白い床
それは、あまりにもあからさまな事実だった。
誰がどう見たって、天と地がひっくり返ったって、
それは、火を見るより明らかであった。
今ここで引き金が引かれれば、あなたは確実に死に至る。
満月の光に照らされ、白く光る床の上で静かに眠るあなた。
その運命は全て、この拳銃が握っている。
起きる撃鉄、そしてリボルバーがカチャリと音を立てた。
宇宙の遥か彼方、
ブラックホールが光を吸い込む音さえ聞こえてくる静寂の中、
その音にもあなたは目を覚まさない。
撃つか、撃つまいか。
必要なのは、驚くほどにわずかな手順だ。
あなたの死は、風の前の塵に同じ。
それでいて真っ黒な碇のよう。
どこかで水仙が、風もなくゆれた。
何度も試みてきたのだ。今日こそ。
さあ、撃て。撃て、撃て。撃て。
……拳銃は下ろされた。
あなたは今日もまた助かる。
わたしの苦悩と引きかえに。
眠りと引きかえに。
額縁の中の沙羅双樹が香った。
白銀の月は永遠に沈まない。
アナタはダレ? ワタシはダレ。アナタはワタシ? ワタシはアナタ。
明日は、あなたか、それともわたしか。