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阿修羅天世(改稿中)  作者: 鈴政千離
第二章 城和国編
18/44

第18話 風鱗村

「とーかはさ、普段なにしてるの?」


 暇も暇なので、必然とばかりな会話が始まる。

 時間はたっぷりあるのだ、まだ知らない事も多いし楽藍からは色々訊きたいこともある。


「普段……。剣術の鍛錬とか……か」


「ほ~う。流派は?」


「出雲流」


 何となくだが……一条楽藍だっけか。

 多分、この人強いな。

 身体の動き、軸、後は視線。

 俺に凭れ掛かってきた時の筋肉。

 こりゃ、敵わんな。

 勝意も女は怒らせると一番怖いって言ってたし、常に尊重しておこう。


「出雲捌身流。使いこなせば、最高の武器だからねッ」


「だな」


 三大剣術の中でも一目置かれている。

 出雲捌身流の開祖、仙人と先ほど会ったなんて自慢しても、恐らく信じてくれないだろう。 

 まーいいや。


「移動が多いな。けつが割れる」


「お尻は既に割れてるよ」


 馬車に今は列車、それだけ城和国も広いんだろう。

 地図を見ても、アプルの何百倍もの国土面積だ。


「妖刀。二本持ってるじゃん、珍し」


 見下ろしては、楽藍は興味げに呟く。

 だが、視線は万画ではなく摂儺をよく見ていた。

 やっぱり、鬼神が封印されたとなれば有名だったりするんだろうか。


「両方とも形見だ。師匠と……兄みたいな親友がいてさ」


「ほえ~。形見ならありえるか。妖刀ってさ琵琶鼓人でもそうはいないんだよ、だから変にかつあげされない様にね。私のこの妖刀だって、数年に一度しか開催されない大会で勝ったやつだよ~。欲しくてもこれが中々、だからとーかは羨ましい。売る時になったら、私に声かけてね」


「いや、形見だよ! 売らねぇよ!」


 妖刀が貰える、そういう公式試合があると師匠が言ってた。

 俺は既に二本あるし、前みたいに欲しいとは思わない。

 強いて言うなら、摂儺をもっと良い刀と取り替えたい。 

 呪だって使えないし、唯一なのは溢れる程、溺れそうな程の妖気量ぐらい。

 あと、たまに阿修羅が喋りかけて来るおまけ機能付き。


 妖気量ってのも、感知できるのは共鳴した使用者の俺のみ。

 つまりは圧倒的な妖気量に物を言わせて威圧もできないのだ。

 役立たず。本当に役立たず。

 師匠の形見として受け取ってるけど。


 謎に将棋が上達するばかりで、全然意味無い。

 なに? 将棋で頭良くなって、現実にその戦局がいかせる? 

 な訳、あるか!


「妖刀のおかげで、琵琶鼓人として活動範囲も広がったし。持ってるだけで大抵強者扱いしてくれるから、多少無理を通せば高ランクも受理されたりするんださ」


「なに、その抜け道……やだ」


 ま、札が見えた時点で分かってたけど琵琶鼓人か。

 それも札色が緑、レベルでいうなら中間ぐらいだな。


「楽藍の方は? 普段は何してんだ?」


「んふ、ひっ。良くぞ訊いてくれました~。私は琵琶鼓人、そして賞金稼ぎ。本業とは別で、あくまで趣味だけどね」


 一つ知らない単語が出て来た。


「賞金稼ぎ……? 琵琶鼓城みたいなもう一個の職業組合か?」


「いんや~違う違う。同じ琵琶鼓人でも、指名手配の依頼を一定以上の数受けて達成すると札にマークがつくの。ほらほら」


 それは、最初ちらっと見えた特殊なマーク。

 色札に描かれている王冠模様だ。


「でもって、お金稼いでー、甘いものをありったけ食べるの~。もうそれが生きがい~。指名手配犯とかだと、結構一発デカいの貰えるんだよー。その分、危険だけど。私は賞金稼ぎでもあるから、御尋ね者限定だけど、報酬はちょっと多く貰えるし依頼が向こうから私に来たりメリットも多いよ~」


