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阿修羅天世(改稿中)  作者: 鈴政千離
第二章 城和国編
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第19話 ひと休み

 楽藍は目を覚ます。目の前には爆睡している刀華。


 見慣れない朝、いつもの宿とは違い村となればやはり狭い。

一旦にシャワーを浴び風呂場へと向かう。

 冷水を全身に浴び、気を引き締め今日も一日が始まる。


「とーか、おーきーろ」


 団子屋へと向かうため、刀華を起こし駅に向かう。

 本当に付き添い兼、案内をしただけで一緒に一泊するとは思いもしなかった……。

 早く起きての出発であり、少し睡魔が残っている刀華。

 楽藍のちょっかい、からかいもあり、自然と笑けてはあっという間に時間が刹那を横切ってゆく。


「受付行けば報酬貰えるから行ってきな~、私は早くお団子が食べたい」


「了解」


 壟雲逢簑へ到着し、刀華は最初に依頼が受理された琵琶鼓城の門をくぐる。

 数秒程で報酬九九〇ベガが支払われた。


 何となく見つめては、心に虚しさが残響する。

 ゴブリン一万駆除に九九〇ベガは妥当なのか議論が刀華の中では始まっていた。

 当たり前、雑魚とはいえど命の危険は少なからずあり、それで九九〇……。


 ヤバいな、琵琶鼓人。趣味感覚でやるのが正解な気がする。


「楽藍は毎回いくら貰ってんだろ。俺も早く賞金稼ぎになりたい……」


 現実染みた金銭に露骨な溜息が漏れる。

 けど最初なんてそんな程度、持続してこそなんぼだろう。

 ……って肯定しないと、多分直ぐに止める自信がある。

 飽き性ってのもあるけど。


 次だ次、と切り替え依頼だけでもと刀華は提示版に目を通す。

 外で楽藍を待たしているので、軽く見るだけだ。


「俺も……挑戦はするか」


 一つの提示された依頼に目が行く。

 普通の依頼と違い特に期限がある訳でもない、挑戦する権利はあるだろう。


 依頼書を受付へと持っていけば、お姉さんは剣呑な表情を宿す。

 莽薙刀華は黒札、それも昨日初めて琵琶鼓人となった初心者、駆け出し者だ。


「本気ですか? 呪装具の妖刀持ちでも、あまりオススメはしませんが……」


「大丈夫です! 俺、そこそこ強いんで!!」


 圧な判子を押してもらい、申請受理が下される。

 そのまま頭を下げ、刀華は待たせている楽藍の元に向かった。


「おーい楽藍」


 すると一人、友人なのか知らない女の子がいた。

 楽藍の元へ依頼書を見せようとワクワクさせていれば、隣の少女は刀華の方に視野を寄せる。

 誰コイツ、と相手の心中が目線から察せられ小さく怯んでしまう。


 だが、真面目が刀華の中で第一印象だった。


「あー終わった? こっちは私と同僚の子! ただいま仕事お勤めご苦労さんのいちじく吟葉うたはちゃん」


 自己紹介され、吟葉は刀華に目を合わせる。


 楽藍と同じ黒髪にストレートなショートカット。

 長すぎず短すぎない程度のある艶髪だ。

 肩まで伸びた紐の耳飾り、カジュアルさが一切見当たらづ全体的に黒が主要な軍服をしている。


 制服はスカートに腰ベルトへ垂直にネクタイが下りている。


「どーも初めまして……。莽薙君」


 知らない子に名を呼ばれ、とっさに助けて、と楽藍へ目を飛ばす。

