流星群のレース
これからレースが始まる。
横に並び、今すぐにでも発進できるように構えている。
隣の選手の顔が見える。
真剣なまなざしで前を見ている。
こちらの視線に気づいたのか親指を立てて、笑顔を見せた。
こちらも「健闘を祈る」という思いを込めて挨拶を返す。
前を向き、信号が青になるのを待つ。
胸が高鳴っている。
チームのみんなが応援してくれて、手ぬぐいにメッセージを書いてくれた。
ここまで来るのに何回も練習をして、怪我をしたこともある。
ギリギリというか極限を目指している。
越えられない壁は無い。一つ壁ができるたびにそれを乗り越えていく。
必要なことはそれを乗り越えようとする意志とアイデアと心だ。
それらを乗り越えた先にレースがある。
大会の主催者達はレースのスタート地点で眺めていた。
「いやはや、今年のレースも盛り上がりそうですな」
「どの選手も技術を磨き上げてきているそうですよ。どんなレースになるのか楽しみですな」
「それにしても会長は残酷なことを考えなさる」
「まったくだ。でもそれでレースがより盛り上がるのだからさすがとしか言えないな」
「でもちょっと選手たちが可哀そうな感じもしますな」
「しかしまぁ、条項が追加されてもこの大会で得られる名誉と称賛のためにこれだけの選手が集まるのはありがたいことですな」
スターターが台に立ちフラグを大きく掲げる。
発信前の緊張感がより一層高まり、各々の選手がフラグに集中する。
旗が振り下ろされ、選手が一斉にスタートした。
どの選手も1番を目指して駆け抜けていく。
でもどの選手も何か必死なものを抱えているように見えた。
「この頃の大会は成績の延びが鈍化してきています。みなさんの切磋琢磨はこんなものではないと私は確信しております。不本意ではありますが、みなさんの気持ちを高めて頂くために、今年から新しい条項を加えることにしました」
「地上では我々のレースの姿が見えている時に願い事を3回唱えると願いがかなうと言われております。せっかくなので、光を放つ間に3回願いを唱えられた人は願い事を叶て下さい」
このレースは星々を渡る。
地上から見れば、レースの軌跡が流れ星に見える。
それに見た人々は空に光へ願いを込める。
選手たちは、3回願い事を言われ切らないように必死に走らなければならなかった。
流れ星は早い。
それは選手たちが切磋琢磨して駆け抜けていっている証拠だ。
もう少しひねりが欲しい。