#2 見せた
窓から差し込む陽光。
柔らかとは言い難い、真夏の日差しを受けて、俺は顔をしかめた。枕元の時計を見ると、十時になろうかというところ。今日は夏期講習が昼だから困りはしないが、目覚ましを掛け忘れたのだろうか? 普段は生活のペースを崩さないように、夏休みといえども平時と同じ時間帯に目覚ましをセットしているのだ。
ああ、変な夢を見た。
寝汗はきっと暑さのせいではない。八割くらいは冷や汗なはずだ。
「あっ」
思わず声が出た。
夢の中で放尿したことを思い出したのである。慌てて触って確かめてみるが、寝小便はしていないようだった。
ただ、意識から逸らしていた「事実」とも、どうしても面する羽目になってしまった。
パンツ越しに触る股間に、ちん子は不在だったのだ。というか実は起きた時から視界には入っていたのだが、俺のちん子(意味深)はずっと、俺の横で寝ていたのである。
でろん、というかだらん、というか、こうして客観的に見てみるとなるほどどうして、モンスターだ。
さすがにもう気絶できそうにはない。いい加減、こんな意味のわからないことであっても、事実は直視しなければならないのだ。
ただそれでも、これくらいの行動は許されるべきだった……すなわち。
「はあああああああああああああッ!?」
叫ぶことくらいは。
♂
日曜日だった。
両親は家にいる。二階の自室から一階のリビングに降りると、母は朝食を作っているようだった。
「おはよう。父さんは?」
「おはよう。まだ寝てるわよ」
ちん子はとりあえず布団の上に放置してある。俺は意を決して言った。
「なあ母さん。朝起きたら、チ○コがもげてたんだけど」
俺の一世一代の告白に帰ってきたのは、
「……ぷひょっ」
変な笑い声だった。声同様、変な顔をしてこちらを向く母。
「変なこと言ってないで、はやく朝ごはん片付けてよ。もうお昼になっちゃう」
どうやら信じてくれなかったようだ。その時は憤ったものだったが、こうして思い出してみると、どう考えてもその通り。俺だって、いきなり息子(チ○コのことではない)から「ちん子が俺のとこから出て行っちまったんだYO〜」なんて泣かれたら、変な笑い声くらい出る。
しかしここで食い下がるわけにはいかない。俺のちん子は独立してしまったのだ。この上ない異常を、そのまま放置するわけにもいくまい。
「いや、マジなんだって、母さん!」
「はいはい」
完全にスルーの構え。
「あんまり変なこと言ってると、黄色い救急車が来ますからねー」
母のその言葉に、俺は徹底抗戦を決める。
すなわち、トランクスを脱いで見せたのだ。
「ほら、見ろ。母さん。俺のチ○コがない」
……言うなってば
まだ医者編が残ってるんだぜ?
なお、この小説は、毎月7の倍数日に投稿されます。(※1月2月に近づくにつれて更新が滞る恐れがありますが、短いシリーズの予定なので、受験が終わったらすぐに再開いたします)