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214_vs配列凱蟲デスワーム

 私たちは咄嗟に前方へと駆けた。いつの間にか「ミシミシ」と洞窟が軋む音が聞こえている。最初こそ遠くから小さな音がするのみだったが、それはドンドンこちらに近づいて来るではないか。振り返った私は、思わず叫び声を上げた。


 ――巨大なムカデだ!


 汽車より大きなそれが一直線にこちらへ向かってきている。 デカい! 速い! キモイ! 虫が大丈夫な私でも流石に引く!! コイツがこのダンジョンのボス、配列鎧蟲_デスワームだ。

 今は五十メートルほど後方だろうか、どんどん距離を詰めてくる。ヤバい、ヤバい、ヤバいって! 私達三人は全力疾走した。こんなの聞いてない! 私は思わずアロエスにかみつく。


「あ、あれがボスモンスター!? ここボスエリアじゃないですよね!?」


「知らない! ボスがデスワームってこと以外は調べてないもの」


「なんで!?」


「何事も出たとこ勝負。そういう意識が盗賊シーフとしてのアドリブ力を養ってくれるものよ」


「じゃあ、なんとかしてくさいっ!」


 私達の小競り合いにミストが割って入る。


「おい、すぐそこまで迫ってきてる!」


 振り向くと後方、十メートルくらいのところにムカデの頭がある。なんならちょっと人面風の顔。全身から鳥肌が立った。


 ――うぉおおおおい!


 私達は全力でスパートをかけるも、魔物も更にスピードを上げる。ダメだ、もう追いつかれる。残り三メートルもない。


「あれを見ろ!」


 ミストが前方を指さした方向、トンネル状の洞窟に終わりが見える。向こう側がどうなっているかは分からない。が、そんなことを考えている場合じゃないっ。


「とにかくあそこまで走――」


 そう言いかけた瞬間、私達は勢いよくムカデに追突された。勢いよく弾かれて、一瞬意識を失いかける。前方に空間があって本当によかった。地面に叩きつけられ、全身が痛むけど。


「痛ったい…」


 気が付くと私たちは大きな円形ホールの中にいた。先ほどまでの洞窟と違い、非常に天井が高い。至る所に光る水晶が生えているお陰で、視界は十分に確保することが出来た。ここが本物のボスエリアだろう…。


 ――私達の前には巨大なムカデ魔物が立ちはだかっている。


 首をもたげる姿は巨大な蛇や龍のようだ。頂上の頭には水晶の光が届かず、巨大なシルエットが威圧的に映る。配列凱蟲デスワーム…二十メートル近い身体と、そこから生えている無数の脚は鳥肌もの。こんなのどうやって倒せば…。しかもこれはアロエス達にとっても想定外の状況らしい。


「アハハ、今回はダンジョンを間借りさせてもらうだけで、ボスと遭遇する予定はなかったんだけどねえ…」


 弱った、これは三人で挑む規模じゃない。しかも盗賊二人と、魔法使い一人という偏りのあるパーティ。さらに言えば、私の手持ち魔法の少なさも問題だ。このメンツで戦う場合、素早い盗賊二人が魔物の気を引き、私が強力な魔法で仕留めるのがベスト。だが今の私に強力な魔法はない。せめて【メガ・ヴレア・ボール_大火球を放つ魔法】があれば…。


「リン!」


 直後、アロエスが私に向かって何かを投げた。魔導書だ。私はそれをキャッチすると、ページをめくる。


「こ、これって…」


 懐かしい香りがする。それは先日盗まれた私の魔導書だった。


「一時的に返してあげる。あのクソ蟲にかましてやりな」


「仕方ないですね…分かりましたよ!」


 彼女の指示通りに動くのは少し癪だが、背に腹は代えられない。私は魔導書をめくり、すぐに【大火球を放つ魔法】を起動しようとする。ところが――


「あ、あれ…【大火球を放つ魔法】がない?」


 【火球を放つ魔法】なら登録してあるが、【大火球を放つ魔法】が見つからない。どうした私、焦っているのか? 私は再度ページをパラパラとめくる。するとアロエスが「あっ…」と小さく声を出した。


「その【大火球を放つ魔法】ってやつは闇市で売ったな。そこそこ金になりそうだったから…」


「じゃあ意味ないじゃん!!」


 私は思わず特大のツッコミを入れた。もうヤケクソである。確かに私の【大火球を放つ魔法】は闇市で売られていた。それに気が付いた自警団のブリック、タランチがワークツリーに乗り込んで来たんだったな…。積んだかもしれんでやんす。



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