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210_元凶

 あの日、ユニは死神安置デッドロックを退けた。

 魔物の力は脅威的だったが、鍛錬を積んできたユニの実力が勝ったのだ。彼女に敗北したデッドロックは逃亡。ライブハウス――バッファ1024の屋上へと逃げ出した。私とユニは魔物を追いかけて階段を上がる。私はラムスの「人の感情データを吸収する力」があれば、負の感情に包まれた死神魔物を開放し、人に戻せると踏んでいた。

 ところが天井に上がった時、既に死神安置デッドロックは戦闘不能となっていた。正確には世界樹の青窓を憎む記者――グローフの手に落ちていたのだ。彼は【強制契約の魔法】を使い、弱ったデッドロックを自身の駒にする。グローフの主張に対して、私は反論し切ることができなかった。


「君こそ分かっているのかい。あの死神は君の同期――ランチュウ君とは根本から異なる。君の同期は望まない形で魔物化したが…あの男は自分の意思で魔物になった。そこに責任は生じないのか?」


 目的を果たしたグローフは死神魔物と共に姿を消し、私とユニだけが残る。ここまでがあの日のエピソードだ。


 ――で、どうして私が黒い魔法陣を持っていることになるのだろう。

 

 私は改めて思考を回す。最初に犯人の男が魔物化した時、彼が黒い魔法陣を持っており、その発動を多くの観客、ライブ関係者が目撃した(私もその一人)。戦闘中もデッドロックは黒い魔法陣を持っていたはずだ。そして決着がついた後、私とユニは屋上に逃げた奴を追いかけた。なおグローフがあの場に居たことを知っているのは、私とユニだけ。ということは…私の中でパズルのピースがピタリとはまった。

 つまり会場にいた人の視点では、魔物と最後に接触したのは私とユニなのだ。そしてユニは魔導書を持っていなかったから、魔法陣を持ちだせない。だから私が疑われている。アロエスの言う〝さるお方〟も、盗賊達に対して「リン・ツインラから黒い魔法陣を奪え!」と依頼したのだ。どうして自警団ではなく、盗賊を使ったのかは分からないが、それは一旦置いておく。今大事なのはそこじゃない。ここまでの話を整理すると、全ての元凶って――


「グローフ…だよな?」


 私は誰に言うでもなく呟いた。


 私の魔導書が盗まれたのも、


 魔導書紛失でミラーに怒られたのも、

 

 ストレスで眠れない日々を過ごしたのも、

 

 休日返上で事情聴取を受けたのも、

 

 初めて始末書を書いたのも、

 

 残業が増えたのも、

 

 自腹で新しい魔導書を購入させられたのも、

 

 その過程でホブゴブリンと戦ったのも、

 

 自腹で【紛失防止魔法】を購入することになったのも、

 

 アキニレに悲しい目で見られたのも、

 

 ガスタに中二病チェーンで弄られたのも、

 

 残業が増えたのも、

 

 アロエスに襲われたのも、

 

 今盗賊団に捕まっているのも……


「全部、アイツのせい…?」


 真っ赤な怒りが込み上げてきて、頭がチカチカする。「腹立たしい!」を通り越して、脳の処理が追いつかない。グローフをタコ殴りにする自分をイメージし、辛うじて自我を保った。あの男の後頭部に強力な一撃をかまし、巨大カエル魔物のエサにする。いや、それだけじゃ足りない。浮遊魔法で奴を天高く打ち上げよう。グローフを目に見えない程小さな点、いや、星にすべきだ。


 ――だってこれは……あまりに、あんまりだ。


 最早あの男に悪意があったかは関係ない。結果が全てなのだ。私は髪を掻きむしり、洞窟の天井に吠える。それは言葉にならない叫びだった。


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