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036_魔法陣のリリース


 やっとガスタ、レードルとスイーツ店――アップルジャムに到着。きっちりと店のドアを閉じると、私とガスタはヘナヘナと膝をつく。ここまで本当に長かった。これで花粉ともおさらばである。

 魔物に襲われたとはいえ、想定の時間を大幅に過ぎてしまっている。それでもリリースは予定通り行うようだ。これが社会人である。(ちなみにガスタの水属性魔法で身体に付着した花粉は洗い流した)


「今日のリリースは僕が行うから、君はちゃんと見ておくように」


 ガスタに促されて私はペンとメモ帳を用意した。いつもより喋り方に棘が少ない気がする。二人でリリースの準備を行っていると、レードルがアップルジャムのゴーレムを連れてきた。ついに作業開始である。

 ちなみに魔法陣の多くは魔導書に登録して使うことを想定している。しかし一部はゴーレムや武器、人体(皮膚)などに登録して扱う。確かガーゴファミリーの大盾使い――バーナは自身の盾に魔法陣を焼き付けていた。こうすることで魔法と武器の合わせ技を編み出したり、今回のようにゴーレムに魔法を使わせたりすることが出来る。また魔導書と違ってページをめくる必要もないので、大切な魔法陣を持ち物に焼き付ける人もいるそうだ。

 ガスタは迷いなく登録作業を進めていった。まずはアップルジャムのゴーレムの設定を事前確認する。この段階でトラブルが見つかれば当然リリース作業は出来ない。責任の所在を明確にするためにも必要な工程である。


「ダブルチェックだ。君も確認してくれ」


 私も彼に言われるまま、ゴーレムの設定を確認した。そして問題がないことを確認すると、ガスタは自身の魔導書を取り出す。彼は魔導書から【パイ生地を生成する魔法】の魔法陣を起動した。そして魔法陣についても最終チェックを行う。もしものことがあってからでは遅い。あらゆる観点から確認作業を行う訳だ。私もガスタの横でダブルチェックを行う。多分、大丈夫…。


「よし、事前確認は大丈夫だ」


 チェックが終わると今度こそリリース作業。ガスタは特殊な魔法を用いて、魔法陣をゴーレムに焼き付けた。(これらは全て魔導書に組み込まれた開発魔法を用い行われる)ゴーレムの背中にチリチリと魔法陣が刻まれていく。下から順番に魔法陣が焼き付いていき、少し焦げたような匂いがした。


「よし、これで登録は完了だ」とガスタ。


 魔法陣が完成すると、表面の刻印が一瞬だけオレンジ色に輝く。これで登録の工程は完成らしい。

 ガスタは再びゴーレムの設定を表示。今度は事後確認らしい。彼はリリース前後の設定を比較すると正しく変更が行われていることを確認した。そして先ほどと同様に私にもチェックを促す。


「事前と事後では確認観点が異なるから気を付けろ。それから余計な箇所が変更されていないかもチェックを怠るな」


 確認作業が全て終了し、やっとリリース作業は完了した。後はテスト時、実際に魔法を使ってみてのお楽しみである。ガスタはマッシュにリリース完了を伝えに行った。手持ち無沙汰となった私は厨房をぐるりと見て回る。いつの間にか数人のパティシエたちが忙しそうに働いていた。その中には既にレードルの姿もある。今日ってお客様来るの…? そんな疑問を抱いていたらガスタとマッシュが戻って来た。


「リン、今から魔法陣のテスト作業を行うぞ」


「あ、はい」


 この後、何かあるのだろうか?


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