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阿修羅天世(改稿中)  作者: 鈴政千離
第三章 幽霊列車編
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第36話 燦然たる力

 ジンにとって、莽薙刀華はラハードを殺した敵討ち程度。

 後は半分遊んでいるだけだった。

 思い出したが摂儺を奪取する任務もあった。

 

 目前の敵に対して戦いが遊戯に見える。

 生死など、相手の力量が説く冗談。


 だが、さっきの攻撃は効いた―――。

 ラハードを殺したのは、心羅と呼ばれる人間がいたせいだ。

 共鳴の力も、あの刹那のみ。

 あの一撃だけは、どしがたい。

 

「がふッ……」


 明らかな致命傷を与えた。

 にも関わらず、刀華の額は血塗れ倒れていた。 


「窮鼠猫を噛むってかァ……。苦し紛れでの、精一杯での、やっとの一撃が嬉しいかァ雑魚ッ」


 攻撃を受け、〇距離でジンは斬撃を放ったのだ。

 手刀を黄金に染め上げた魔法―――〝栄光鷲潰ルガン・アドラ〟。


 その一刺しで勝負がついた。

 圧倒的なまでに。


「まだ……俺は死んでないぞ」


 刀華は立ち上がり、妖刀を構える。

 呼法で全身に妖気を巡らせ、神経を研ぎ澄ます。

 

「出雲捌身流!! 陸段―――〝馘円斬・輪刃〟」


 段平な電光石火。

 車輪の如き円を描く刃が三枚もジンへ強襲される。

 それらを魔剣で弾いた刹那、冷気が炸裂した。


「〝凛〟!!」


 炸裂した冷気は〝寒〟を付与したもの。

 媒体とし冷気斬撃を下ろすも、ダメージが浅い。

 タフというより、権能による守りだろう。

 ここまで来れば、流石に分かって来る……。


小細工トリッキーな事、すんじゃねェか。―――似合わねェなァ!!!!」


 武具を薙刀に魔剣を捌き、今までとは一変し壁へと激突させらる。

 威力が上がっているが、なるほど。

 随分鈍足だと思ったがそれを引き換えに全体的な火力が馬鹿げている。


 ただの魔力展開とは違う。

 

 ジンの唱えた魔法。

 ―――〝栄光投資レオ・アドラ


 呼法、そして万画一臣を大太刀に刀華は接近した。


 ジンの扱う剣術、獅子十刀術―――速度に特化した剣法。

 ただでさえ重い魔剣、それを膂力に物を言わせ神速に振るっている。

 刀華は気づかずにいるが、これは異例であった。

 純粋な『生物』として、ジンは莽薙刀華より遥か格上。


 出雲捌身流による刀華の舞がジンと衝突する。

 剣術において刀華は間合いに警戒しつつ、防衛に力を入れている。

 今まではそれでよかった、だが現状それは成立していない。

 火力、圧倒的な火力だ。刀華の横腹へ微かな斬撃が襲う。


 万画一臣を籠手に変換。

 ジンの魔剣を強引に受け止め、空いた右腕へ拳にまで妖気を流し込む。

 刹那にして、土手っ腹に打撃を通した。


「〝月詠楽華〟……!!」


 華の開花した衝撃波が背中に、剣術を武に降ろした超打撃がジンへと入った。


「がかァ……!! ははっはは!! ははっははは、全然効いてねェンだよッッ!!!!!!」


 魔剣が振るわれ、それを踏みつけ冷気で一瞬地へと留めさせる。 

 万画一臣を刀へと変換を戻し、空いた胴体へ流し込む。

 

