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阿修羅天世(改稿中)  作者: 鈴政千離
第三章 幽霊列車編
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第35話 畏怖嫌厭

「ほんで、仲間は何人おるんや? その、斎っていうのは。答えんなら、苦しませて殺す、答えたら楽に殺す」


 敵は三人いたが、二人は俺と桔平で殺し最後の一人は尋問されている。


 あんだけ強気でいたのに、顔がボコボコだ。

 うん、だって桔平強いもんな。

 この実力で第四のリーダーじゃないらしいし、その上ってどうなってんだ。

 流石に天井は瑠瑠だろうけど。


「こ、ここに……がかァ」


 首元を緩め、設問への問いを待つ。


「き、貴様は死ぬ。お前も……俺達だけじゃない……幾人もの賞金首だぁ!! 万屋……ぁの、葬儀屋のハンターだっている……!! 終わりなんだよ、貴様らは。俺は死んでも、この列車からは誰一人助からないぃ。ははぁ、貴様は……ぐうェ!!!!」


 応える気がないと感じ、桔平は首を絞める。


「脱獄した奴らか? 何にせよ時間の無駄やな。もう死ね」


 首の骨を握力で折り、桔平は殺した。


「結局、誰に雇われたとか、情報不足やな。まず、ノエル君を探しに行こか」


 ―――と、ノエルが落下した扉に触れる。


 本気で殴れば壊れる思たけど、無理っぽいな。

 壁という形、扉という形をしているだけで次元や軸といった概念レベルの話や。

 力でゴリ押せる訳もない。

 高位階な魔術結界とやらが邪魔してくる。

 敵は魔族で確定やろか、もしくは斎っつうギャングが心臓か?

