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097_新規の案件

リンの日記_五月十二日(月)


 今日からまた一週間が始まる。私とアセロラは出社すると、四人掛けの丸テーブルで作業を始めた。ガスタは基本一人席で仕事をするが、朝礼の時間になるとこっちの席に移動してくる。

 私達アキニレチームは毎朝、朝礼を行なっていた。具体的にはそれぞれの抱えるタスクについて進捗や課題を共有するのだ。といっても今のところ私とアセロラには大した仕事はない。基本的にアキニレ、ガスタがメインで進捗報告を行い、私達は研修で学んだ内容を報告している。これから出来る事を増やしていかねばな…。

 ちなみにアキニレは朝礼より先に幹部ミーティングにも参加している。そちらのミーティングが終わり、彼が二階に到着したらアキニレチームの朝礼が始まる形だ。


「あ、アキニレ来たよ」とアセロラ。


 私達二人は揃って立ち上がった。今日は先週の歓迎会について幹事のアキニレにお礼を伝えるミッションがある。彼は「おはよー」と挨拶しながら席に着くと、眠そうに目を擦った。既に幹部ミーティングに参加している筈だが、アキニレは毎朝こんな感じだ。そんな彼に対し、まずはアセロラが前に出る。


「おはようございます。先週は素敵な歓迎会を開いていただき、ありがとうございました!」


「ありがとうございました!」と私も後に続く。(ズルいとは言わないで!)


「お、楽しかったー?」


 アキニレはこういう時でも自然体で全然偉そうにしない。彼の視線が偶然私に向いたので今度は私が口を開いた。


「はい、色々な話題で盛り上がれたので――」


 そこまで告げて、私はフリーズする。「盛り上がった」と言い切っていいのだろうか。個人としては盛り上がったつもりだが、それは私の主観でしかない。客観的に見て「本当に盛り上がっていた」…か? 面倒な自分がムクムクと顔を出すので、私は慌てて自分の発言を訂正した。


「色々な話題が話せて〝楽しかった〟です!」


 これなら良しだ。自分のこういった性格は本当に厄介で、残念だと思う。

 三人で談笑していると、離れた席からガスタが歩いてきた。もうこんな時間か。私達三人もいつもの丸テーブルへと腰を下ろす。朝礼のスタートだ。


「今日は新しい仕事を貰って来ましたー!」


 すぐにアキニレが右手を上げた。妙に機嫌がいいな。(まあ彼はいつも楽しそうな顔をしてはいるが)そんなアキニレを見たガスタは「ゲッ」って感じの顔を作ると、「どんな仕事ですか?」と彼に説明を促した。アキニレはニヤリと口角を上げる。


「面白い仕事だよ。ミラー班とジャンケンに勝ってゲットした」


 それを聞くとガスタは更に渋い顔になった。「アキニレがこういう事を言い出すのは厄介事を持ち込む時だ」と顔に書いてある。しかしアキニレはそんな彼の変化に気づく様子はない。そして一枚のポスターを取り出すと、私達の前で広げ始めた。


「じゃん、ライブ演出のお仕事です!」


 ライブの…演出? 私とアセロラはポスターを覗き込むと「あっ!」と声を出した。そこには見覚えのある名前が大きく記載されている。


〝プニぴょこ王国のユニ、ワンマンライブ開催〟


 ゆ、ユニのライブに関する仕事だ…。私は驚きのあまり呆気に取られていた。アキニレは丸まりそうなポスターをしっかり伸ばしつつ、今回の業務について説明を始める。


「見ての通り、アイドルのライブ演出を依頼された。このライブでは魔法で光や音の演出をするそうだ。その魔法陣開発を僕らアキニレ班が担当する予定だね」


 こんなに上手い話があっていいのだろうか。都会って凄い。私はとにかく大きく首を縦に振った。それを見たアキニレは嬉しそうに頷く。一方で私と対照的なのはガスタだ。彼は苦虫を噛み潰したような顔をしている。何だ、貴様。何が不満だと言うのだ。


「エンタメ系はヤバいぞ…」


 ガスタは小さくこぼした。しかし彼があれこれ言ったところで意味はない。既に決定事項なのだ。アキニレは全員のスケジュールを確認すると、朝礼の締めで以下のように告げた。


「今回は俺たち四人で仕事にあたる。実はこういった機会って珍しいし、気合を入れて取り組もう」


 彼の言葉に私とアセロラは「おー!」と右手を上げる。私にしては随分浮かれているのだろう。ガスタも「しょうがないなあ」といった具合に頷いてみせた。アキニレの言う通り、アキニレチーム全員で仕事を行うのは初めてだ。足を引っ張らないように全力で挑みたいと思う。


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