 賞金首の討伐にはいくつもの依頼が提示されていた。

 本来同じ依頼は提示されないのだが、指名手配やら、遺跡調査など数が必要な物は琵琶鼓城側も判断して依頼を受けてくれる人数を増やしているそうだ。


 そして称号と呼ばれる色札に描かれた物。

 楽藍の賞金稼ぎの王冠模様や、超高難易度依頼を数百も成功させればハート模様が色札に描かれるなど種類も色々あり称号に見合ったメリットもあるらしい。

 称号は狙って取れる程簡単ではないが、趣味な感覚に近い。 

 それで、特典があるのは嬉しいな。

 こういうのもモチベーションの維持、向上に繋がって来るだろう。


「賞金首としては今は首切り野郎に目をつけててね。城和国のどっかにいるんだろうけど、難しいよねー。依頼は受理されたから、後は探すだけなんだけど~」


「賞金首ってさ、儲かる?」


 正直、刀華の中に不安はあった。

 村のお金といっても無尽蔵ではない。

 宿なら三年は暮らせるくらい。

 だが、怪我や衣服で少しずつ削れてゆく。

 儲かる仕事があるのなら、早く乗っかるべきだ。


 楽藍はまた一つ団子を口へと入れ、にひひと笑う。


「とーかが強いなら儲かるね」


 指名手配……この依頼が終われば受けてみようか思考する。

 誰かに手柄を取られては遅い。

 指名手配といっても常に提示されている訳ではない。


「お金稼ぎならもう一個面白いのがあるよ」


 琵琶鼓人になる者の殆どは副業や、少し小金を稼ぎたいと考えている者。

 それだけで安定し食えている者などそうはいない。

 ただの幻、夢物語。


 緑札になれば一人前と称されるが、道のりは簡単ではない。

 依頼によれば命を懸けて達成したのにも関わらず、貰える金額は色々差し引かれ少ないと後悔する事も多々ある。

 だからと言って指名手配犯、俗に呼ばれる『賞金首』を狩るのも一般人は不可能。

 申請し受理されたとしても、死体が増えるばかり。

 秩序部隊が追っても見つからず、危険度も高いと判断され琵琶鼓城に依頼として提示されるのだ。

 

