Chapter-1
「魔法少女もの×性転換×ツインテール」で書いてみました。
魔法少女ものとツインテールはもとから好きだったので。
性転換は近日公開される映画から構想を立てました。
目立ったエロ要素とかはないので(というか書けない)安心してご拝読いただけると思います。
稚拙な文章表現になっているかと思いますが、そこんところは大目に見てくれると助かります!
あと、ご都合主義満載な展開ですのでご了承くださいませ。
《私立フェアリー学園》
そこが、この春より二上カヲルが通うことになってしまった高校だ。
名前のとおり、その外観はまるでおとぎ話に出てきそうなほど可愛らしいもので、百パーセント純粋な男子生徒であるカヲルからしたら全身がむず痒くなってしまいそうなデザインである。
「まさか、本当にここに通うことになるとは……」
カヲルは思わずため息を漏らした。
「おっす!」
と、誰かの声がカヲルの背後から聞こえた。が、カヲルにはその正体がすぐに分かった。
男子特有の野太い声、その姿を見なくても容易に想像できてしまうような筋肉質な体、カヲルとは小学生からの腐れ縁である矢島剛史が仁王立ちをしていた。
「朝っぱら声でけえよ……」
「なんだよーー、元からだからしょうがねえだろ」
カヲルは剛史の大声が苦手だった。
それは小学生のときから変わらず、カヲルはいつも注意しているのだが剛史はまったく反省する気はないのだった。
「なあ、可愛い女子いるかな?」
「はぁ? そんなの知らねえよ。 それに、いたとしてもまったく興味ねえし」
「お前なあ、そんなだから彼女出来ねえんだぞ」
「童貞のお前に言われたくねえし」
「ど、童貞じゃねえよ? 彼女ぐらいいたからな?」
「妄想で、だろ?」
「うるせえなあ」
そんなことを話しつつ、カヲルと剛史は校門をくぐった。
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同日、同時刻。
人で賑わう商店街の一角。
そこは陽の当たらない場所だった。
と、そんな暗闇で何かがうごめいた。
《グ……、コノ私ガ奴ニココマデサレルトハ……ナ……》
それは力なくそう言った。
《再ビ……能力ガ戻リサエ……スレバ……》
それからそれはこう付け足した。
《ツインテールの能力ガ……》
そう言い残すと、それはどこかへと姿を消した。
********
二時間後。
入学式を終えたカヲルは商店街の近くへと来ていた。
午前中に終わったので、このまますぐに家に帰るのもつまらないと思ったからだ。
「さてと、あいつんとこでも寄ってくか……」
カヲルの言うあいつとは、彼の幼なじみである水田瑠璃のことだ。
彼女もフェアリー学園に入学したのだが、入学式の前日に熱を出してしまい寝込んでいるのだ。
カヲルは八百屋で果物をいくつか買い込んで瑠璃の家へと向かった。
********
三十分ほど遡り、瑠璃の家。
瑠璃はベッドにいた。彼女の両親はそれぞれ仕事で家にはおらず静寂に包まれているためか、彼女はスヤスヤと寝ていた。
ニャア。
と、どこからか猫の鳴き声が聞こえた。
瑠璃は少し熱の収まった体を起こし、鳴き声がした場所を見る。
そこは薄暗い場所で、その猫は排水溝に体の半分がはまってしまっていた。
「大変!」
瑠璃は急いで階段を駆け降り、外に出て排水溝のある場所へと向かった。
そこに着いたときには、猫は今にも排水溝に落ちてしまいそうな状態だった。
「待ってて、今すぐ助けるからね!」
そう言うなり、瑠璃は猫のほうへグッと手を伸ばす。
だが、あと少しのところで届かない。
「もう少し……。 もう……少し……」
瑠璃は限界まで手を伸ばす。
と、瑠璃の手が猫の前足を掴んだ。
「よし! ちょっと痛いかもしれないけど我慢してね!」
瑠璃はそのまま猫の前足を自分のもとに手繰り寄せる。
「フギャアッ!」
お腹を擦ってしまったのか猫が声を荒げる。
「ごめんね! もう少しだから!」
