Ep15:林間学校の真相(3日目の決着)
~3日目の朝と決意~
10月12日、林間学校3日目の朝、森の自然の家の空気は冷たく澄んでいた。
2日目の朝、大浴場でクラスメイトの田村悠斗くんが全裸の状態で遺体として発見された事件は、星見キッズに深い衝撃を与えていた。
昨夜の調査で、麻酔と消毒液を使った巧妙なトリックが浮上し、医務室と換気口が次の手がかりとされた。
警察の協力のもと、シュウたちはこの日、真相を解き明かす決意を固めていた。
宿舎の部屋で朝日が差し込む中、シュウはノートを手に仲間たちと作戦を立てた。
「昨日、麻酔と消毒液がトリックの鍵だと分かった。今日は医務室を詳しく調べ、換気口の外を確認する。田村くんのためにも、犯人を絶対に見つけるよ」
「シュウ、怖いけど…一緒に頑張ろうね」
カナエが手を握り、緊張した笑顔を見せた。
「うん、星見キッズならできる。真相に近づこう」
リナがスケッチブックを手に頷いた。
「俺、力になる! 田村くんの仇を取るんだ」
ケンタが拳を握り、気合を入れた。
「データでサポートする。トリックを解くよ」
タクミがタブレットを手に準備した。
朝食後、警察の佐藤刑事から許可が出た。
シュウたちは田中先生と一緒に医務室に向かった。医務室は宿舎の端にあり、白いカーテンと消毒液の匂いが漂っていた。
棚には包帯や薬が並び、冷蔵庫には注射器と薬剤が保管されていた。医務室の証拠シュウが冷蔵庫を開けると、麻酔薬の瓶が一つ欠けているのに気づいた。
「この麻酔薬、少なくなってる。昨夜の注射器の破片と一致するかも」
「シュウ、ボトルに指紋が残ってたらどう?」ケンタが目を丸くした。
「うん、タクミ、指紋スキャンできる?」シュウが尋ねた。
タクミがタブレットのセンサーを使い、ボトルの表面をスキャンした。
「あった! 指紋データベースと照合中…。おお、松本翔くんの指紋だ!」
「松本翔…? あの背が高くて内向的な子?」カナエが驚いた声で言った。
「うん、昨夜のカメラ映像でも、黒い服を着た背の高い人影が映ってた。松本くんが怪しいね」シュウがノートに名前を書き込んだ。
次に、換気口の外を調べるため、宿舎の裏手へ移動した。リナがスケッチブックに換気口の位置を書きながら言った。
「昨日、換気口が少し開いてた。外から何かを見張ってたかも」
タクミがドローンを飛ばし、換気口周辺を撮影した。
「シュウ、換気口の下に足跡と注射器の空ケースがある! 犯人がここで準備した証拠だ」
「足跡…。サイズは松本くんと一致するかな?」シュウが足跡を測った。
佐藤刑事が足跡を調べ、頷いた。
「松本翔の靴のサイズと一致する。証拠が揃ってきたな」トリックの解明シュウはノートを広げ、トリックを整理し始めた。
「松本くんは麻酔薬を医務室から持ち出し、田村くんを大浴場で無力化した。注射器で麻酔を打って抵抗をなくし、絞めて殺した。その後、消毒液を入れて証拠を消した。換気口から監視して、タイミングを見計らったんだ」
「でも、なぜ田村くんを? 動機が分からないよ…」リナが不安そうに言った。
「それはまだ分からない。犯人の動機は別で調べるとして、トリック自体はこれで説明できる。麻酔で動けなくし、絞めて殺し、消毒液でDNAを隠した」シュウがホワイトボードに図を描いた。
「換気口から見張ったのは、誰かに見られるのを防ぐためだね。巧妙だ…」タクミがタブレットを操作しながら言った。
佐藤刑事が近づき、言った。
「君たちの推理、素晴らしい。麻酔と消毒液の証拠で、松本翔を疑う根拠は十分だ。早速連れてこよう」
~犯人への対峙~
松本翔は、ホールの隅で本を読んでいた。背が高く、眼鏡をかけた彼は、内向的な性格で普段は目立たない存在だった。