「面白い。そう、例えば~幽霊列車―――とか」


 誇張にぽつり、と楽藍は呟いた。


 これは刀華とて記憶のすみっこに残っている。

 幽霊と聞いただけで関わりたくないと直感したものだ。

 札色の制限はないのだから、より一層不安が降りてくる。


「調査してくれって奴だろ? とても一人でやろうとは思わねえな。というか面子揃ってても俺は無理」


「んにゃ~意気地なし」


「それでけっこう」


 場合によっては不可解な事件が賞金首よりも稼げる時がある。

 幽霊列車はその奇妙な事件の一つ。

 顛末として人が次々と行方不明になっている。

 大人子供、男も女も、それを調査していた警備隊や琵琶鼓人達であっても。

 それ故、皆が気味悪く見ようともしない。

 だが決まって行方不明になるのは列車に乗った人物、しかしどの列車が幽霊列車と呼ばれているかは分かっていない。

 今乗車している列車に人数が少ないのも、万が一乗っていた列車が幽霊列車だったらと危惧してのこと。

 しかし、幽霊列車は夜に起こる。

 これが唯一のわかっている法則だが、それであっても皆は奇妙に近寄ろうとしない。最初は興味本位や稼げるならと挑戦し、姿を失った。


 そんな事を小悪魔に笑いながら楽藍は刀華へと伝え、青ざめた表情に笑いながら団子を食す。


「まぁ唯一の報告であるのは、敵は魔族ってだけだね」


「え。そんな記載あったか?」


「ある訳ないじゃ~ん。ここは城和国だよ? 人間だけじゃなく、色んな種族と一緒に生活してる、そういった秩序が、社会がある。元首が一言真実言えば、昔みたいに差別を中心に国は瓦解しちゃうよ。魔族でも種族が多くて、獣人族は短期だからー、鬼族オーガは気性が荒いからー、幻妖族げんようぞくなんて含めちゃったらもうたいへん。妖狐の先祖の罪を持ってきて贖罪を背負わせる様に差別格差から公開処刑させられたり、昔みたいな内乱が起こっても不思議じゃないよ~。皆、何かを叩く正義か悦楽の口実が欲しいのさ」


 ―――元首。

 この国、城和国を統治する一人の王を指す言葉で十二天衆とはまた異なる。


「じゃ、なんで楽藍は敵が魔族って知ってんだよ。ただの憶測か?」


「私は特別。魔力痕跡とか、色々情報回るの~」


 なんだよ、特別って……。


「前に内乱とかあったのか?」


「首都の宝食謳閣ほうじきおうかくはさ、昔って超差別されてたの。貧民と貴族両極端って言われててね。それを壊したのが瑠瑠るるっていう仙人。義賊も色々いたらしいけど全滅でね、昔の元首もよくやったもんだよ。その仙人と一緒に国を変えて今の城和国があるってわ~け~。だから、さっき話した内乱が起きても今の城和国は崩れない。それだけ、仙人というのは偉大な子なんだよ」


