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092_人工知能

「世界のために…楽師殿に協力していただきたいことがある」


 ――せ、世界のため?


 教会で司祭を務める大男から、まるで子供のごっこ遊びのような言葉が飛んできた。私はそのセリフに目を丸くすることしか出来ない。今日は私の予想を越える出来事ばかりが起こる。想像の百倍くらい主語がでかいのだ。

 私は以前のプラナリとの一件を思い出す。ダンジョン〝トレント〟の隠しエリアを見つけた際、最深部に到達する前にこの男が現れた。彼は抵抗する私を足止めすると、見たことのない契約魔法を発動。私とラムスの魔力を用い、勝手に契約を行ったのだった。それ以来、あのチビドラゴンは家に住み着いている。

 確かにこの男に襲われた時は死ぬかと思った。それでもいきなり土下座までされると調子が狂う。私はこういう時に罪悪を感じてしまう小物なのだ。それにプラナリと対峙した際、最初に攻撃を仕掛けたのは私だった気がする。あれ、私も悪いのか…?


「と、とりあえず顔を上げてください」


「楽師殿は寛大だな」


 プラナリは顔を上げるとゆっくりと立ち上がる。この人は何がしたいのだろうか。ハイライトの消えた瞳からは何も読み取ることはできない。とにかく私は分からないことを順番にぶつけてみた。


「謝らなくていいので、質問に答えてほしいです。世界を救うってどういうことですか?」


「それは僕も聞きたいな」


 私が尋ねた時、胡散臭いフリー記者の声が響いた。そして後ろの大扉が開く。振り向くとそこにはグローフとラムスがいた。きっと奴らは歩いてここまで来たのだろう。(グローフの顔が疲れている…)それを見たプラナリは顔をしかめた。第一印象が悪かったせいか、彼はグローフに対して妙に冷たい。今から話す内容も恐らくこの記者には聞かれたくないのだろう。しかし無駄に頭の回転が速いクソ記者はすぐにそれを察したようだ。


「扉の前からでも大まかな会話は聞こえていた。リンが世界を救うとはどういう意味だい?」


「悪いが貴方に話すことではない」


 プラナリは初めてグローフに向けて口を開く。しかしこれで引くようなグローフではない。彼はいつも以上のドヤ顔でプラナリに食って掛かる。既に〝愛想よくして好感度アップ作戦〟は諦めたようだ。


「僕とリンは親友だ。ここで僕を除け者にしたところで、後で聞かせてもらうだけさ」


 ――全くもって親友ではない!


 私は驚きのあまり顎が外れそうになった。だがそれを言うと更に話がこじれそうだ。グローフの言葉を聞いたプラナリは「やれやれ」といった感じで両手を上げてみせる。先に降参したのはプラナリだった。


「楽師殿、付き合う相手は選んだ方がいいだろう。苺だって自身の意思で光合成を行うものだ」


「す、すみません」


 私はつい頭を下げてしまった。プラナリはグローフを視界の隅に追いやると、私に説明を始める。それは世界樹の青窓の掲げる計画についてだった。


「我々、世界樹の青窓はとある魔法技術を開発している。世界平和を実現するための強力な人工知能だ」


「人工知能…?」


 私が疑問を口にするとラムスが答えた。


「人間や魔物が行う知的行動を魔法に行わせる技術だ。要するに魔法が自分で考えて判断したり、学んだりするようになる。今でも簡単な人工知能はゴーレムなどに組み込まれてるぞ」


「へ、へえ…なんか凄そう」


 私はレードルと【パイ生地を生成する魔法】を開発した時のことを思い出した。あの〝魔法による自動化技術〟も凄まじかったけれど、あれの更に凄い版ということだろうか。私がうなづいたことを確認すると、プラナリは説明を続ける。


「人工知能の開発には膨大なデータが必要だ。だがそれ自体は問題ない。世界樹の青窓は世界一の巨大データベースを持っている」


「それが世界樹…か」とグローフが先回りして呟く。


 それは私にも分かった。世界樹については誰もが学校で学んでいる。勿論その役割についても一般教養の範疇である。

 そもそも世界樹とは、この世で最も広大な魔力樹を指す。具体的な数字は忘れたが、大きな都市がすっぽり入る程広大な樹木だった筈。そんな世界樹には大きく二つの役割がある。それは世界中の魔力の循環と、巨大なデータベースだ。


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