 多分やけど、触れて分かった事はループやろな。

 こんな際限のない部屋を作るのは、国レベルが組み合って創造するレベル。

 とすれば、防御は強固やろうけど、見せかけの要素は多そうや。

 一条君とリーベ君も同じ状況なら、ノエル君含めてそこまで物理的な距離は離されて無さそうやな。


 案外、早う合流できそーか。


「え……ちょ、おおっ」


 長い機械手腕マシンハンドに首根っこを掴まれ、刀華は扉へと引っ張られる。

 桔平が掴もうとすれば、その目前に扉が現れ別の座標へと飛ばされた―――。


    §    §


「うぜェ」


 そう言い、一人の男は斎を殺した。

 その数、四人。


 黄金の眼、黄金の髪、筋骨隆々に二本の角が生えている鬼だ。


「ちッ、クソ怠ィな。ラウラ、どこだぁ!! 声出せッ、帰ンぞ!!」


 ―――ジン・グリオノヴァール。


 連れのラウラと共に列車へ乗れば途端迷路になり互いが逸れてしまった。

 そして、今になってギャング『斎』と呼ばれる人間が強襲してくる。


 魔王の命令もあり、ラウラの念押しもあってジン自身からは厄介ごとに極力絡みはしない。しかし、向こうから来る分には別だ。


「あぁァ、腹減った。何日いんだ、ここ」


 どこへ進んでも、階段、壁、螺旋、扉ばかり。


 閉じている物が殆どで、開いていても、また際限のない道が続いている。

 一度本気で殴ったが、ビクともしない。

 魔術絡みか、知識不足もそうだが、突破方が意味不明で憤怒が湧き出てくる。

 魔術に関しちゃァ、ラウラに頼る他ねぇ。


「ち、ちょ……ッ、止まれ!!」


 天井で何者かの声が聞こえる。

 また敵かと腹いせにジンは何と成しな魔法陣を描く。

 そこで、目を凝らし全身が震えた。


「―――放せ!!」


 刀華は機械手腕マシンハンドを強引に引き寄せ、その持ち主である男へ龍を穿つ。

 だが、それは無から現れた巨大な機械手腕マシンハンドで衝突され、空気が悲鳴を上げた。 

 術という感じはしない……妖気が殆ど込められていない。


 法具みたいな感覚……なんだ、あの腕。


「斎なぁ、そんな組織聞いたことない」


 刀華の呟きに、一人の男はキョトンと首を傾げる。


 ふっくらとした男、清潔感などまるでない。

 世間を見下した様な眼、傲慢な視線、何をするにも怠惰で憂鬱に抱かれている。

 生きている、生命活動をしている今でさえ退屈そうな人間。


「僕の名前はアデリナ……芸術家だよ。芸術は好きかい?」


 ……俺は、コイツを知っている。


 賞金首、臓器売人って呼ばれている野郎だ。

 種族は人間だが、オッドーと同じく童話で名が噂となり、そう呼ばれている。

 誰彼構わず、無秩序に人の臓器を引き抜き惨たらしい死体が確認されていると資料には明記されていた。

 中でも胎児を引き抜いた事例が多く、残虐性が高い事からその場での処刑が許可されているクズ人間。臓器を違法に売り、多額な金品を得ているとか。

 

 なんで、コイツがこんな場所に……?

 色々、分からない事だらけだ。

 さっき桔平が殺した奴が、言ってた……この列車ん中、どうなってんだよ……。


「ねーねー、見て見て」


 子供の様に歯を見せ、無邪気に男は笑う。


「これは、術じゃないんだ……でも、凄いだろ。基幹は人骨、肉、この腕一本一本は心臓が鼓動し生きている。かわいいと思わないか? ふふふ、彼と組んで正解だ。ここにいると、僕のしたい事、なんでもできる! んふふふっ」


 彼―――?


「イカれてるな」


「理解のできない、ゴミどもが」


 声色が変わり、その男は憎悪に睨んだ。


 再び龍を顕現させ戦闘態勢を互いにとる。

 無数の機械手腕マシンハンドが現れ、両手を広げ大袈裟に歓喜なままアデリナは術を唱える。


 刀華のいる真下から、おぞましい殺意が一閃した。


 地から巨大な黄金斬撃が強襲し、目前の敵が灰へとなった。

 その起源を見据えれば、またやっかいそうな敵がいる。

 アデリナはたった今、血肉となり死亡した。


 落下し、妖刀を構えつつ距離をとる。

 どこか目前の相手からは愉悦や興奮の入り混じった、優しい殺意が感じられる。

 気色悪い、たまにいる奴だ。少しオッドーと似てんのか……?


「ははっははっ……!! そーかぁ、そーかぁ特務警察だもんなぁぁ、あーはっはっはははっ!! こういう巡り合わせってもンはァ、そりゃぁあるよなァァッっっっっ!!!!!! よしィ、殺せる!! 祭りじゃねぇぇぇえええかぁァァ、なァっっっ!!!!」


 ジンは笑みながら、莽薙刀華と対面する。

 

 目的の摂儺もそうだが、個人的にはラハードの仇討ちが最も戦いの価値と提供されている。

 金色に染まった巨大な斬撃を避け、刀華は更に距離をとる。


「また、さっき見たいなギャングかー? そんとも、賞金首野郎か?」


「あァ? あー、ははっ、そういう感じの奴か。そーだな、オレぁギャングだ」


 都合の良い解釈も見つかった所で、ジンは魔剣を取り出す。

 全体的に漆黒でありながら、緑や金色のラインが陣の様に描かれている。

 刀身が四角形を模した大剣であり、それを片手で軽々と持っていた。


「莽薙刀華ッ!! オマエを、ぐちゃぐちゃに殺す!!」


 こいつ、俺の名前……どこかで会ったか……? 

 術関連か。……角、魔族か。

 そして鬼族、オーガ。


「―――よッ」


 万画を薙刀へ微量調整し、妖気展開、冷気を纏わせ神経を伸ばす。


 桔平やノエルだって、楽藍もリーベも皆頑張っている。

 俺は特務警察第六部隊だ……!! 

 元首の、国の最高戦力組織だ。

 自覚を持て、誇りを持ち、ここを突破する……!!


「〝かん〟!!」


 環境を整える様に、刀華は冷気を顕現させ敵の視界を鈍くさせる。

 そのまま兵刃を裂き、ジンの胸が流血した。

 だが、硬い……!! 重層した冷気の追斬撃も諸共していない。


 続けて心臓を穿つ様、薙刀を刺突特化な槍に変換させるがそれをジンは左掌で受け止める。

 流血すれど、射貫かずにいた。

 動かない、無理矢理掴まれて突き放せない……!!