瑠璃の言っていることが分かったのか猫は声を荒げるのをやめた。
「いい子だね。 せーーの!」
瑠璃は力を込めた。
すると、猫の体がスルリと排水溝を抜けた。
猫は身軽に跳躍をしたが、瑠璃はそのまま尻もちをついた。
「いたた……」
瑠璃はお尻をさすった。
「でも、無事でよかったあ……」
瑠璃がホッと胸をなで下ろすと、猫がピョンと彼女の膝に飛び乗ってきた。
「ミルクでも、飲む?」
瑠璃がそう言うと、猫は嬉しそうに鳴いた。
「ねえ、飼っちゃダメ……かなあ?」
瑠璃は母に電話をかけた。
『あなた、面倒くさがらないで飼えるの? 生き物なのよ?』
「飼えるよ……。 だから、お願い!」
『………………分かったわ。 ちゃんと世話をするのよ? いいわね?』
「うん! ありがとう、お母さん! お仕事がんばってね!」
『分かってるわ。 じゃあね』
そこで電話は切れた。
瑠璃は自分の部屋のドアを開けた。
そこにはミルクをゴクゴクと飲む猫の姿があった。
どうやら体力が戻ったらしく、ミルクを飲み終わると元気いっぱいに部屋の中を駆け回った。
「あなたのこと飼ってもいいって!」
瑠璃は嬉しそうにそう言った。
猫は思わず立ち止まる。
「これからよろしくね!」
瑠璃は手を近付けた。
「ニャッ!」
猫は前足を瑠璃の手に触れるように跳躍した。
「ああ! もう、可愛いんだからあ!」
瑠璃は猫を抱き寄せた。
猫は抵抗することなくされるがままだ。
「どんなワガママだって聞いちゃうんだからあ!」
「ニャッ!」
と、瑠璃の言葉を聞いた途端、猫がスクッとその身を立ち上げた。
《ソノ言葉ハマコトか?》
「……え?」
瑠璃は突然の出来事に驚いた。
猫が二本足で立つのはまだしも、人の言葉を話したのだから無理はない。
《デハ、私ノワガママヲ言ワセテモラオウ》
そう言うと、猫は不敵な笑みを浮かべた。
《貴様ノ体ヲ貰オウカ……》
その言葉をきっかけに、呆気にとられている瑠璃の体を静かに闇が包んだ。
********
同時刻。
先ほどの商店街の一角に二匹の猫がいた。
「まずいわ。 邪悪な気配はここで途切れている!」
一方の猫──アメリカンショートヘア──はさも当たり前のように人の言葉を話している。
「奴らを野放しにしてしまったら、この世界も滅亡してしまう……」
もう一方の猫──シャム猫──も同様に話す。
「急いで探さないと、双髪の魔法少女を!」
アメリカンショートヘアがそう言うと、
「……! シャーリー! 奴らの居場所が大体だが分かったぞ!」
シャム猫がこう返した。
「ほんと!? だったら急がないと! リア、行くわよ!」
シャーリーと呼ばれたアメリカンショートヘアは急いで駆け出した。
「『行きましょう』な! 分かってるよ!」
リアと呼ばれたシャム猫もシャーリーのあとをついて駆け出した。
********
「ごめんくださーーい!」
瑠璃の家にやって来たカヲルはチャイムを鳴らすが返答はない。
「ごめんくださーーい! いないのかな……?」
カヲルは引き戸に手をかけた。
すると、鍵がかかっていないのに気付いた。
「不用心だなあ……」
引き戸を開けると、玄関から呼びかけた。
「瑠璃、いるかーー?」
しかし、返事はない。
「勝手にあがるぞーー?」
カヲルは戸を閉めて瑠璃の部屋に向かった。
と、そのとき、瑠璃の部屋から何かが割れるような音がした。
「瑠璃!?」
カヲルは勢いよく階段を駆け上り、瑠璃の部屋の戸を開けた。
「瑠璃……?」
そこには部屋の電気をつけずにその場にたたずんでいる瑠璃の姿があった。
「な、何やってんだよ……、電気もつけずに……」
カヲルはすぐに部屋の電気をつけた。
明るくなった部屋を見たカヲルは、その異質さに違和感を覚えた。
疂の上には大量の髪の毛が散乱していたのだ。
さらに、窓ガラスがすべて割れ、これも畳の上に散乱している。
「な、なんだよこれ……」
「……何が?」
瑠璃は部屋の異常さに気づかないといった感じで答えた。