「偉く詳しいな」


「そりゃ~私はこの国出身だからね。始祖まで辿るなら、公爵の一条家だよだよ〜」


    §    §


 ―――列車は進み、厭春えんしゅんへと到着した。


 刀華と楽藍は依頼場へと着き、様子を見る。

 周囲は山丘、壟雲逢簑とあまり風雅は変わらず、村へと向かった。

 名は風鱗村ふうりんむら


「ついたね。後は依頼書通りだと、あっちの方角」


 団子を口に入れながら楽藍は刀華へ説く。

 楽藍の指さす方向へ刀華は目を凝らした。


「洞窟か?」


「よく素であんな遠いとこ見れるね~。視力いいじゃん、神通力かよ」


「目だけは、生まれつき恵まれてる」


 ―――と、洞窟前へ到着。

 ゴブリンが風鱗村の民を攫っているという情報顛末。

 これは別に対策を講じていなかった訳ではない。

 秩序部隊だって格行政区に必ず設置されているし、見た所魔除けの結界法具まである。

 たまにあるらしいけど、法具の劣化か、強い魔物や妖魔がやってきたか。

 今回の場合は前者。

 というか、本当にヤバい奴ならもっと上の部隊が動く。


 ゴブリンは魔物の中で最下層に位置している弱小種族。

 列車の際に楽藍からよく聞いたが、魔物は四段階に深化する。


 ゴブリンからホブ・ゴブリン、グラン・ゴブリン、キング・ゴブリン、ロード・ゴブリンと名付けられてるらしい。

 だが深化のしない魔物もいたり、その亜種、突然変異の謎個体である魔獣と類されるなど、魔族もそうだが、魔物となると一気に範囲が広がる。

 つまりは魔力量などで大まかな強さの階級は測れるが、個体名などは難しくなってくる。


 ゴブリンであっても亜種ならバグベアや、亜種で深化もするシーフ・ゴブリンやパイレツ・ゴブリンなど本当にきりがない。


「とりあえず、進もっか」


「案内してもらったし、もういいぞ。村で休んでてくれ、終わったら迎えに行く」


「いいよ、ここまで来ちゃったし。とーかが戦うとこ見たい」


「別に物珍しいもんでも無いけどな」


 洞窟へと進めば、地下へと続くいくつもの階段。

 下っては下り、ひたすらに下る。

 洞窟だが鉱石採取などで琵琶鼓人も訪れるだろうし、直ぐに魔物発見とはならない。

 村の攫われた人の確保だが、それも見当たらず。


 何もない薄暗い中、少し進んだ所に枝分かれした道に出会う。


「二手に分かれる?」


「いや、一つずつ潰す。万が一にも襲われたら助けれない」


 視線にはいつも以上に敏感にしているが感じない、強いて言うなら楽藍の楽しそうな感情くらい。

 よく不安がらないもんだ。

 琵琶鼓人で色も緑、賞金首でもあるんだし血はいっぱい見て来ただろう。

 耐性みたいなのが付いてるんだろうな。


 慣れか……。


「なになに、気使ってくれてるのぉ~。私より弱いとーかが? いっちょまえ~」


「当たり前だ。女なんだし、襲われてからじゃ遅い。早く行くぞ」


 強い弱いではなく、個人的に男として生まれた役割の一つだと思っている。


「ほー。……かっこいいじゃん」


「なんか言った?」


「なーんも」


 そのまま左を進路に歩く。

 薄暗いが魔石などで灯は確保されているので、そこまで困るってレベルではない。

 にしても、視線からは何も感じない。


「もう少し横を歩けよ。道広いから」


「歩くの速いんだもん」


 温度感が合わない。

 楽藍は団子を食べながらピクニックにでも来た雰囲気でいる。

 確かに他人事なんだろうけど、依頼を受けた俺自身は初でもあるので失敗だけはしたくない。


「ほらペース落としたから、せめて俺の画角に入るようにしてくれ」


「えーきゃぁー、私の事見てたいの~。やっぱり口説いてる?」


「んな訳あるか」


 本当に温度感が合わない。


 ―――ふと視線、そして違和感。


「いるねーゴブリン」


 違和感……これは魔力だろう。

 妖気量なら意識すれば分かるが、魔力に関しては少し変な感触を覚える。


「殺してくる、楽藍も周り警戒しとけよ。どっから湧いてくるか分かんねーから」


「ん。もう全部把握できてるけど」


 妖刀、万画一臣。

 形状を刺突特化な暗器に、二つのナイフへと変換させる。

 数は二〇弱、何匹かは上で隠れている。


 妖気展開し、相手の心臓を射貫き瞬殺する。

 本来、五臓を狙い念入りに首を落とすのが接近の適した狩りだ。

