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アクター4 『蒼い髪の少女』

 アクター4 『蒼い髪の少女』

 

 だけど、今回の物語で一番の喜劇にして悲劇な役柄は――

 彼女だったのかもしれねぇな。

 あの娘っ子は、望んでこの物語に参加して――そして、何も得られなかった。

 

 はっ!

 まぁ人生なんて損なもんだ。いや、そんなものだ。

 身しらずの人物に巻き込まれ、巻き込んだ連中は損をして――結局どっちも損をする、と。

 

 

(蒼い少女の回顧)

 蒼い空と、すべての蒼を統べる海で――

 兄は言った。教えてくれた。

 

「この世界で、最も美しい蒼を、見せてあげるよ」

 

 蒼く澄み渡る海を見下ろせる土地、その領地を収める領主の息子、それが私の兄だった。

 兄は優しく、気高く、そして誰よりもその蒼を愛していた。

 先祖代々から守り続けていた、この蒼き海。

 平和も、争いも、全てを見据えてきたこの海を見て、私も兄も育った。

 

 ……大好きな色だった。

 

 最後に兄をみたのは――

 大嫌いな色に塗れた――兄だった。

 

「この蒼を見続けられるなら」

 すべてを……の色に染めても良い――

 

 兄は、変わり果てた。

 

 領主となり、その責務に負われ、苦悩にさいなまれ続ける兄を、私はただ横で見守ることしか出来なかった。

 兄は――不死者となった。

 

 不完全な、不死者となった。

 なぜ不死者となったかはわからないけど、私は安堵した。

 

 嗚呼、兄はやっと解放される。

 また、一緒にあの蒼を、

 

 手をつないで、みられグシャリ――――

 

 

 私は、一回死んだのだと思う。

 目覚めた最初は、倦怠感と、嘔吐――

 

 広がる景色は――

 

 紅――赤、赤、アカ、アカ、あか、あかあかあかあかあか――

 この世でもっとも、嫌いな色ッ!

 

 握り締めた石が、簡単に砕けた。

 嗚呼、私も兄と同じ病を背負ったのだろう――

 

 私は兄を追った――

 

 追って、追って、追いかけて――

 

 

 朽ち果てた教会で――再会した。

 再会できた。

 

 兄は――●だけだった。

 

 

 アレ――ッ? 兄さん? ちょっと――アレアレ? 嘔吐勘。

 駄目だよ。? ン? えっと――首だけだった――

 どうして――アレ? なんで――大嫌いな色。

 兄さん、私の声を、染まっていた、どうして――

 

 

 

 コロシタノ――ダレ?

 

 

「殺したのは、神殿騎士の少年だよ」

 

 兄を抱いたまま、教会を出てきた私を出迎えたのは――

 

「誰?」

「誰と問われたら、私は自分の名前を答えるしかない――」

 

 目元を変な手拭で覆った、不気味な女。

 

 オマエカ――?

 

「私は、ルルダ。君の……抱きしめているそれを、殺されるのを、見ていた」

「見て、いた……?」

「そう――机や祭壇を投げつけて、それをかいくぐった銀髪の青年が」

 

 大鎌で、ザクリ――と。

 

 ザクリ? ザクット――サクリ

 痛かった? 兄さん、痛かったの? うぅんそんなことないよ?

 嘘だ、嘘だッッッ!

 

「……」

 いつの間にか、女が私を見下ろしている。いや、目隠しで様子はわからないが――

 女は――私を見据えている。

「私は、助けなかった。なぜかわかるか?」

「……どうして、どうしてッッッ!」

「どっちでもよかったから」

 

 !?

 

「殺す者、殺される者、その両者がいた――ただそれだけ」

 思わず掴みかかろうとして――その手は空を掻いた。

 同時に、兄をオトシテシマッタ……シマッタ――

 

 ……慟哭――

 

「私は神でも無ければ、善人でもない。

君のような親族がいたところで、殺した少年に恨みがあろうとて――私には知る術が無いし、知る意味も理由も、

何より、興味が無い」

 女の声は――遠い――

 

「ただ――お前の悲鳴には、興味を抱いた」

 ――私の、ヒメイ――

 

「いつもいつも、これだ。悲鳴を聞きつけたら、いつも後の祭り。

いつも誰かが泣いていて、泣いているのはいつも一人ぼっちの誰かだ。

加害者も被害者も消え去って、いるのは犠牲者だけ――

少女――お前はどっちだ」

 

 泣き続ける被害者か?

 復讐を望む加害者か?

 それともここで終わる犠牲者か――

 

「選べ――」

 

 私は――こうして、アズリエルに出会った。

 転生にして輪廻を舞わす、大天使――

 

 人の生死を司り、もてあそぶ、魔蝶。

 

 ならば、この魔天使をも私は利用しよう――

 私はお前の前で踊ろう、復讐の舞台を。

 

 あは、あははは――

 

 あはははははははははははははははははははは

はははははははははははははははははははははははははは

 

 気がつけば私は、哂っていた。

 

 空は、好きでも嫌いでもない――

 

 灰色だった。

 雨――ザァ〜ザァ〜……

 

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