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第1話

「うーん……」


 俺はオフィスの私室のソファーに腰掛け、冒険者募集の告知に応募してきた冒険者たちのリストを眺める。

 整頓された執務机の上に置かれた紙には、以下のような記述が並んでいた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ロナ…………ドワーフ/女/ウォリアー/レベル7/希望賃金:銀貨12枚

 ティアラ………人間/女/プリースト/レベル1/希望賃金:銀貨6枚

 エフィル……人間/女/ガード/レベル19/希望賃金:銀貨24枚

 ミィル……エルフ/女/メイジ/レベル8/希望賃金:銀貨13枚


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「──社長、ご決断を」


 俺が座っている斜め後ろで、側近よろしく立っているメイド姿の女性が、俺に意思決定を迫ってくる。


「そう言われても、どう決めたものやら……」


 俺は頭をかきかき、考える。

 何を考えているかというと、うちの最初の従業員として、彼女たちのうちの誰を雇うか、ということだ……。




 現代日本において平々凡々と暮らしていた俺が、いつものようにだらだらとネットをしているときに見つけたその広告が、俺の運命の始まりだった。


「ファンタジー世界で会社経営をしてみませんか? ──冒険者たちを雇ってダンジョンに行こう!」


 そんなあおり文句の広告を見つけて、ありがちだなぁと思いながらも、「会社経営」という部分に興味を惹かれた俺は、広告先で何気なくクリックを続けて行ったのだが──

 そのうちに、いつの間にやら俺の意識がブラックアウトして、次に気が付いたときには、今の異世界にいたというわけだ。


 ちなみに、異世界に辿り着いた俺が最初にいた場所が、今も座っているこのソファーだ。

 そのときには当然、俺は挙動不審な行動を取り、慌てて転んだりもして、今と同じく斜め後ろに控えていたメイドのリアナさんにいぶかしまれた。


 俺は動転しながら、分からないことをリアナさんに片っ端から質問した。

 するとリアナさんは、転んだ拍子に頭を打って記憶が欠落したものと考えたらしく、根掘り葉掘り質問する俺に対し、様々な事を丁寧に説明してくれた。


 リアナさんから聞いた話を要約すると、こうだ。


 この世界の俺は冒険者カンパニーを経営する若社長で、つい先日病死した父親からこの会社を引き継いだばかりである。


 冒険者カンパニーというのは、賃金を支払って冒険者を雇い、ダンジョン探索をすることでお金を稼ぐ会社のこと。

 カンパニーは、雇った冒険者に対して常に一定の賃金を払わなければならない代わりに、ダンジョンで手に入れた物品は、原則すべて会社の物となる。


 そしてこの世界では、冒険者というのは基本、この冒険者カンパニーに雇われて冒険を行なうことになっていて、個人で立ち回ることは、事実上不可能に近いのだそうだ。


 ちなみに、冒険者を雇うのは基本、終身雇用ではなく短期雇用なので、父親が経営していた頃のお抱え冒険者とかがいるわけではない。

 唯一の固定社員と言えばメイドのリアナさんぐらいのもので、それ以外の財産と言えば、この住居を兼ねた社屋と、備え付けの家具、それに会社に蓄えられた幾ばくかの貯蓄金ぐらいのものだった。


 そんなわけで俺は、右も左も分からないまま、この異世界で社長になった。

 そしてひとまずは、リアナさんの助言に従って冒険者募集の告知を出してみて、その結果が先のリストなわけだが……。


「──社長、誰にするか決めかねるようであれば、ひとまず応募してきた冒険者たちと、面談をしてみてはいかがでしょう?」


 俺が誰を雇うべきか迷っていると、リアナさんが助け舟を出してくれた。


「面談……?」


「はい。人を雇うということは、ともに働く仲間を選ぶということでもあります。社長ご自身が、この人と一緒にダンジョンに潜りたくないと思うような従業員は、雇うべきではありません」


 まったくもって正論だった。

 社長と言っても、うちのような零細冒険者カンパニーでは、社長である俺自身も、冒険者として実働することになる。

 そんなオーナー店長ならぬ、社長冒険者というわけだから、自分にとって嫌な人を雇わないということは、確かに重要に思える。


 さりとて、面談なんてどうやったらいいのかさっぱり分からないのだが、「とりあえずこの場に呼んでみて、適当に話をすればいいんです」という、これまたリアナさんの助言に従って、俺はひとまず、面談なるものをやってみることにした。


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