「何がって……、お前変だぞ!」
「カヲルくん、私、変じゃないよ?」
「どう考えても変だろ! 何があって……」
と、カヲルは決定的な違和感に気づいた。
「なあ、瑠璃……。 今まで寝てたんだよな?」
「そうだよ?」
「その髪型でか?」
「え?」
カヲルが指摘したのは瑠璃の髪型だった。
瑠璃の今の髪型はツインテールで、寝るときにしては相応しくない。
「……そっかあ。 ツインテールのままじゃダメだったかあ」
「瑠璃?」
「くっくっく……、これだから勘のいい男は嫌いなんだよ……」
と、突然瑠璃の口調が変わった。
「瑠璃!?」
「ふふ、まあいい。 どうせ、我々の目的を知る前に死ぬことになるのだからな」
そう言うと、瑠璃を眩いばかりの光が包み込む。
と、瑠璃だと思われた何者かがその姿を露わにした。
顔は横に伸び細長い舌を出したり引っ込めたりを繰り返している。
手は肥大化し鋭い爪がずらりと並んでいる。
背後には二股に分かれた尻尾がゆっくりと動いている。
その姿は巨大なトカゲのようであった。
「あ……」
《フフ、驚イテイルヨウダナ。 マア、無理モナイ。 コノ爪デ貴様ヲ切リ刻ンデヤル!》
そう言うと、怪物は巨大な手を振りかざした。
《死ネッ!!》
「うわあッ!!」
勢いよく振り下ろされたかぎ爪は部屋の壁に大きな穴を開けた。
カヲルは間一髪のところで飛びのいた。
「な……、なんだよこれ……!」
《フフ、運ノイイ男ダ。 ダガ、今度ハ今ノヨウニハイカンゾ。 死ネッ!!》
怪物は再び手を振りかざしカヲル目がけ振り下ろす。
もう……、終わり……なのか……。
カヲルは自らに迫る脅威をただ見ることしかできなかった。
怪物のかぎ爪がまるでスローモーションになって見える。
案外……、俺の人生も……悪く……なかったな……。
もう諦めたのか、カヲルはそっと目を閉じた。
飛び散る自らの血を見るのがイヤだったのだ。
考えただけでカヲルはぞっとした。
「諦めるのはまだ早いわ!」
と、声とともにどこからともなく何者かが現れ、すんでのところで怪物を押し倒した。
《グハアッ!!》
その巨体は勢いよく飛ばされ、部屋の扉を壊した。
「……! な、なんだ!?」
カヲルが見た先には一匹の猫──アメリカンショートヘア──が窓際にいた。
「ね、猫!?」
「そんなことはどうだっていいわ! 君、チカラを貸してほしいの!」
「チ、チカラ……? って、猫が喋ったああああ!?」
「そんなことより! これを受け取って!」
そう言うと、猫は何かをカヲルに向かって投げた。
カヲルは慌ててそれを手にする。
「……な、なんだこれ!?」
猫が投げたのはブレスレットだった。
「それを腕にはめて、頭に浮かんでくる呪文を唱えてほしいの!」
「は、はあ!? な、なんなんだよ、それ!?」
「いいから急いで!」
《グ……! ソ、ソウハサセルカアッ!!》
と、再び怪物が手を振りかざす。
「わ、分かったよ! やるよ、やればいいんだろ!」
怪物の攻撃を再び間一髪でかわしたカヲルは、ブレスレットを左腕にはめた。
「……!」
すると、頭のなかにある言葉が瞬時に浮かんだ。
「これが……、猫が言ってた呪文ってやつか……。 し、しかし……」
カヲルは頭のなかに浮かんだ呪文に少しばかり抵抗を覚えた。
それは、なんとも形容しがたいほどの、百パーセント純粋な男子生徒であるカヲルにとって、言うのをためらうようなものだったからだ。
「な、なあ……。 ほ、ほんとにこれを言わなきゃいけないのか?」
「当ったり前でしょ! 何をためらっているのよ!」
「い、いや……、しかし……」
「奴をほっといていいわけ!?」
「そ、それは……、よくない……」
「だったらつべこべ言わずに呪文を唱えなさい!!」
「…………わ、分かったよ!!」
カヲルは覚悟を決めた。
あの怪物がなんなのか、猫が何を言っているのかは分からなかったが、ただ事ではないような感じだけはカヲルにもはっきりと伝わった。