 今になって、この瞬間になって、勝意の言ってた事が分かってきた―――。

 段々、万画一臣が理解できる様に、でも、もっと貪欲に知りたいと思えてくる。


「幻術!!〝龍尽泰覇りゅうじんたいは〟……!!」


 一度振るった兵刃から、爆音と共に五連の斬撃が入り込む。

 それをジンが受け止め、刀華の腹を蹴とばし魔剣による斬撃を穿った。

 扉へ激突し、開門される。

 また別の座標へ飛ばされる前に、接近し魔剣をかぶり落とした。

 受け流すも、一つのだだっ広い大壁へと埋められる。

 斬撃による追撃を弾き、呼法と共に体制を立て直した。


「かなり跳んだなァ。軽ぃ、軽ぃ。幻術か、そう言やぁそンな物もあったなァ」


 万画一臣の強みは想像が働く限りの、武具、兵器に変換できる点。

 刀華の放った幻術は本来の形状である刀に戻す必要があるが、斬撃を一振りで五連撃穿つ。

 また一振りすれば五連撃。

 最大値はまだ未知数だが感覚として三〇もいけば御の字と刀華は感じる。


 変換される五つの斬撃。

 少し、妖刀が成長した気がした。

 刀華に合わせるかの様に、応える様に。


「ンらァッ!!!!」


 金色の魔力展開が魔剣に跳躍し、冷気と黄金による斬撃が迸る。

 呼法のリズムが狂い、疲労困憊に尚も立ち上がる。

 ラハード程ではないが、流石に今までに無い感覚だ。

 本当に、死ぬ気がする。


「―――〝栄光鷲潰ルガン・アドラ〟!!」


 金色の貫手、それが刀華の身体を射貫き地へ激突させる。


「雑魚が。随分タフだが、オレの相手にァならねェ……」


 倒れそうな中、膝をつき揺れながら敵を睨む。


「……摂儺せつなっ!!」


 乾いた声、精一杯に刀華が叫べば、空間が捻じれ妖刀が顕現する。

 その柄を掴み、刀華は覚悟を決める。


 阿修羅を封じた天下無双七英神将『摂儺』。

 本来この国に足を踏み込んだのはそれが理由だ。

 既に持ち主の莽薙刀華は死亡寸前、野伏遺跡とやらでわざわざ貴重な召喚石を使わなけりゃよかったと後悔する。


 闊歩ながら、とどめとばかりな足をジンは止めた。

 またしても、ジンは笑みする。

 まだまだ、どうやら、どうやら、莽薙刀華は死んでいない。

 龍特有のタフネスからきているのか。

 息があるのなら、戦いがまだ楽しめるのなら精一杯に殺す。


「おぃおィ……しつけェ奴だな、最高か。まだ、あンのか。少ししつけェ、あァ……しつけェが、まァどうせこっから出れねェしなァ。いたぶる玩具にしちゃ、優秀かァ? ほら、動けよ、殺すぞ? 雑魚、鈍間、ゴミ、三下ァ!!」

 

 ラハードが横にいれば、もっと面白かったろうに。

 自然に何故かジンはそう思った。 

 普段は思いもしない、いなくなって深く感じる。


「魂の共鳴ッ……!!」


 こんな場面で使いたくはなかった。

 でも、使わなきゃ絶対ここで死ぬ。

 瑠瑠に教わったんだ……いける……!!

 

 急に生まれた爆発的な妖気に、ジンも笑みながら警戒する。


(―――なんだ、お主。使うのか)


 妖気を全身に巡らせた。

 魂の共鳴、時間制限付きだが得られるメリットもある。


 己の術は使用不可、代わりに共鳴した者の術、妖気量の支援が得られる。

 デメリットは使用後にくる疲労でとてもじゃないが現状、戦える状態では無くなってしまうこと。

 つまるとこ、刀華の中では奥の手に近い物だった。

 

 ―――共鳴を使う以上、絶対に負けてはいけないのだ。


「本能か知らねェが、咄嗟の龍気。幻妖の血とはァ驚いたが、弱けりゃァ意味がねぇ。心臓を蹴とばしたがァ、胴体から浮かねェって事ァ中々タフじゃねェか。まぁ当然か」


 死体が降って来ると思ったが、そのままジンの前に刀華は落下した。


「―――『鬼神』〝阿修羅モード〟」


 共鳴の力が刀華へ降り注ぐ。

 二本の鬼角、淡い紅眼に太陽を思わす金色の紋様が身体に刻まれる。

 これで決める、決めなければ死、それが何度も刀華の脳を循環していた、支配していた。

 

 刀華の両腕や胸に鱗が纏われる。

 妖気展開に〝炎魔〟を纏わせ摂儺を構える。

 

 瞬間、術を唱え灼熱がジンを襲うもノーダメージ。


「龍気……そンで炎。おもしれェが、火力が足ンねェなァァ!!!!」


 〝栄光アドラ


 魔剣に金色が纏われ、ジンが接近し刀華も兵刃を振るい轟轟と空気が揺れる。

 摂儺に纏われた〝炎魔〟が、ジンの金色を溶かし傷を与えた。


 戦える、攻撃が通っている……!!

 術の相性!?


