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065_戦闘の天才

 全部で三体のラージ・スライム……。


「む、無理無理無理!!」


 私は逃げた。これは戦略的撤退である。


 てか、なんで私!?


 何故かトランに来てから魔物運がない。花粉怪鳥ヘルフィーブ戦もジャイアント・マーフォク戦も最初に狙われたのは私だった。私ってそんなに美味しそうに見える!? 多分普通の女子より筋肉質だし硬いと思うけどなあ!! そう言った直後、私を大きな影が包んだ。ラージ・スライムの落下攻撃だ。

 

 危ない!!

 

 私は間一髪で潰されるのを回避する。ところが第二、第三のラージ・スライムも大きく跳ね上がった。もうこのスライム嫌!!!


「危なかった…な」


「フリュウポーチ!」


 後方から駆け寄ってきた彼女は私を抱えるとスライムの突撃を二発とも避けた。凄い筋力…彼女は私を地面に下ろすと、腰の大剣を引き抜く。

 ただフリュウポーチがどんなに強くとも、この戦いは苦戦するのではないか。大きさは強さだ。どんなに簡単な仕事も量が増えるだけで、重労働となり得る。ラージ・スライムは彼女よりずっと巨大で、その体重は二トンともいわれる。それが三体。ところがフリュウポーチは私の不安を察したかのように静かに口を開いた。


「大きさは強さでは…ない」


「え?」


「強い奴が…強い」


 フリュウポーチは一気に魔物へと距離を詰めると、大きく飛び上がった。そして落下する勢いを利用してスライムへと大剣を振り下ろす。ラージ・スライムの核は表面のゼリーごと真っ二つになった。次に彼女は魔導書を開き、緑色の魔法陣を起動した。


「テイルウィンディン」


【テイルウィンディン_追い風を生成する魔法】


 彼女の剣は風に乗って加速する。そして横薙ぎの一撃で二体のラージ・スライムを両方とも切り伏せてしまった。やはり強い! フリュウポーチの戦いを見たことは何度もある。しかしラージ・スライムの強さを知っているからこそ、彼女の圧倒的な戦闘センスを改めて痛感した。そういえば前にガーゴファミリーを訪れた際も副団長が言っていた。


「彼女は天才です。まだ剣技では私が上ですが、それも時間の問題でしょう」


 間違いなくフリュウポーチは戦闘の天才だった。私が人生で出会った二人目の天才だ。

フリュウポーチは大剣を腰に背負うと私の方を向いた。


「食べるもの…ある?」


「あ、チョコならあるけど…」


 カバンの中からチョコレートを差し出すと、彼女はそれを半分受け取った。


「これで…チャラでいい」


「あ、ありがとう」


 一先ずスライムの群れは片付けることができた。フリュウポーチに「一度ガーゴファミリーの元へと戻ろう」と告げようとした時――


「イッヒッヒッヒ、ガーゴファミリーは今日も一般人のお守りですか」


 丘の上に見覚えのある二人組がいた。片方はガリガリのノッポ、もう片方は丸々と太っている。大手冒険者――アトラスOSのカササギ兄弟だ。

 ガリガリの弟は三角形の目を意地悪く尖らせる。腰に差しているのは先日と同じレイピアだろう。太っちょの兄貴も前回同様に黒い鳥をモチーフにしたマスクを被っており、釣竿のような特殊な武器を装備していた。先々週、私たちがダンジョンでラスボスと戦っている際に乱入して報酬を奪い取ったやつらだ。私は警戒心を抱えたまま二人と距離を取った。


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