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055_vsラージ・スライム

 ――上流に向けて歩き始めて四時間が経つ。私達の前に大きく丸い池が現れた。池といっても水深は深くない。そっと水に足を付けてみると、足首まで水につかる程度の深さだ。そしてホールの中央には一匹の魔物が待ち構えていた。


  ――スライムである。


 ただし私が先日倒したスモール・スライムとはわけが違う。私の身長よりも遥かに大きいラージ・スライムだ。コイツの重さは象にも引けを取らない。体内でうごめく核もスイカよりずっと大きかった。団長があの魔物を指さして私たちの方を向いた。


「あの魔物がこのダンジョンの中ボスだ。どうする、お前らの連携がうまくいってないなら俺が倒しちまうか?」


 彼はそう告げると自身のアックスを構える。


――中ボスか…。


見た目こそスモール・スライムと同じだが、あの魔物は決して舐めてはいけない。ラージ・スライムの恐ろしさはその俊敏性にある。奴はゼリー状の身体をバネのように使い、縦横無尽に跳ね回ることが出来る。その重さは驚異の二トン。駆けだし冒険者の中にもこの魔物を「たかがスライム」と侮って死亡する事例が少なくない。


「俺いけます!」


 スワローが前に出た。


「わ、私も勝てると思います」


 私も前に出て魔導書を構えた。決してあの魔物を甘く見ている訳ではない。しかし私からすると魚人よりも戦いやすい相手に思えた。何故なら私は人間っぽい魔物が苦手だからだ。この前のダンジョンで遭遇したリザードンや、今回の魚人は中途半端に人間に似ている。(レードルのような鬼人は最早人間にしか見えない)私がお婆ちゃんから教わったのは魔物の殺し方であり、人間の殺し方ではない。そう考えるとスライム退治の方が自分を〝魔物を倒すモード〟に切り替えやすいのだ。私とスワローの答えを聞いてガスタはため息をついてみせた。


「分かった。ただし二人とも落ち着いて周囲をみろよ」


 私とスワロー、ガスタはラージ・スライムに正面から対峙した。じりじりと魔物との距離を詰めていく。スワローが更に一歩踏み込んだ時――


スライムが大きく跳ね上がった!


そして私達目掛けて飛び込んでくる。私はそれを回避すると魔導書を開き、魔法陣を起動した。


「ヴレア・ボール!」


【ヴレア・ボール_火球を放つ魔法】


 三発の下級がスライムへと被弾する。相性こそイマイチだが、ちゃんと全弾命中したことが大事だ。しかしやはりラージ・スライムは分厚い。小さなスライムなら簡単に核を壊して倒す事ができるが、今回はそうもいきそうにない。

振り向くと足の遅いガスタはスライムから大きく距離を取っていた。遠くから魔法でスライムの行動を妨害している。一方で誰よりも俊敏に動いているのがスワローだ。彼はスライムを右に左に攪乱しながら、次々に攻撃を命中させていた。彼の巧みなフェイントにスライムは全くついてこれない。


「リン、コイツは俺に任せろ! デカい奴を〝技〟で仕留めるのはスポーツの醍醐味だからな!!」


 中ボスはまだまだ体力を残している。しかしスワローもばてた様子はない。流石スポーツマン、スタミナなら私よりありそうだ。これは…本当に彼一人でスライムを倒してしまうのでは!?

 そう思った時、スワローが池の真ん中でこけた。


「ちょっと! なんかここ凄いぬかるんでる!!!」


 しかし魔物は彼の叫びなんかお構いなし。巨大スライムは大きく飛び上がると、スワロー目掛けて落下した。


あ…!!


あまりに唐突なことで私もガスタも反応できない。スワローはラージ・スライムに踏み潰された。最後に「ぷぎゃ!」って断末魔が聞こえた気がする……。


 ス、スワロー!!!!!!!!!!!!



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