警察に連れられると、彼は震えながら立ち上がった。その長身が、昨夜のカメラ映像の人影と重なった。
シュウが静かに近づき、言った。
「松本くん、麻酔薬と注射器の証拠が出た。田村くんを殺したのは君だろ? 背が高いし、黒い服も一致してる」
松本は目を伏せ、黙り込んだ。
佐藤刑事が厳しい声で言った。
「松本翔、黙秘権はあるが、正直に話した方がいい。証拠は揃ってる」
松本はしばらく沈黙した後、小さな声で呟いた。
「…認める。僕がやった。でも、理由は…まだ言えない」
「理由は後で聞く。まず、事件の流れを話して」シュウが冷静に促した。
松本は震える声で語り始めた。
「2日目の夜、9時頃、大浴場に田村を誘った。医務室から麻酔を持っていって…注射で眠らせて、絞めた。消毒液も入れて、証拠を消した。換気口から外を見て、誰にも見られないようにした…。僕の背の高さで換気口から見やすかったんだ」
「なぜそんなことを?」カナエが涙目で尋ねた。
「それは…今は言えない。ごめん…」松本が顔を覆い、長い体を縮こまらせた。
佐藤刑事が手錠をかけ、言った。
「松本翔、殺人容疑で逮捕する。警察署で詳しく聞く。君たち、よくやった。残りは任せろ」松本は連行され、ホールに静寂が戻った。
シュウはノートを閉じ、仲間たちを見回した。
「トリックは解けた。麻酔で無力化し、絞めて殺し、消毒液で証拠を隠した。換気口で監視も完璧だった。でも、動機が分からない…」
~被害者との関係と新たな決意~
シュウは田村くんのことを思い出した。幼い頃の記憶が蘇った。
シュウと悠斗は近所に住む幼馴染で、一緒にサッカーをしたり、桜の木の下で遊んだりしていた。
2日目のキャンプファイヤーで、悠斗が笑顔で歌う姿が目に焼き付いていた。
「悠斗…なぜお前が…。動機が分からないと、納得できない」
「シュウ、幼馴染だったんだね…。辛いよね」リナがスケッチブックを握りしめた。
「うん。でも、動機が分からないままじゃ、悠斗の気持ちも分からない。松本くんの話を聞くしかない」シュウが目を潤ませた。
カナエが手を握って言った。
「シュウ、一緒に真相を突き止めよう。星見キッズならできるよ」
「ありがとう、カナエ。警察に協力を頼もう。動機が分かれば、悠斗も安らかに…」シュウが深呼吸した。
午後、川遊びの予定だったが、事件のため中止となり、振り返りの時間が設けられた。シュウたちはホールの隅で話をした。
タクミがタブレットでニュースをチェックし、言った。
「松本くんの逮捕が報じられた。警察が動機を調べるって」
「動機…。松本くん、背が高くて静かだったのに…」ケンタが首をかしげた。
「うん、表に出ない理由があるんだろう。3日目でトリックは解けたけど、物語はまだ終わらない」シュウがノートを手に持った。
~新たな一歩への約束~
帰路のバスの中で、シュウは窓の外の紅葉を見ながら考え込んだ。
林間学校は悲しい結末を迎えたが、星見キッズの絆はさらに強くなった。
カナエが隣で言った。
「シュウ、帰ったら文化祭の準備があるね。事件のことは忘れられないけど、新しい気持ちで頑張ろう」
「うん、文化祭か…。10月下旬だよね。クラスの出し物、考えないと」シュウがメガネを直した。
「俺、ゲームコーナーやりたい! サッカーの射的とかどう?」ケンタがボールを手に笑った。
「紅葉の絵を展示するのもいいね。林間学校の思い出を形に」リナがスケッチブックを開いた。
「技術面でサポートするよ。音響や照明、任せて」タクミがタブレットを操作した。
「文化祭で、みんなと楽しい時間を作ろう。悠斗の分も笑顔で過ごしたい」シュウが決意を込めて言った。
バスは町に近づき、校舎の桜の木が見えてきた。シュウはノートに「文化祭で新たな一歩を」と書き、星見キッズの次の挑戦を心に誓った。
(Ep15 完)