 けど、一匹一匹の個体が貧弱すぎる。

 心臓だけで血を吐き倒れる。

 骨と皮だけで、全身がガリガリだ。


 背筋を意識、上半身の動きを軸に則し相手ごとにスタイルを変えれる。

 一手一手、変化を生み続ける事で次の対応に思考を回させる。

 まぁ、ゴブリン相手には不要か。


 ナイフを重ね、大斧槍ハルバードへと武具変換する。

 残りのゴブリンを一掃し、上で隠密していた者が小刀で接近、それを先読みの歩法で避け、予測警戒、周囲から大勢こられた際には術を発動させれる。

 戦局はもう決めている。

 出雲の稽古でも、勝意や萌萌、師匠、家族とでも多くの経験が今まで得れた。

 そこに変化を埋め込む事で、勝利のビジョンが相手を敗北へと誘わせる。


「ふぅー、よっわ!」


「ほー。瞬殺からの妖鎌を使った出雲流。あっぱれ、あっぱれ、札色も上を目指しているなら黒は脱却できそうじゃん」


「今のでまたゴブリンが出てきそうだ」


「私、攫われた子見つけてこようか」


「いい」


「えー暇ー」


 言ってる合間にゴブリンがやってきては、直ぐに殺す。

 進んで行けば枝分かれた道はどんどん広がっていき、今では若干の迷子案件にまでなっていた。


 洞窟に入り、かれこれ二時間弱は経過していた。


「ごめん。早く終わらす予定だった」


「いいって。怒ってないし~明日でもいいし~。でも、これからは誘わない」


 怒ってますやん。


 小さくぷくッと頬を膨らませ、楽藍は沈んだ感情を溢す。


「うじゃうじゃいるな、ゴブリンってのはッ」


 目前に現れたゴブリンを狩り負え、少し休憩をとる。


「数多すぎないか?」


 際限なく次々と奥から現れ、ゴブリンの首を狩っている現状。


 デカい術で一掃しようにも、狭いので楽藍にも被害がでる。

 そこに万が一攫われた人がいれば、俺はただの人殺しだ。

 視線から見える感情だって、絶対とはいいがたい。

 アプル村での矢の奇襲はいい教訓になったと思う。

 半分死んだけど。


 面倒だがゴブリンは一匹ずつ殺す以外に方法がないな。


「依頼ちゃんと読んだ~? ゴブリンは多いよ~。子供や女を攫って来てる」


「まぁ読んだけど、ここまで多いなんて思わなかった」


 ウジみたいに、気持ち悪いぐらいにいる。

 そして雑魚、向こうから攻撃をしてくるが、実力を数で埋めれると勘違いしよく来るのだ。


「子供は玩具、女は強姦、屍姦。向こうから来るのは私狙いってこと。だから、とーかさえ殺せば向こうからすればゴールな訳。数でいけるって思ってるんじゃな~い」


「おい。やっぱ村にいた方が良かったろ」


「言ったじゃん。とーかの戦闘スタイルさ、どんなもんかなと」


 休憩も済んでは、ひたすらにゴブリンを殺してゆく。


 かなり時間を費やした。

 外はとっくに夜だろう。


 雑魚を殺すと言っても、かなり神経使う作業だ。

 慎重に進んだ所、こに来て出会わない。

 全然遭遇せずにいる、これは全滅させたと思っていいだろうか。

 あれだけの数がいたのに、今度は逆に不気味だ。

 ……それにしても迷路、ずっと枝分かれに枝分かれが続いている。

 変に酔いそう。


「歩くスピード、大丈夫か? 何かあれば叫べよ」


 刀華の後ろへと続く二人の子供。

 その二人の間に割って入る様に、楽藍が歩いている。


「うん、大丈夫」


 一人は男、もう一人は女の子で二人とも幼い。

 耳からして狐族だ。

 この洞窟が怖いようなので、楽藍に面倒を任せている。

 人がいないなと思ってたが、進めば死んだふりをした子供がいたのだ。

 それが後ろの二人。

 この洞窟はほぼゴブリンの巣化になっており、部屋が几帳面に分かれている。

 女を弄ぶ部屋、子供を玩具にする部屋。

 生き残っていたのは今いる二人の子供で、血生臭い部屋を全て見て渡ったが、もう生きている者はいなかった。

 やっぱり慣れていたのか、楽藍はなんとも思わず団子を食べていた記憶がある。


「これは……」


 光が見えた、地上の光、見覚えのある鉱石や魔石の淡いカジュアルな光だ。

 そこへ目掛けゆっくりと歩く。

 下りに下った頃とは逆に、帰路はしんどすぎる。

 上へと向かう階段しかないのだ。

 今度は後ろが心配なので、二人の子供を前へ進んでゆく。

 つーか、もう今何時だ……?