「こんな雑魚に、なんで負けんだァ? はぁ……期待させといてよぉッッ……!! 萎えさせんなよなぁ!!!! いたぶッてやっからァ、簡単に死ぬんじァねェえええぞぉぉおおおおお!!!!」


 そのまま万画ごと壁へ投擲し、追撃としジンは接近した。

 敵が乗ってきた状況下、身構えながら刀身を伸ばした刀を振るう。


「〝凛龍・臣群国覇〟!!」


 無数の龍を全破壊し、一方通行に間合いへと詰め込んでくる。


「〝栄光アドラ〟」


 魔剣に金色が侵食し、剣術を互いに宿した。

 

 相手へ凭れ掛かる様に、輪を描き一度鞘に納める姿かたちから抜刀する。

 自身でも満足へ至れる程、その抜刀は完璧だった。


「〝践征斬せんせいざん〟!!」

 

 邀撃とし悟られぬ様領域を面に付与、カウンターを諸に命中させたが、硬すぎる。かなり入ったはずだが、手応えが浅い……。


 敵の首筋にまで金色が侵食していた。

 牙を見せ、そんな程度かとジンは笑う。


「雑魚が」


 刀華の腹部を蹴とばし、それを受け止め、顔への殴打を手掌でずらし捌く。

 連撃を全て流し、胸を蹴り上げ距離を稼ごうと後方下がれば、先読みしたジンの膝が刀華の腹部を再度蹴とばし扉へと激突させる。


 激痛を耐え、目を無理やりに開く。

 ここで食いしばらなけりゃ斬られる……!!


「―――ぐぅぁッ!!」


 斬撃を捌き、また互いに剣術で間合いを詰める。

 大剣なだけあって、速度は同程度だが一発一発の火力が高い……!! 

 潰される、距離を取っても休みのない斬撃の嵐。


「ンだよ、オラぁよっっ!!」


 刀身は斬撃を重層させ、相手を一歩後退させるに成功するが、


 安堵した直後―――







「〝栄光鷲潰ルガン・アドラ〟……!!」


 巨大な黄金斬撃が目前へと迫った。

 臓器売人あいつを一撃でやった技……。 

 

 回避の隙もなく、万画を巨大な盾に変換させ妖気を纏い耐え忍ぶ。

 通常の魔力斬撃と違い、黄金の斬撃は火力に特化した分、速度が遅い。

 それを分かって、敵は速度の要素をなるべく排除した短距離を保ってきている。


 つまり、距離を放されるのを嫌っている。

 誘われてりゃ怠いけど、その時はその時。


「―――〝不可逆価値アウル・ヴォルザード〟」


 踏み込みから真下へと巨大魔法陣が描かれ、文字が次々と羅列されてゆく。

 構築されたのは、真下の列車を素材に金色と染め、それを分解させ鋭利な細剣を創造した。

 何百本も刹那に創造される。


 金色の剣がジンの周囲を舞い、やがて刀華へ穿たれる。オッドーと対峙した時の、―――もっとも死を感じたラハードと対峙した恐怖の重なりを覚える。


 無数の武具を周囲に舞わせ穿ちながら、ジンが接近し刀華も妖刀で応える。

 武具を次々と取り換え、穿ち、防戦一方にまで追い込まれる。

 手数が多すぎて捌くのは不可能……。

 しかも、一発一発が重すぎる。

 耐えれるダメージを許容し、大剣と化した万画とで刃が重なり蹴り上げから術を放つ。


「〝寒龍かんりゅう〟」


 〝凛龍〟ほど火力は期待できず、加えて軌道操作はできない半端物。

 だが、手持ちの中で最も速度に秀でた術だ。

 ジンを直線状へ食らい、呆気にとられすぐさま破壊する。

 距離は既に取られ、今度は刀華が接近し冷気を纏わせながら出雲捌身流を舞う。


 速度もそうだが、予想以上にジンの視界が〝寒〟で遮られていた。

 瞬間、一歩先へと刀華は間合いへ入り込む。


「〝馘円斬かくえんざん〟!!」


 輪の軌道を追う剣法、狙う首元は強固な金色で斬れずジンは反撃をする。

 それをカウンターに刀華の身体のギアを瞬間に底上げさせ、回転から冷気斬撃を震わせジンの身体へ暴発させた。

 衝撃が走るもダメージには程遠い。

 硬い、硬すぎる。

 筋肉や魔力展開、そこに権能を重ね合わせている。


 これだけ重ねて、これだけ工夫して、応用して、使える、思いつく限りの……分析した会心でさえも……それでさえも、通じない……!!!! 