それに、瑠璃を襲った奴を許してはおけなかったのだ。
カヲルは頭のなかに浮かんだ呪文を唱えた。
「き、キラキラ! つ、ツインテイル! め、メタモルフォーゼ!」
しかし、何も起きなかった。
「あ、あら? あらあら?」
予想外の事態に猫は驚きを隠せずにいた。
「お、おい……、何も起きないんだが、これはどういうことだ? 何か起きるんじゃないのか?」
カヲルは顔を赤くしながらも猫に詰め寄った。
「お、おかしいわねえ? こんなはずじゃなかったんだけど……」
「俺はあんな恥ずかしい呪文を唱える羽目になったんだぞ? どう責任取ってくれんだよ!?」
「あ! ひょ、ひょっとしたら、変に詰まりながら唱えてたのがまずかったのかもしれないわ!」
「はあ!?」
「だ、だから、もっとスラスラっと唱えたら成功するかもしれないってこと!」
「…………ほ、ほんとだろうな……?」
「え、ええ……。 きっとそうに違いないわ!」
「…………分かったよ……」
カヲルは羞恥心を抑えて再びあの呪文を唱えた。
「キラキラ! ツインテイル・メタモルフォーゼ!」
その瞬間、カヲルは眩い光に全身が包まれるのを感じた。
その光の中でカヲルの体が変化をはじめた。
まず変化を見せたのは胸だった。見る見るうちに胸部が膨らみはじめて豊満な胸を形作る。
腰にはくびれが形成され、お尻は逆にふっくらとした肉付きになる。
ガニ股気味だった脚部は徐々に内股になっていき、すらっとしたものになる。
顔も小さくなり、輪郭はもともと丸かったものがさらに丸くなっていった。
短かった髪もだんだんと伸びていきツインテールになった。色も金色に染まる。
目も若干だが大きくなった。
肉体的な変化のあとは衣服の変化だ。
着ていた制服はドレスのような服に変わる。
ズボンはどんどん膨らんでいきバルーンスカートに変化する。
足元は白ソックスが膝辺りまで伸び、赤いトゥーシューズも形成された。
最後にドレスとスカートにそれぞれリボンが付いて変化は終わった。
大柄な男子高校生は奇妙なコスプレをした小柄な少女へと変わった。
「なッ!?」
「やったわ! 今度こそ大成功よ!」
猫はどことなく嬉しそうな感じだった。
「な、なんなのよ、これ!?」
カヲルの話す言葉はどういうわけか女性語になっていた。
「驚かないで! あなたは古より語り継がれる伝説の戦士、双髪の魔法少女ツインテイルに変身したの! 鏡を見て!」
そう言うと、猫はどこからか手鏡を取り出した。
カヲルは手鏡を通して自身の姿を確認する。
「なッ!? なにこれええええ!?」
カヲルはその姿を見て驚愕した。
さらに、自分の声の高さにも仰天した。
「こ、声も高くなってるしいいいい!? 話し方も変わってるしいいいい!?」
「それだけじゃないわ! 魔法少女ってんだから色々な魔法も使えるのよ! さあ、試してみて!」
「ま、魔法!? ど、どうすればいいの!?」
「まずは魔法陣を発現させる必要があるわ。 でも安心して! 両手を前にかざせば魔法陣が発現するわ!」
「う、うん! やってみる!」
カヲル改めツインテイルは言われたとおりに両手を前にかざす。
「……!」
すると、空間に突如として魔法陣が出現した。
「そう、それでいいわ! 次に使いたい魔法をイメージして! 武器を出すことも瞬間移動も、空を飛ぶことだってできるわ! やってみて!」
「う、うん! じゃあ……」
ツインテイルは必死にイメージを膨らませた。
「剣よ、出てきて!」
ツインテイルがそう唱えると、空間から一本の剣が出現した。
「出てきた! かっこいい!」
「……発想はさすがに女性化することはできなかったみたいね……」
猫は呆れていたが、ツインテイルはお構いなしだった。
いくら外見や話し方が女性化したとしても好きなものまでは変えられないのだ。
ツインテイルは出現した剣をそっと受け取る。
「おお! やっぱカッコいいなあ!」
「危ない!!」
「え……?」
猫の声でツインテイルが振り返ると怪物がすぐそこまで迫って来ていた。