「ふぅー到着……」


 ゴブリンは恐らくもういない、全滅。

 一万は殺したんじゃないだろうか……。

 巣の部屋、ゴブリンの赤ん坊や子供まで全部殺した、殺しに殺し殺戮を繰り返し一匹もいないと言える自信がある。


「任務完了。このまま駅まで向かうか」


「お兄ちゃん疲れてる。もー、終電なんだよー」


「そーだ、そーだ」


 終電っていう言葉は、行しなに楽藍が呟いていた。


 ―――って事は、もう列車に乗って帰れないのかよ。

 最悪……俺のせいだけど。

 歩いて帰るは無理だし、マジでどうしよ。


「村に泊まっていきなよ。俺のおじいちゃん、村で長偉いんだぜ……!!」


 一人の男の子がそう言う。


 相変わらず可愛い、子供は良いな。


「なら、お言葉に甘えさせてもらおうかな。いいか楽藍?」


「ん。お腹すいた」


「じゃぁ、私が村に案内するー」


 と女の子が叫び、楽しく話しながら村へと着いた。

 結界法具の劣化に対し、こういうのは事前に取り換えられるらしいが、錆びが酷かったらしい。

 直ぐに新しい法具が村に届いており、今では魔除けの何重にも重ねられた見えない結界が構築されている。

 国独自に開発した、高位階の魔術らしい。


 子供達の案内に任せれば、村の住民達が大勢にコチラに足を運んでくる。

 依頼達成、ゴブリンを全滅させ巣の説明や、見た光景を全て伝える。


「列車は今日はもう通ってないですし、依頼については儂の方から琵琶鼓へ伝えておきます」


「ありがとうございます」


「ささ。宿ですが、なにぶん小さな部屋で。すみません」


 案内され、そこへ身を降ろせば宿主のおばさんが料理を出してくれた。

 海鮮鍋、それを刀華と楽藍二人で囲んでは今日の一日を楽しく会話する。

 子供二人の親には頭を深く下げられ、強く感謝された。

 これも初めての経験だ。

 誰かしらの感謝はあったが、涙を流して両親ともども御礼に来てくれた。

 お高いお餅まで貰ったぐらいだ。


「な~にニヤニヤしてるの。ベッドが一つだから、期待でもしてるの?」


 そーいえば、そうだ。

 そもそも、今いる宿部屋は一人専用で布団は全部干している様で、この布団も予備の物だ。

 宿といっても、それほど大きくもないし、既に泊まっている人も大勢いる。

 よく一室開いていたなと思ったぐらいだ。


 けど、俺が壟雲逢簑ろううんほうさで支払った宿屋は無駄になったな。

 一日で帰ってこれると思ってたが、だいぶ損した。もったいない……。


「ニヤニヤもするだろ。人にあんなに感謝されたのは初めてだからな。楽藍は慣れてるだろうけど、こっちは色々新鮮で嬉しんだよ……!!」


 と、鍋の肉を一口に食べる。柔らかく、口の中で仄かに溶けてゆく。美味い!


 感謝はこっちもすべきだな。

 んー最高ッ、特に鍋にある名前のよく分からん魚。

 出汁が染みて味が深い、あぁ美味いなぁ久しぶりにこんな美味いもの食べた気がする。


「明日は付き合ってもらうからね」


「団子屋のパッションだろ。カップル割引なー」


 忘れかけていたが、彼氏役どうこうの奴だ。

 楽藍は明日が楽しみに、嬉しそうに肉団子を食べている。

 猫舌なのか、必要以上に息で冷ましている姿は面白かった。


 ……何にせよ今日はよく寝るか。


「割引は強いよ~。元々あの店って高いからね」


 思えば、その為だけに俺に声をかけて来たんだよな……。

 いや、どんだけ団子だよ。列車ん時に貰ったのは確かに美味かったけど!!




 ―――深夜。


 風呂へと入り、一つのベッドで刀華と楽藍は寝始める。

 てっきり嫌がられると思ったが、特に気にせずお構いなしな姿勢だった。


 一人専用のベッドだし、やっぱりちょっと狭いな。

 嫌でも肌の密着がある。


「とーか、面白い話して」


 寝たのかと思えば、急にそんな事を言う。


「いや難易度高いぞ。そんな話ねーし」


「ええ~。寝れないじゃん」


 こいつ、いつもどういうスタイルで寝てんだよ……。


「いいから、早く寝るぞ。明日団子食うんだろ?」

 

 俺が話さないせいか、楽藍が甘い物について語りだした。

 小さな話題からクスクスと互いに笑い、時間も過ぎ、やがて眠った。

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