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決心

ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!


(なんだ?誰だ?連打しやがって)


 インターホンを連打する不自然な音に俺は睨みつけながらドアを開けた。

「はい……ってなんだお前? なんでここにいるんだ? 今から迎えに行こうと思ってたんだが?」

「一人で帰った!」

「帰った! じゃねぇよ! お前一人か?」

「うん!」

 姪っ子が帰って来た。

「一人って……お前何してんだ?」

「…………」

「黙ってたらわかんねぇだろ!」

「ごめんなさい……。勝手に帰った…………」

「勝手に? お前猪木に何も言わないで帰って来たのか? しかも電車で?」

「うん!」

「ドヤ顔でうん! とか言うんじゃねぇよ!」


 こいつはなんなんだ?

 しかし、よく帰ってこれたな。

 乗り換えも一回あるぞ。

 どうやら淑美は行きの行程を覚えていた様だった。 

 どうせ『新宿御苑前駅!』とか言って誰かに聞いたんだろう。

 ほんと驚かされるよ。


「淑次の携帯鳴ってる!」


 絶句、困惑していた俺の携帯が、けたたましく鳴っていた。


(猪木……)


『はい』

『もしもし?淑次さん。淑美ちゃんがいなくなりました!大変申し訳ない。もしかしてそちらに戻ってないかと思い連絡させて頂きました、』

『…………心配には及びません。たった今、戻って来た所です。ちょっと確認してすぐ折り返します』


 俺は一方的に電話を切り、姪っ子への尋問を始めた。


「どういう事か説明しろ」

「だって……」

「だって、なんだ?」

「おじちゃん家にね、子供いたんだって。一年生」

「は?」

(いたんだって……過去形か。聞いてないぞ)

「こないだ天国行っちゃったんだって」

「……そうか」

「そんでね、おじちゃんとおばちゃん何度も淑美の事、その子の名前で間違って呼ぶの」

「…………」

「だから天国にいるその子、私がいたら怒るかなって……だから……嫌だったから帰って来た!」

「そうか。わかった。だが、勝手に帰って来たのはイケない事だ。もうするなよ。わかったか?」

「うん!」


 これはどういう事なんだ? 

 猪木には子供がいた。

 しかし最近亡くなった。

 そして、淑美を引き取りに来た。

 おい! 明らかに代わりじゃねえか?

 俺は姪っ子が寝静まった後、怒りを隠し猪木に電話をかけた。


『猪木さん。姪っ子から離しを聞きました』

『はい……』

『あいつは何度も名前を間違えられたと深く傷ついています。あんまりじゃないですか?』

『大変申し訳ない。淑美ちゃんを深く傷つけてしまった事は大変申し訳ない』

『あいつが傷ついているのは、間違えられたからじゃない。自分の存在が亡くなったお子さんに怒られる、申し訳ないと言う気持ちなんですよ。わかりますか?』

『…………』

『ハッキリ言いますが、俺はあなたの所に姪っ子を……淑美を行かせる訳にはいきません。淑美はあなたの亡くなった娘の代わりじゃありません』

『淑次さん。今回の件はほんとに申し訳ないと思っています。ですが、淑美ちゃんの事は死んでしまった娘の代わりだと思った事はありません』

『果たしてそうでしょうか?』

『はい?』

『百歩譲って猪木さん、あなたにはそのつもりはないかも知れませんが、奥様はどうでしょうか?』

『………』

『もっと奥様とよくお話をされた方がよろしいのではないでしょうか?』

『わかりました。ですが、もう一度淑美ちゃんを連れて来て下さい。謝りたいのです』

『少し時間を下さい』

『わかりました』

『猪木さん。これだけは言っておきます。私は決心しました。この先、淑美を自分の子供として育てるつもりです。それが不服であれば、どうぞ然るべき所へ訴えを起こして頂いて構いません。受けて立ちます』


『わかりました』


 猪木の最後のわかりましたがどんな意味かはわからない。

 だが、俺は俺のやり方で淑美を守る。

 俺は寝ている淑美の頭を撫でながら涙を流していた。



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