「しまった!」
ツインテイルはとっさに剣で攻撃を受け止める。
その衝撃で部屋に飾ってあった賞状やらトロフィーやらが砕け散った。
「すっかりこいつの存在を忘れてたッ!」
「もう! しっかりして、ツインテイル!」
「ごめん、ごめん!」
ツインテイルは謝ると同時に剣を怪物に向けて振った。
その刃先は怪物の鼻先をかすめた。
《グ……! マサカ、人間ゴトキがソノ姿ニナレルトハ……! アリエンッ!》
「あら? 人間には可能性があるのよ? それはご存知?」
猫が鼻高々に言う。
《コンナ奴ニ……、私ガヤラレルワケガナインダヨオッ!!》
怪物は激昂した。
顔は赤く大きく膨れ上がり、さらに筋肉質な体に変化した。
その体からはうっすらと蒸気が上がっているのが見える。
「あれだと、触れるだけでも危険ね……。 ツインテイル、気を付けて!」
「分かってるわ!」
ツインテイルは剣を怪物のほうへ向ける。
「剣よ、灼熱の炎をまとって!」
そう唱えると、剣をまとうように炎が出現した。
「よし、これなら!」
《フハハハハ! 無駄ナ発想ダナ! ソノ程度ノナマクラナ剣、私ノ前デハ無力ナリ!》
「ふッ、それはどうかしらね?」
ツインテイルは不敵な笑みを浮かべた。
《何? ソレハドウイウ意味ダ?》
「それは、やってみれば分かるわ!」
《フンッ! クダラン! タダノ戯言ニ付キ合ッテイル暇ハナイ!!》
怪物はツインテイル目がけて突進をしてくる。
一方のツインテイルは剣を高く振りかざした。
《……! フッ! ソレハドウイウツモリダ? ソンナモノ、当タルワケガナイ!》
怪物は少し軌道を外し右方向から突進を続けた。
《私ノコノ牙デ、貴様ノ喉ヲ掻ッ切ッテクレルワ!!》
怪物はツインテイルのすぐそばまで近づき、口を大きく広げた。
「馬鹿ね……」
ツインテイルはそう呟いた。
《死ネッ!!》
「瞬間移動!」
と、ツインテイルは姿を消した。
《ナッ!?》
怪物は目の前にいたはずのツインテイルが突然消えたことに一瞬動きを止めた。
《ド、ドコニ行キヤガッタ!?》
「こっちよ」
《……!?》
怪物が振り返ると、そこにツインテイルがいた。
「これで終わりよ……」
《グッ……、シマッ……!》
ツインテイルは振りかざしていた剣を振り下ろした。
それは怪物の体を真っ二つに焼き切った。
《ガッ……! マ、マサカ……、コノ……私……ガ……》
怪物はそのまま燃え尽きて灰へと姿を変えた。
「ふう……、とりあえずは一件落着ってところかしらね」
「ねえ……、これは一体どういうことなのか、一から説明してくれるわよねえ?」
猫が恐る恐る振り返ると、ツインテイルが恐ろしい形相で睨んでいる。
「お、女の子は、そんな怖い顔しちゃダメ、よ……。 ねッ?」
「わ、た、し、は……、男よおおおお!」
言いたいことと言っていることがまったく噛み合っていないツインテイルは猫の首根っこを掴んだ。
「で、デリケートに! デリケートに扱ってええええ!」
「問答無用よ、この猫おおおお!」
「ちょ、ちょっと離してええええ! とにかく自己紹介だけはさせてええええ!」
自己紹介という言葉を聞いて「仕方ない」とツインテイルは手を離した。
「……はあ、はあ……。 息ができなかったわよ……」
「で? あなたは一体何者なのよ?」
「……コホン。 私の名前はシャーロット・グリムフォード・テイル。 まあ、長ったらしいから『シャーリー』と呼んでくれていいわ。 私は使い魔をしているの。 これからよろしくね、えーーと?」
「二上カヲルよ」
「じゃあ、カヲルちゃんね?」
「なッ!? だから、私は男だってばああああ!」
ツインテイルは再び、猫改めシャーリーの首根っこを掴んだ。
「ふぎゃああああ!」
シャーリーはギブアップといった感じで叫ぶのであった。
だが、この出逢いが自身の運命を大きく変えることになろうとは、このときのカオルちゃ……カヲルは想像すらしていなかったのである。
<次回へつづく>