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10.シャロン・カリバ



「えーっと…まず最初に確認なんですが、あの文字を使われたということはシャロン様は転生者なんですよね?」


「ええ、そうよ。前世でやってたゲームの悪役令嬢と同姓同名だし、状況もそっくりだと気付いたときにはどうしようかと思ったけどね」


先程までのシャロンとのギャップがエグい。貴族としての礼儀作法その他諸々をこの世界で身に付けたのだろう。貴族のご令嬢は大変だ…。

私、つくづく庶民でよかったわ。


「あー、分かります。私も名前や境遇が知ってるゲームのヒロインそっくりだったかどうしようかと思いました。私、ヒロインなんて柄じゃないので…。

そんな訳で先程の答えですが、ルドルフ殿下のことは何とも思ってません。

ゲームをしてる時はトキメイたりもしましたが、それは他の攻略対象にも言えることですし。そもそも私、箱推しなので。

それから将来は冒険者になるつもりなので、ルドルフ殿下や他の攻略対象に関わる気はないですよ」


「そっかー。まぁ、この世界は前世でやったゲームにそっくりだけど現実(ゲームではない)世界だって認識しているから、間違ってもゲームのシナリオをなぞろうなんて私も思ってないしね。

実は私、ルドルフ推しなんだけど今は恋愛云々はなくて、ちびっこい殿下を親戚のおばちゃん目線で愛でてる感じかな〜」


「殿下、めっちゃかわいいですよね〜!本編では見ることの出来ない姿を見ることができて眼福です!」


「でしょでしょ!」


シャロンは此処ぞとばかりに推しの可愛さと推しへの【愛】を私に語ってきた。久しぶりなこの感じ、楽しい!

こんなふうにシャロンと『キャッキャウフフ』するなんて夢にも思わなかったわ。人生何があるかわからない。


ともあれ、シャロンがルドルフの婚約者なのはシナリオと変わらないので、このままいけばシャロンが王子妃になるのは間違いないと思う。

きっと二人は上手くいくだろう。

ちなみにシャロンは享年29で私より一つ上。お姉様と呼ぼうかしら(笑)


あ。

そういえばシャロンにはお兄さんがいて、確か攻略対象だったよな…名前はデュランだっけ。

気になったので「お兄様とはどうなん?」とシャロンに訊いてみたら「まぁまぁうまくやってるよ」と返された。


デュランはゲームではよくある設定『幼少の頃から悪役令嬢たる振る舞いをする妹を嫌い、ヒロインに傾倒する黒髪長髪クール系イケメンキャラ』だったはず。

今のシャロンが下手こく事はないと思うので上手くやってるのだろう。

デュランの幼少期を見てみたい気もするが、まぁそれは追々でいいかな。


シャロンとの会話を楽しみながら絶品スイーツを堪能していると、何やら部屋の外が騒がしい。


(この遮音の魔道具、外部の音が聞こえる優秀仕様なのね。さすが公爵家の代物だわ)


魔道具に感心していると、シャロンが「はぁ〜」と溜め息をつきながら眉間にシワを寄せつつ魔道具を切り、可愛らしい巾着に仕舞った。

騒いでいる声は徐々に近づいてきているみたいで、とうとうこの応接室の前まで来たと思ったら、扉が バンッ!! と開かれた。


「心優しい我が妹を誑かした平民の女というのはお前か?」


執事の人が止めるのも聞かず、突撃してくる黒髪の少年。どう見ても幼少期のデュランだ。

ひどい言われようだけど、彼の気持ちもわかる。

私の身元が割れてるとはいえ妹が平民と会ってればお兄ちゃんは心配するよね。

…ん? 心配?


(あっ…(察し))


「あらお兄様。(わたくし)、お兄様をお茶会にご招待した覚えはございませんが?

それに、お部屋に入るなり私の大切なお友達を愚弄するなんて…。

たとえお兄様でも許しません。ご令嬢に謝罪してくださいませ」


シャロンの冷ややかな声で室内の温度が急降下する。

デュランの暴言なんて気にしてないけど、空気を読んで黙っておく。


そして始まるカリバ兄妹の応酬。

軍配がシャロンに上がるのは予想通りだったが、彼女に対してこんなにもデュランがイエスマンだとは思わなかった。


「アリス嬢、先程は大変失礼した。我が妹を愛する余り、貴女を誤解していたようなのでどうか許してほしい」


「公子様、どうか頭をお上げください!許します、許しますから!」


もうホント執事さん達の視線が痛いからやめて!

私の必死の懇願にデュランはようやく頭を上げてくれた。

ホッとしつつシャロンに視線を送ると、彼女は私にだけわかるようにサムズアップしてきた。いや、意味不明だし。


察してはいたが、デュランは妹溺愛キャラ(シスコン)にキャラ変したようだった。

おそらくシャロンの努力の賜物だろう。

その辺も詳しく訊きたがったが、お茶会を仕切り直せる雰囲気でもなさそうなので、私は御暇させてもらうことにした。



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