2.私の現況
この世界の私の母と父は食事処を営んでいる。
うん、ゲームの設定と同じでまた一歩ヒロインに近づいたわ…。
私の首が座ると、母や父は交互で私をおんぶして仕事をするようになった。
自分で言うのも何だけど、愛らしく天使のような容姿の私は、食事処のちょっとしたアイドルだ。
私がお客に愛想を振り撒くと、私のファンのリピート率が上がるので店の売上に貢献出来ていると思う。
毎日両親に連れられて店に出るお陰で、色々な人の話が自然と耳に入り、少しはこの世界を知ることが出来た。
最近の話題は、私より少し前に生まれたこの国の第二王子ことゲームの攻略対象者、ルドルフ・ラシヴィア殿下だ。
この国には10歳になる第一王子がいるが、漸く念願の第二子であるルドルフ殿下が誕生され、国を上げての祝賀ムードとなっている。
ゲームでは第一王子が王太子になっていたはずだが、その存在は匂わすのみで名前すら無く、ゲームの蚊帳の外だった。
まぁ、ゲームパッケージで攻略対象者達の中心を陣取る王道ヒーロー・ルドルフ殿下が劣等感を抱くのだから、相当優秀な兄だったのだろう。しらんけど。
余談だがルドルフルートではヒロインが彼を励ますのだが、私は励ますどころか関わらない気満々である。
とりあえずは今後の悪役令嬢さんの活躍に期待しよう。
話は戻るが、ルドルフ殿下の誕生を祝う為に他国からの使節団が続々と入国しているようだ。
護衛として冒険者が雇われていることも多く、食事処にはそんなガチムチから細マッチョ、グラマーからスレンダーまで幅広い冒険者が来店してくれて繁盛している。
多種多様な人や装備は、見ていて楽しい。
彼らを見てニコニコしているせいで、冒険者にも人気者な私だ。
仮に私がヒロインだった場合、こんなに繁盛している店になのに、何年か後には何故か経営が苦しくなるはずだ。
そんな時に、たまたま平民の食事処を訪れた男爵夫妻が、私が魔力を持っている事を見抜いて養子縁組を持ちかける流れだったかな?
うちの食事も気に入ってくれて食事処も支援してくれるとてもいい人達。
…なんだけど、この世界で私が彼らに関わる予定はない。
赤ん坊だけど立派に隠匿魔法が使えるので、本来の魔力やステータス値はしっかり隠している。鑑定系のスキルを持っている人が見ればただの赤ん坊の数値だ。
私より諸々の能力が上の人ならば、偽のステータスを看破できると思うけど、それが可能なのは神様か魔王くらいじゃないかな。多分。
兎も角、我が家の危機は私が救う!
人の手など借りなくても問題なし!
ふんす!と、注文をとっている母の背中で鼻息を荒くしていると、客席の少年冒険者が私を覗き込んできた。
「わぁ…この子天使なの?女将さん、この子何て名前?」
「あら、娘を褒めてくれてありがとう!この子はアリスって言うのよ」
「こんにちはアリス!僕はエミリオって言うんだ、宜しくね!」
私の手をそっと握って挨拶してくれる男の子に愛想笑いしつつ、頭の中でゲームに登場するキャラクターを必死に思い出していた。
(エミリオエミリオ…そんな名前、攻略対象にも脇役にも居なかったよね…。て、事は、完全なるモブ!よかった〜!)
それでも何かのフラグを立てたら困るので、眠いフリをしてこれ以上関わらないことにした。
そのまま本当に寝てしまったのは赤ん坊だから仕方ないよね。




