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夜空に輝く北斗七星 プロローグ
___窓の隙間から吹く春風に、若草色のカーテンがひらりとなびいた。
風はあたたかく、肌触りが気持ち良い。
運んできたダンボールの山を一旦置き、窓の外を眺めてみた。
さすがの田舎だ。ビル1つない景色が広がり、木々が青々と茂っていた。
少しの間その風景を堪能すると、さっき持ってきた数々のダンボールの中から1つ選び、ガムテープの封を剥いで中身を取り出す。
天体望遠鏡。
少し前だが、すごく昔のように感じられる思い出が多く詰まっているものだ。
雲のない真昼間、その筒のレンズを覗く。何も見えない。
使い古したそれを高い棚の上に置いて置くことにした。
さぞかしこんな田舎なら、前よりもっと良い星空が見えるんだろうか。
だけどもう隣に君はいない。
「夜空に輝く僕ら」は、いくつかの独立した話があるオムニバスの形式で、今書いている「夜空に輝く北斗七星」がメインストーリーとなっています。各話、登場人物や設定は同じですが話によって主人公が違うのでお楽しみ頂けたら光栄です。