「〝炎魔・馘円斬〟!!」


 無数の攻撃が四散し、互いにぶつかり合う。

 防戦は得意、後は共鳴の力でゴリ押しする。

 ジンは権能を最低限に活用し、魔力展開による身体強化で応戦し始めた。

 膂力は圧倒的なまでにジンが格上、それを理解し相手の攻撃を相乗し、灼一臣流を舞う。


「舐めんなァ!!!! ―――黄金魔法〝不可逆価値アウル・ヴォルザード〟……!!!!」


 熱風により飛ばされたジンは、手を真下に勢いを殺す。

 並行し魔法陣を描き切った。

 直に触れた物を一度分解する工程を経て、結実に黄金へと創成する権能魔法。

 現れたのは巨大な剣、それが何本も創造され刀華へ突き刺さる。


 刀華の中では、敵の権能は予想がついた。

 だが、もう一つ不確定要素が存在している。

 それは魔剣。

 あれには呪装具と同じく何らかの能力が、祝福が施されているはずだ。

 幻術、魔族で言えば魔装魔法といったか。

 まだ敵はそれを使って来ていない、単純な強化支援の類か……?


 遠慮なく妖気を使い、黄金の剣を破壊させる。

 追撃に無数の熱の浴びた龍がジンへと強襲、それを魔剣で捌き黄金の斬撃が衝突し、花火の様な爆音が轟く。


「〝炎龍・臣群国覇〟……!!」


「〝栄光鷲潰ルガン・アドラ〟!!」


 跋扈なままに、ジンは接近し刀華は龍へ乗り空から〝炎魔〟による斬撃を振り下ろす。摂儺に赤紫のオーラが展開される。

 膂力が更に向上し、ジンの黄金へダメージを与えた。

 

「〝れつ〟」


 刀華本来の術の基準である〝寒〟と酷似した共鳴術。

 術の環境を整え、威力、精度といった能力向上と共に、敵の魔力や妖気の消費量を更に活発化させる。


「七面倒くせェなァァっッ!!!!」


 地に広がる極大魔法陣、今までに類を見ない大きさだ。


 〝栄光投資レオ・アドラ


 一瞬で刀華の目前にまで迫り魔剣を振るった。

 〝炎魔〟と〝栄光アドラ〟の衝突が火花を起こす。

 かつてない程の爆音が轟き互いの背に火花が四散する。


 術の相性、埋める程でもないが共鳴状態での莽薙刀華をジンは倒したかった。

 全てを出させ、圧倒的なまでの力で敵を壊す悪癖。

 魔力展開による剣術、黄金を弾丸の様に穿つ。

 刀華も模倣し〝炎魔〟を斬撃弾に飛ばす。


 またしても火花が散り、幻想な空間が際限のない空間に広がっていた。


    §    §


 意識が覚醒し、ノエルは目を覚ました。


 直ぐに理解したのは、尋常ではない魔力量。

 見せかけの無限摩天楼な階段、扉、列車に見えなくもないが空間的な広さも、次元も何もかもが馬鹿げていた。そして、あの時何者かに魔術を阻害された。

 魔術を発動しての阻害ならまだ理解できた、しかし魔術を描いている方程式『陣』に詠唱文字が簡略にプロットされバグが起こり不発に終わった。恐らく、かなりレベルの高い結界魔術。


 あと少しで思い出せそうな、昔の懐かしい魔力波長を感じた。


「どうしますかね」


 扉を渡るも次の部屋に。

 魔術で扉を創成するも別の部屋に、と無限に続いている。

 つまり、ある一定のボックスに皆が入っており移動すれば、位相がずれ、ループに似た現象が起こる。特異点が移動しているのだ、抜けれる訳がない。

 誰かが動かずにコチラが一方的に移動すれば自ずと合流できそうだが、どうせまた違う座標に飛ばされるオチ。

 急に扉が開いた……分からないけど、分かりそうな原理構造。


 分かった事は案外、敵とも見方とも隣のクラスレベルに近くにいるという事。

 するべき事は簡単。


 ノエルは宮廷魔法師、魔術大戦には自信があった。

 どんな難題も、目を凝らせば簡単な構造の集まりに過ぎない。

 分解していけば、魔術においても、否、どの分野においても答えに導ける。


「あ、あの……特務警察のお方ですか……!? 部隊は、何人で……」


 陣を描き、列車の位相を探ろうとすれば一人の不安そうな青年がいた。

 グロッキー状態という表現が良いのか。

 とにかくノエルが見るに体調不良なのは間違いなかった。

 かなり痩せており、目が暗く、唇も紫に染まっている。

 ただの体調不良ではない。治したくとも回復魔術には限度がある。


「こ、こっちにも僕より酷い方達が……」


「案内してください」


 助ける事を優先し、ノエルは足を運ぶ。

 そこには二〇人弱の人や魔族、幻妖族の老若男女。

 学生が少し多そうに見える。

 いや、琵琶鼓人も、警備隊など城和国内での秩序部隊が多い……。

 負傷している者や、既に無くなっている者など様々。


「特務警察のノエル・アスカーチェです。助けに来ました……!! 状況を聞かせてもらえますか!!」

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