 人見知りという事はない、ただどこかで会っていたのなら反応に困る。

 初めての面だが、第一印象は慎重に。

 これも家族からコミュニケーションを取る上で教えてもらった事だ。


 楽藍の様に気軽に接してくれる人の方が楽ではある。


「私が雑談でさっき話した~」


「うん……。彼氏ちゃんなんだよね?」


「おい」


 間違ってはいない、けど間違っている。

 パッションという店のカップル割引を使うのに必要な演技をしているだけ。

 だが、まだ店にも入っていない。

 つまりは、ただの友人……多分。

 隣の楽藍はにひひ、と小悪魔に笑っている。

 ムカつくが、そう、ムカつく事に可愛いので不快感が無いのが気持ち悪い。


「え~なになに、とーか意外と人見知り~」


「な訳あるか。つーか彼氏じぁない、ふり、演技だろ。まだ店入って無いけど」


「今から吟葉ちゃんも来るし、早く行こ~」


 楽藍が先導し、刀華と吟葉二人を引っ張ってゆく。

 ついた店、団子専門店『パッション』。

 特に大きな店でもなく、小さくもない、けど見つかりにくい所にある店だ。

 普段通らなさそうな狭い通路、壁と壁の狭間。


 むしろ、こんな所良く見つけたものだ。


 人気店なだけあるのか、中は込んでいる状態。

 確かに、カップルらしき物も多い……。 

 友人と来ている者もいるが、なんだこの店。

 少し待てば俺たちは中へと案内され、それぞれに注文する。


「いい、とーかちゃん。キミは今から私と吟葉の彼氏です」


「おい。一人増えてるぞ、それってありなのか。二人と付き合ってるから割引してくださいって言ってんだろ? むしろ、怪しまれるぞ」


「いいじゃん、ただでさえこの店って高いんだし。割引の恩恵は最大限活用しないと、損した気分になっちゃう」


 と、美味しそうに団子を食べる楽藍。

 吟葉は楽藍と刀華のやりとりを面白そうに眺めていた。

 楽藍が男と絡むのは非常に珍しい。

 最初は情人なのかと思ったほど。


「なんだ、カップル割引って。ここの店長はキューピットかなんかか?」


「11日は……カップル割引デー」


 コーヒーを飲みながら、ぽつりと吟葉は呟いた。


 そういうサービスか。


「おい。怖い視線感じるけど、お前らって有名人とか言わないよな」


「ほらー吟葉が特務の制服着てるからだよー」


「違う。……カップルは男と女、二人で成立する……だから則して11日……。ここの席だと、一夫多妻……」


「とーか、ハーレムじゃん。この幸せ者め! 喜べ!」


 楽藍は笑顔に背を叩きだす。


「へいへい、あざんす」


 周りの視線に所々嫉妬を超えた殺意が垣間見れる。

 一夫多妻は宗派とか、国によればオッケーなんだっけか。

 師匠がそんな雑学語ってた気がする。

 萌萌は冷めた目で、勝意は目を輝かせていた……。


「……莽薙君はまだ……お子様だから、はやい」


「ぷふっ。お子様だって~」


「ンな訳ないだろ。俺、強いし!!」


 ジト目気味に吟葉は飲んでいたコーヒーをスッ―――と刀華へ寄せる。

 それを手に取り一口に飲んだ。


「クソ苦い。普通のコーヒーじゃないじゃん……苦ぇ」


「お子様……」


「いや、誰が飲んでも苦ぇよ!!」


「甘いものと、よく合う……」


「「それはそう」」


 楽藍と刀華はハモった。

 

