくらい昔だと思うわ! でもでも、どうしてみんなが集まっているのかしら? もしかして、みんな契約者を見付けられたのかしら?」
「ああ、そうさ。そこでだ、ウェントゥス。君の持つ素晴らしい力を、ここに居る他の御子達に教えてやってくれないか? この中で誰が一番優れた大精霊なのか、しっかりと伝えておかなくてはならないからね」
……それにしても、このイケメンエルフはどこまで嫌味ったらしい台詞を吐けるのだろうか。
白竜騎士団は、武勇と魔法に長けた選りすぐりのエルフだけで構成された、フェー・ボク王国随一のエリート集団だ。
そんなエリート達を統べる風の御子ともなれば、武器の扱いも魔力の操作も超一流のはず。だからこそ、他人は全て自分よりも劣る相手として、常に見下しているのではないだろうか。
そうでなければ、一国の王子──それも、同盟を結ぶ仲間に対して、あんなに失礼な物言いは出来ないはずだ。
顔は良いけど、その中身はかなりの難ありね。こうしてウェントゥス様に認められたのが不思議なくらいだわ……。
「分かったわ! わたしの事を話せば良いのよね? わたしはウェントゥスちゃん! 風を司る大精霊よ。昔はエルフの王様と一緒に居たの! わたしの風なら何でも切れるし、瘴気だって吹き飛ばせちゃうのよ!」
「ウェントゥスは攻撃も支援も出来る、とても優秀な大精霊です。自分自身も剣術、魔法の心得は充分にあります。ウェントゥスとの連携によって、攻守に長けた理想的な戦術を披露出来ますよ」
「魔女について、何か知っている事はあんのか?」
ヴォルカン王子の質問に、シャールさんは大きく首を縦に振った。
自信を持ったその表情から、彼がフェー・ボク独自の情報を握っている事がうかがえる。
「ええ、当然です。魔女ジャルジーは自らを大魔女などと名乗っていますが、所詮はただの魔術師に過ぎません。過去の魔女との大戦が行われた当時、彼女の魔法を封じる術を持っていたのが……我がフェー・ボク王国の祖である、初代の風の御子でした」
初代の風の御子──フェー・ボク初代国王、カミール。
彼は魔女との戦いの最中、エルフの叡智の結晶である国宝を用い、魔女の魔力を封じる事に成功したのだという。
「そんな便利なモンがあんなら、利用しない手はねえな」
「ですが、残念ながらこの国宝は、当時の激しい戦いの最中に消失したとされています」
「それじゃあ意味無いぞ。無くなったものに頼る事は出来ない」
メールさんの意見に、それでもシャールさんはその自信に満ち溢れた顔を崩さなかった。
「ええ。ですので、その国宝をもう一度作りました」
「国宝を作る……? そんな事が出来るのですか?」
「出来ますよ? 我らエルフ族は、歴史の浅い人間文明よりも魔法技術が発達しておりますから」
どうした事か、彼は私に対して、やけに当たりが強い。
別に、彼に嫌われているのは構わない。魔女の一件が解決すれば、きっともう二度と関わらないであろう人だ。
それに、私には騎士団の皆が──グラースさんが居る。わざわざ自分に嫌味ばかりを言ってくる相手に、無理に付き合ってあげる程のお人好しじゃないもの。
「我が国の国宝、気高いエルフ族の強力な魔力を極限まで凝縮した『森の瞳』という人工結晶体を用いれば、常人では決して発動出来ない強力な封印を施す事が可能です。まあ、これは一時的なものですから、その隙に御子達による封印魔法を行使しなくてはなりませんがね」
「ハハッ! つまりは、エルフが全力を注いだ時間稼ぎってワケだな」
「……簡単に言えば、殿下の仰る通りですね。ですが、森の瞳があったからこそ、太古の魔女封印が成功したと言っても過言ではありません」
ヴォルカン王子の言葉に、シャールさんが少しだけ固い笑顔で答えた。
ちらりと横の殿下に顔を向ければ、彼はまるで「どうだ、言ってやったぜ!」とでも言いたげな、スッキリとした悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
彼の笑顔を見て、私も思わず口元が緩んでしまう。
ヴォルカン王子も、シャールさんの言動に嫌気がさしていたのだろう。彼のお陰で、かなり気分がスカッとした。
