195_事情聴取
自警団二課の人たちはタイプこそ様々。だが、人とぶつかる事に抵抗が少ないように見える。世の中色んな人がいるな。私だったら同じチームの人間とは揉めたくない…。そんなことを考えていたら、取調室についてしまった。部屋に通されると、私の緊張は二割増しとなる。
部屋には四人がけのテーブルが設置されており、私は奥の椅子に通された。そしてドア側にブリック、タランチが着席する。二人の自警団員と向き合うと、途端に昨日のやり取りが蘇ってきた。報連相を渋ったことは激しく後悔している。あの始末書も早く修正しなくては…。私が陰気な顔をしていたら、タランチが顔を覗き込んできた。
「リンちゃん、まだクヨクヨしてるんです? 可愛いお顔が台無しですよ~」
「あ、いや、すみません」
「アナタが会社から怒られちゃったのは、盗難にあった後の対応です。盗難自体はアナタが被害者ですから。もし貴方が今回の件で憤りや、罪悪を感じているのであれば、むしろ積極的に事情聴取に参加してください! ね、ブリック課長!!」
「…まあそんなところだ」
それはミラーにも言われた…。
「あんまり敬語がお堅いと、ブリック先パイみたいになっちゃいますよ?」
ブリックは私に気を使っているのか、彼女の発言をスルー。そして肝心の私は、その発言を肯定も否定もし損ねた。だって肯定したら、ほぼ初対面の強面鳥人を弄ることになる! そして否定すればギャルのノリに乗れなかった奴になる!! 結果、ヘラヘラと笑うことしか出来なかった。ところがタランチは更に会話を広げようとする。
「ブリック先パイは毎日のようにソル課長につっかかるんですよ~。特に凄かったのは自警団のOB会の時ですかね」
「OB会…ですか?」
「そうそう、年に一回、課長クラスの団員とOB団員が会食をして、OB様のありがた~いお話を聞くだけの時間なんですけど~」
「は、はあ」
ああ、そういうのってどこにでもあるんだな。タランチの喋り方から察するに、あまり楽しいイベントではないのだろう。
「それをソル課長がサボっちゃって」
「ええ…!?」
私の驚きに対して、彼女はすぐにフォローを入れる。タランチはけっこうソルに懐いている印象。一方のブリックは当時の記憶を思い出して、ため息を吐いた。
「あ、でも厳密にはサボりじゃないです。実はソル課長、沢山の部下を巻き込んだBBQ会を企画していて、そちらを優先したんですね~。まあ自警団員は一緒に休日を取れる事なんて滅多にありませんし、課長は『OBより一緒に働く同僚を優先すべきだ!』って」
「それは…大丈夫なんですか?」
「OBはそりゃもうカンカンでした! あと私達、二課は課長の味方ですが、ブリック先パイだけは怒り心頭でしたね~。この人はOBと仲良しですから」
「あれは奴に非がある」
ブリックは簡潔に告げた。でも明らかにイラっとしてる。
「そんな訳で二課じゃ〝横の繋がり〟のソル課長と〝縦の繋がり〟のブリック先パイが毎日ギンギン・ギラギラしてるんですよ。二人の仲裁手当が欲しいくらいですね~」
「あ、あはは…」としか言えない私。
「その辺にしておけ、タランチ。お前の提出する報告書が倍に増えるぞ」
「はーい…」
ブリックは苦々しい顔でタランチを睨みつける。彼女は反省した顔で頭をペコリと下げるが、その後も度々先輩のことをイジった。どうやら無敵らしい。っていうかこれって事情聴取だよな…。恐らくタランチは私のために軽口を叩いてくれたのだろう。仕事とはいえ、陰の者に優しいギャルだ。
事情聴取は昨日と同様、状況確認がメインだった。魔導書を紛失した日の行動を細かく確認される。時間や場所、会った人など…。私もできる限り詳細に答えたつもりだ。特に詳しく聞かれたのは遭遇した人物。化粧品売り場の女性店員と、レストランで遭遇したローリエについて事細かに尋ねられた。
――意外と自分の行動って覚えていないもんだ…。
レストランで「注文したメニュー」という、クソどうでもいい部分が思い出せず、随分と二人を手間取らせてしまった。絶対捜査に使わない内容だと思う。が、私が必死に思い出そうとするから…「もういいです」とは言い出せなかったのかもしれん。そして二時間後、無事に事情聴取は終了した。