 ティータイムとしても、この店『パッション』に客はよく来るらしい。

 普段から高い店なので、楽藍とて毎日通いたいが我慢している。

 偶然にも面のいい莽薙刀華を見つけ本当にラッキーだった。


「そういえば二人は同僚って言ってたよな。……その、同僚って……? 琵琶鼓人に同僚とかあるのか。チーム的な?」


「どちらかと……言えば、国家機関の組織……」


 甘い物に夢中な楽藍を余所に、吟葉はそう言う。


 刀華視点、楽藍が声をかけたのは偶然。

 であれば元から強いメンバーがいても不思議ではない。

 つまりは、二人は琵琶鼓人として稼いでいるのではないかと。


 そういう情報は知っておきたい。


「あー琵琶鼓人は私の趣味ね。吟葉と私とは秩序部隊で同じ組織に組してるから同僚ーってわ~け」


「うん。私、琵琶鼓人じゃないよ」


 出雲が言っていた。

 災害対策の自警団、社会秩序の維持、向上を促し犯罪関連を主に占める警備隊。

 琵琶鼓人は秩序部隊に類されないのだろう。


「国家機関てのは?」


「とーかはここに来たばっかりだっけ。私達は秩序部隊、特務警察って呼ばれてる一番偉くて信用された組織なんだよ~。びっくり!?」


 楽藍特有のからかう笑みに、刀華は首を傾げる。

 特務警察という単語は知らない。

 普通の警備隊とは違うというのは何となくで理解できるが。

 琵琶鼓人やその延長線上の賞金稼ぎも楽藍の趣味、本業の仕事が城和国に元ずく国家機関、特務警察であるという。


「特務警察はね、国を守る為の精鋭組織なの。一般化されていない任務とか、ほら前に幽霊列車の件で話したでしょ? バカだから、忘れた……?」


 にやッとした楽藍の小馬鹿に、刀華は溜息で受け流す。


 楽藍の言っている内容。

 恐らく昨日に厭春へと列車を案内された時、魔族が主犯なのではと呟いていた事だろう。

 そんな情報記載は無かったが、あの時の特別というのは特務警察だからという事で説明がつく。


「お前……よく初対面の俺にあんな情報言えたな。不真面目っつうか、一番信用ないぞ」


「え~いいじゃん」


 ぶすー、と拗ねては紅茶を飲み干す。

 吟葉は聞かなかった事にした。


「楽藍はあまり……男と話さない。久しぶりで……多分舞い上がった」


「はい吟葉、余計な情報言わな~い」


 刀華が思い出すに、最初は楽藍から声をかけ案内してくれた。

 男アレルギーという訳もなく、割引だけが理由ってのも……と、いくつかの考察が浮かび出す。


「知ってるか。最初は楽藍の方から声をか――」


「はい、とーか。あーん」


 余計な事を言い出す刀華に、スプーンでプリン団子をすくい上げ、綺麗に口へと放り込む。

 半ば強引に。吟葉は心中で、付き合えよと呟いた。


「おぃ、いきない」


「彼氏だからね~。美少女からのあーん、だよ? もうこれだけでも、来たかいあるんじゃな~い?」


 彼氏なのだから当然理論で、刀華の反応を見ては次々とからかい始める。

 刀華とて男、自然に触れてくる手やその温度、匂いなど意識はする。当然だ。


 冗談と分かっていても、少し恥ずかしい部分だって出てくる。

 そんな二人のやりとりを眺める吟葉。紅茶を一口飲み、


「なんか。ほんとに、カップルみたい……。ね?」


 今でも二人の楽しそうな光景が、どこか羨ましくも見えてくる。


 だが、吟葉は知っている。

 楽藍が莽薙刀華と接触したのは、天下無双七英神将の妖刀目的であると。

 彫を見れば知ってる人は知っている。

 琵琶鼓城の門前で楽藍とそんな会話をしていた。

 あの災厄の妖刀は、誰でも持っていい代物ではない。


「そうだ、俺も賞金首目指して依頼申請したんだぜ」

 

 ふと思い出し、刀華は懐から依頼書を見せる。


 首切り殺人鬼オッドー、ランクはA⁺。

 最高ランクはSだが、それは滅多に提示されない。


「最初私が見た時Bだったのにそんなに上がったんだ。被害はよく聞くけど」


 隣で肩を寄せ、吟葉は依頼書を詳しく覗き込む。


「にひひ。とーかより、私が先に狩るもんね~」


「いいや、俺だね!! 探したもん勝ちだからな」

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