その時だった。
誰かが部屋の扉をノックする音がして、王子が入室を許可する。
中へ入って来たのは、お城の兵士さんのようだった。
「ヴォルカン殿下。もう間も無く、明日に向けた作戦会議が開始されます。大会議室にて、陛下がお待ちしております」
「そうか、下がれ」
「はっ!」
私達がこうして話している間に、調印式が終わったのだろう。
すると、ヴォルカン王子は気怠そうにソファから立ち上がった。
「そろそろ時間らしい。今アンタらに話してもらった情報は、オレの口から各国に提供させてもらう。明日の夜には火山に向けて出発する予定だ。今のうちに部屋で休んでおけよ」
そう言い残して、彼は大会議室を目指して部屋を出て行った。
「じゃあ、ワタシはお言葉に甘えて休むとするか。プリュイも来るか?」
「ええ、お供させて頂きますわ」
「それじゃあな、癒し手さん。寝不足はお肌の大敵だと、よくプリュイが言っている。暑くて眠れなかったら、プリュイに冷たい水を出してもらうといいぞ」
「あ、ありがとうございます。お休みなさい、メールさん」
足早に去っていったメールさん達を見送ると、フランマが言う。
「……何かあったら、いつでもアタシを呼びな。王子も言ってたけど、今夜はゆっくり休むんだよ?」
「ええ、ありがとう。お休みなさい、フランマ」
そう言って私を抱き締めたフランマは、名残惜しそうに姿を消した。
続いて、シャールさんがソファから立ち上がる。
そのまま彼も部屋を出て行くのかと思いきや、シャールさんはテーブル越しに私を見下ろして、こんな事を言い出した。
「それでは自分も失礼させて頂きます。……癒す事しか能が無いのなら、貴女は大人しくここで待機していた方が良いのではありませんか?」
「……貴方という人はッ! それでも騎士道を重んじる者ですか⁉︎」
遂に我慢の限界だったのだろう。
グラースさんがこんなに声を荒らげるなんて……。
けれども、シャールさんは彼の怒りなどまるで気にしていないようだった。むしろ、彼と共に部屋で警護をしていた騎士達まで、私達に対して敵意をはらんだ目を向けて来る。
「何をそんなに怒鳴る必要があるのです? 自分は彼女の身を案じているのですよ?」
「貴方は何を……!」
「戦う術を持たずに戦場に立つ……。その危険さは、貴方もご存知のはずではありませんか? アイステーシスの氷の騎士殿」
シャールさんは余裕の笑みを張り付け、先程までと全く変わらぬ調子で話し続ける。
「癒し手ならば、患者が運ばれて来るまで、安全地帯で大人しくしているべきでしょう。そもそも、カウザの水の御子が使役する大精霊には、癒しの水があるではないですか! 大精霊の力と、人間の騎士団で癒し手をする女……どちらが優れているかは、比べるまでもありません」
「貴様……‼︎」
「やめてっ、グラースさん!」
剣を引き抜きそうになった彼を、私は彼に抱き着くようにして止めた。
ここで私達が争って、せっかくの同盟が反故になったら大変だ。世界の一大事に、こんな些細な事で揉めている場合じゃない。
精一杯彼を食い止めれば、彼が剣を掴む手から徐々に力が抜けていく。
そんな私達を嘲笑うように、シャールさんは扉に向かって歩きながら言う。
「貴女は何もしなくて良いんですよ、炎の御子。貴女の代わりなど、いくらでも居るのです。魔女を封印しなくてはならない時まで、そこの忠犬に匿ってもらっていれば良い。どうせ人間風情には、我らエルフのような働きなど出来はしないのですから! ハハッ……フハハハハッ!」
不愉快な高笑いと共に、嫌味なエルフは私達の前から姿を消した。
ただここに、幼い容姿の大精霊を残して──。
少女は申し訳なさそうに眉を下げ、私を見上げている。
「ごめんなさい、お姉ちゃん……。シャールはね、本当は……」
「良いんですよ、ウェントゥス様。さあ、シャールさんの元にお戻り下さい。きっと心配されますから」
「……うん。本当にごめんなさい、炎のお姉ちゃん」
風の大精霊は、契約者の後を追って去って行く。
残された私とグラースさんは、しばらくその場から動く気力が出なかった。