「〝凛〟!!」


 振るわれる魔剣に、足元に描いた刀華の術陣が発動する。

 冷気で顕現させた剣身だ。

 魔剣への拮抗の僅か隙、腹を蹴り上げ天井へジンを追いやった。

 

 空間で姿勢を戻し、気にせずジンは魔法陣を描く。


「〝寒〟―――『絶景』」


 まずは術の環境を整える。

 周囲一帯を埋め尽くす吹雪、拡散する冷気に次々と術を繋ぎ描いてゆく。

 天井から振りかざす魔剣に、無数の龍を穿ち黄金の蒼穹が生誕する。

 それは、その光景は正に絶景だ。


 龍を殲滅し、互いに地を足にラウンドを再開する。

 溢れる冷気は刀華の術の精度、効率、威力といった性能パフォーマンスを高め逆に、ジンの魔力へは冷気が反応し微量ながら無意識レベルに襲い質を下げている。


 それでいて、刀華は笑ってしまう。


 これでさえ、対等どころか刀華は劣っていた。

 攻撃を仕掛ければ押されている、マシになっただけで何も相手を攻めれる手段に成りえていない……!! 防戦では舞えるが、戦局はだいぶ不利。腹へ一撃を食らい反撃をしようと穿てば、当てられた魔剣に魔力斬撃が生まれ真横一直線に吹っ飛ばされる。

 額からは血が、大剣にし妖刀を構えていた両手両腕への痺れ、いつ斬られたのか首筋、背中の流血……対して相手は首筋の掠り傷、最初に運よく斬れた胸辺りや、左掌の流血。


「おぃおィオラァっ、弱ェンだよ。てめェもよォッ、どんだけ工夫しようがァそれを凌駕する力も速度も、何もねぇェンンだよォ。雑魚が、もう気づいてんだろッ? 何をしてもオレには勝てないってなぁァァッッ!!!!」


 顔を蹴とばし地へと倒れる寸前、冷気の攪乱と共に腕立てから回し蹴りをし、追撃をいなす。攻撃はギリ読める、防戦はいける。


 一方攻めの剣術は負けてるな、武術もそうだ。

 これに関しちゃ技術不足。

 敵は剣客、刀華の中で認めざるをえなかった。


 面倒なのが距離に関して、間合いで考えさせられる。


 あの黄金の斬撃がくれば、防ぐタイミングを誤れば一発でやられる。

 

 即死なんて冗談じゃない。

 黄金の斬撃、そこに意識を向けながら追及を防戦する。

 生まれた隙に一発打ち込みたいが、生まれないなら隙は作る。

 タフにいく!! 

 学んだことを、盗んだことを、イメージを現実に映す。

 俺の術をもっと強く探求する……!!


「ふぅッ―――っ!!」


 呼法に筋肉、妖気を促し魔剣が横腹を、喉を、肩を射貫く、だが尚も術を描き致命傷を避け続けた。


「ァ、もう終わりかよッ!! こっちァ、まだ殺したんねンだよォ!!!!」


 途端、冷気が一気に晴れる。

 効果切れと直感し、〝栄光アドラ〟を唱え魔剣に黄金を相乗させる。

 そのまま空いた胴体に刻み込んだ。

 音が響く―――刀華が妖氷を纏わせ威力を緩和させたのだ。

 まるで、誘っている様にも思えた。


 ここへ来て、虚勢ではない本当の痛みが、確実なダメージがジンの腹から両肩にまで侵入した。纏わせる黄金の速度を僅かな瀬戸際で超え、血を流す。


「―――〝風華・凛纏斬〟!!」


 過呼吸になりながらも、刀華は必死に唱えていた。

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